かもめ学園
綺麗なタチアオイや野菜などが植えられてある実習園にて
寧々ちゃんの恋愛が中々上手くいかず、
(寧々ちゃんの好きな人のハードルがとっても高い!)
どうしようか悩んでいたところ、
葵ちゃんから聞いた、
「願い事を叶えてくれるかわりに対価を支払う」
七不思議が七番目トイレの花子さんに頼ったら、、
なんと、
トイレの花子さんは男の子だった!?
寧々ちゃんの恋愛成就を手助けすると言われ取り出したのは、
いつのかわからないボロボロのハウツー本。
こんなので大丈夫なの!?
ハウツー本の一つに「己の特技を活かすべし」
らしく、
寧々ちゃんの特技である学園の実習園に!
そうドヤりながら学校指定のジャージ姿で髪をおさげに結う寧々ちゃん。
あ、私もジャージに着替えたよ!
おさげに結うのも一瞬!
早い!
さすが寧々ちゃんだあ!!
園芸用の鍬を使って、
畑の土をザクと一堀りして言う。
パチパチと拍手。
得意気に言う寧々ちゃんと、
その寧々ちゃんを盛り上げる私。
それを聞いた花子さんは、
寧々ちゃんを褒めるわけでもなく、
まるで期待の斜め上を言ったかとでも言いたそうに、
眼を細めて眉をひそめている。
私はいつだって寧々ちゃんの味方なんだー!
自分で聞いといて興味なさそうなのは何なんだろうか。
花子さんはちょっと失礼である。
持っていた鍬の持ち手に顎を乗せ、
さっき結んだおさげが風になびきながら、
少し感傷に浸りながら一人呟くように話し始める。
その寧々ちゃんが言う“昔好きだった人”っていうのが____
その言葉に胸が痛む。
寧々ちゃんが三年も努力し続けた結果が、
「キモイ」、
「大根足」。
罵声とコンプレックスをいじられ、
フラれたというよりは、
絶望。
必死に貴方に振り向いてもらえるように努力し続けた女の子に、
そんな言い方しなくたっていいんじゃないか。
あの時私はクズ男あんな奴なんて思ったけれど、
あの人は三年間も寧々ちゃんが思いをはせていた相手なわけで。
そう考えるとあの時の怒りのような虚しいような悔しいような、
そんな何とも言えない少し複雑な心境になる。
寧々ちゃんのその言葉と行動は正反対で。
顔を両手で覆い、
自分に強く言い聞かせるかのように、
さっきの呟くような声じゃなくて、
言葉を強めた。
なんでそこで花子さんは、
空気を読まない発言をするのか……
あ……、
あの人を悪く言ったらいけないのに。
確かにあの人があきらかに悪いけど、
さっきの言葉は寧々ちゃんを励ます言葉が適切じゃなかった。
それなのに、
寧々ちゃんは私にお礼を言う。
友達なら、
励ますくらい当たり前なのに。
花子さんは信じられない言葉を口にした。
軽い口調で、
にっこりと笑顔で。
左手で顎を押さえながら。
寧々ちゃんの言葉を遮って真っ先に口からそんな言葉が出て来た。
許せなくて。
寧々ちゃんが口を尖らせて黙り込む。
しばしの沈黙。
花子さんが、
ふ~やれやれ、
なんて呆れながら制服のポケットではなく、
制服の下をごそごそして
なんて言いながら寧々ちゃんに何かを渡した。
ハート型のメッセージカードとペン
なんで花子さんがメッセージカードなんて持ってるの…?
て言うかさっきから花子さんの制服どうなってんの…
さっきのハウツー本もそうだけどポケットから出せるものじゃないよね??
何花子さんの制服は某猫型ロボットの四次元ポケットにでもなってるんですか?
また花子さんが、
ニコニコ顔で両手でピースピースして提案をする。
作戦名もう少しひねれば良かったものを……
そう呟いて寧々ちゃんは顔を少し下に向けて持ってた鍬を握りしめた。
顔を上げさっきとは別人のように、
希望に満ちあふれた寧々ちゃん
花子さんはパチパチと手をたたいて、
私も寧々ちゃんを応援する。
描くことが決まったのか、
メッセージカードに寧々ちゃんが何かを描き始める。
寧々ちゃんがメッセージカードを描きながら、
空いているもう片方の手で指をさす
花子さんが寧々ちゃんに指をさされた先を見ると、
えっ、
と驚いた顔で
まあ
いっか…、
と呟いた。
プレゼント大作戦の
決行日である翌日
高等部2年の廊下を、
金髪碧眼の男子が歩いている。
そう、
彼こそがこの学園の生徒会長兼学園の王子様の源輝である。
彼が挨拶を周りにするたびに、
キャー、
と黄色い歓声が飛び交う。
それは男女問わずである。
流石の王子様っぷりである。
彼が教室に入るなり、
教室が騒がしい
写真を撮っている人までもいる。
皆が注目していた彼の机の上にあったのは
キュウリが2本とトマトが2個と、
「先日はありがとうございました」
と書いてあるハート型のメッセージカードである。
教室が困惑している所をこっそり見ている我ら三人
と言っている花子さんと、
顔を両手で抑える寧々ちゃんと、
苦笑いをする私
プレゼント大作戦 失敗
励ますけれど涙目でとぼとぼと廊下を歩く寧々ちゃん
ボソッと花子さんが寧々ちゃんの耳元で呟く。
その時小さな大根がトマトを持って、
「アリガトウ」
とお礼を言いながらぺこりとお辞儀をするのが脳内再生された。
悔しくて寧々ちゃんは涙目で花子さんをたたこうとするけど、
花子さんは幽霊だから寧々ちゃんの手のひらは無念にも当たらず、
スカスカと通り抜けてしまう。
なんとなくさっきから思ってたけど、
この二人いいコンビだよなぁ……
寧々ちゃんに失礼だけど二人のやりとりを見ているとそんな風に思ってしまう。
なんてひそひそと変な人扱いをされてしまった寧々ちゃん。
花子さんは幽霊だから他の人には見えないのか…
当たらず叩き疲れた寧々ちゃんが息切れしながら呟く。
そう言いながら拳を天井に突き上げ、
おーー、
と気勢を上げた花子さんとそれに乗る私
…と張り切ったは
いいものの…
恋のボタン作戦
休み時間彼が移動教室の時間帯を狙う。
私と寧々ちゃんと花子さんは陰から先輩を見張る、
よく見ると源先輩の右腕の袖のボタンが取れているのだ。
そう言いながら裁縫セットを手にしている花子さん
さっきのこともあったし、
ちょっぴり不安な私。
さっきは落ち込んでうたけれど、
やる気を取り戻した寧々ちゃん
よし、
作戦開始!
と寧々ちゃんが裁縫道具片手に先輩を呼びながら近づいたとき
源先輩の隣にいた女性の先輩が源先輩の袖のボタンに気付く
その女性の先輩の言葉に気付いて袖を気にする。
やはり困っているようです!
そこで寧々ちゃんが……
ん?
その女性の先輩が自分の袖のボタンをむしり取った。
今度は源先輩の後ろにいた中等部の女子の後輩も、
何処から取ったのかボタンを制服からむしり取る。
まさかのさっきまで居なかった何処から飛んできたのか男子までもが、
とうとう袖のボタンではなく、
自分の制服の胸元のボタンを沢山むしり取って、
ブチブチビリビリと沢山のボタンをむしり取る音がする
まさかの先輩のボタン争奪戦が起こるなんて…
恋のボタン作戦 失敗
お弁当作戦
今度は片手に空のお弁当箱と、
もう片方には「おべんとレシピ」と書かれたレシピ本を持つ花子さん
これレシピ、
と言いながら私たちに見せる花子さんと、
その言葉に頷く寧々ちゃん。
と丁寧に教え、
野菜を切り、
フライパンで焼く。
トントンジュワ~~と出来ていく音が気持ち良い。
お弁当が出来て先輩が居ないタイミングを見計らってこっそり机の上に置く。
一通りは一緒にやったけれど、
完成形はまだ見れてないんだよね……
今度こそは成功するといいんだけど……
そんなこんなでお昼休み。
とさっき源先輩に夏野菜が机の上にあることを、
教えた源先輩の前の席の先輩がヒューと茶化す。
それに気付いた源先輩が蓋を開けると…
化け物のキャラ弁が爆誕していた。
さらに食欲を失せるような見た目をしている。
骸骨や目玉が飛び出たキャラクターなどなど……
それを陰で見ていた私と寧々ちゃんと花子さん
床に突っ伏す寧々ちゃんとそれを見て焦る私と花子さん
お弁当作戦 失敗!
恋の曲がり角作戦
ドジっ子女の子が食パンをくわえてイケメンとぶつかる
少女漫画あるある(古い)シチュエーションだけど大丈夫かなぁ…
源先輩は中等部の金髪の後輩と廊下で何やら話をしている、
またまた陰でその先輩を見ている私たち三人。
その花子さんの掛け声と共にトーストを咥えた寧々ちゃんが、
シュッと風のように源先輩の方へ飛び出す
いやそれ今言ってどうすんの!?
そう思った瞬間誰かと誰かがぶつかった鈍い音がした
その誰かっていうのが寧々ちゃんである。
恋の曲がり角作戦 失敗!!
そんなこんなで寧々ちゃんの源先輩とのラブチャンスを起こす作戦は全て失敗に終わったのでした……
どうだったかしら?
今回は花子さんが完全に悪い……わよねー
じゃまったねー!
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!