第4話

第二の怪 トイレの花子さん 中編
169
2023/12/13 12:00
かもめ学園

綺麗なタチアオイや野菜などが植えられてある実習園にて
花子くん
畑!
八尋寧々
我が学園の実習園よ!
農業学校ではないから小さいけどね
寧々ちゃんの恋愛が中々上手くいかず、

(寧々ちゃんの好きな人のハードルがとっても高い!)

どうしようか悩んでいたところ、

葵ちゃんから聞いた、

「願い事を叶えてくれるかわりに対価を支払う」

七不思議が七番目トイレの花子さんに頼ったら、、



なんと、

トイレの花子さんは男の子だった!?

寧々ちゃんの恋愛成就を手助けすると言われ取り出したのは、

いつのかわからないボロボロのハウツー本。

こんなので大丈夫なの!?

ハウツー本の一つに「己の特技を活かすべし」

らしく、

寧々ちゃんの特技である学園の実習園に!
花子くん
これがヤシロの特技?
八尋寧々

園芸部なの
そうドヤりながら学校指定のジャージ姿で髪をおさげに結う寧々ちゃん。

あ、私もジャージに着替えたよ!

おさげに結うのも一瞬!

早い!

さすが寧々ちゃんだあ!!
八尋寧々
ふんっ
園芸用のくわを使って、

畑の土をザクと一堀りして言う。
八尋寧々
特技は土いじり!!
宮水あなた
おおーっ
パチパチと拍手。

得意気に言う寧々ちゃんと、

その寧々ちゃんを盛り上げる私。
花子くん
…土…
それを聞いた花子さんは、

寧々ちゃんを褒めるわけでもなく、

まるで期待の斜め上を言ったかとでも言いたそうに、

眼を細めて眉をひそめている。
八尋寧々
何その顔!
お花育てたりするのよ!女の子らしいのよ!?
宮水あなた
そうだそうだー!
寧々ちゃんのお花めちゃくちゃ綺麗なんだよー!!
私はいつだって寧々ちゃんの味方なんだー!
花子くん
ちなみに あなたは?
宮水あなた
んー、実はあんまり部活動に惹かれなくて帰宅部なんだよねー
花子くん
ふーん
自分で聞いといて興味なさそうなのは何なんだろうか。

花子さんはちょっと失礼である。
八尋寧々
…でもやっぱり
こんなの可愛くないのかな
花子くん
持っていた鍬の持ち手に顎を乗せ、

さっき結んだおさげが風になびきながら、

少し感傷に浸りながら一人呟くように話し始める。
八尋寧々
園芸はね
昔 好きだった人が「女の子らしい子が好き」
って言うから始めたの
その寧々ちゃんが言う“昔好きだった人”っていうのが____
八尋寧々
他にもお料理とお裁縫と…
八尋寧々
全部上手に出来たら告白しようと思って
花子くん
いつから好きなの?
八尋寧々
中等部入りたての頃から
告白したのは一か月前
八尋寧々
三年もかかっちゃった
あなたと友達の葵にも手伝ってもらって…
八尋寧々
でも…
その言葉に胸が痛む。

寧々ちゃんが三年も努力し続けた結果が、

「キモイ」、

「大根足」。

罵声とコンプレックスをいじられ、

フラれたというよりは、

絶望。


必死に貴方に振り向いてもらえるように努力し続けた女の子に、

そんな言い方しなくたっていいんじゃないか。


あの時私はクズ男あんな奴なんて思ったけれど、

あの人は三年間も寧々ちゃんが思いをはせていた相手なわけで。


そう考えるとあの時の怒りのような虚しいような悔しいような、

そんな何とも言えない少し複雑な心境になる。
八尋寧々
一か月も前の話だし!!
もう全っ然気にしてないけど!!
寧々ちゃんのその言葉と行動は正反対で。

顔を両手で覆い、

自分に強く言い聞かせるかのように、

さっきの呟くような声じゃなくて、

言葉を強めた。
花子くん
気にしてるんだね
なんでそこで花子さんは、

空気を読まない発言をするのか……
八尋寧々
してない!!
宮水あなた
大丈夫!!
悪いのはあいつだし!!
寧々ちゃんは可愛いし、大根足なんかじゃないから!!
あ……、

あの人を悪く言ったらいけないのに。

確かにあの人があきらかに悪いけど、

さっきの言葉は寧々ちゃんを励ます言葉が適切じゃなかった。
八尋寧々
ううっ…ありがとう
それなのに、

寧々ちゃんは私にお礼を言う。

友達なら、

励ますくらい当たり前なのに。
八尋寧々
だって今は源先輩に夢中だもん
八尋寧々
先輩みたいなすごい人と両想いになって
あの男のこと見返してやるのよ!
花子くん
ふーん…つまり


花子くん
“誰でもいーんだ?”
花子さんは信じられない言葉を口にした。

軽い口調で、

にっこりと笑顔で。

左手で顎を押さえながら。
八尋寧々
そ…
宮水あなた
そんな訳無いでしょ!!
寧々ちゃんの言葉を遮って真っ先に口からそんな言葉が出て来た。


許せなくて。
宮水あなた
寧々ちゃんが今までどんな努力で頑張っていたか知らないくせに!
宮水あなた
いくらなんでも無神経すぎるよ!
寧々ちゃんがそんな……誰でも良い訳……

宮水あなた
あ……、
宮水あなた
ごめん……
八尋寧々
ううん、いいよいいよ!
あなたは私をかばってくれたんだもんね
花子くん
…………
花子くん
うーーん、
でもヤシロがそんなにセンパイが好きなように見えないんだよねー
宮水あなた
またそういうこと言って……
八尋寧々
先輩がそんなに好きじゃなかったら、
こんな風にお化けの花子さんに頼ったりしてないわよ
花子くん
んーそっかー、
ん、じゃあセンパイの好きなとこ十個言ってみて
八尋寧々
そんなの簡単よ!
八尋寧々
えっと、一個目は
まず顔が良くてー、
八尋寧々
二個目は頭が良くて生徒会長!
八尋寧々
三個目は運動も出来ちゃうとことか、
八尋寧々
四個目は老若男女誰にでも優しくってー、
八尋寧々
五個目はーえっと、えっと、
あっ、キラキラオーラ!
花子くん
キラキラオーラ…?
何かちょっとそれ違くない?
八尋寧々
六個目はねー、
気遣いが出来る!
花子くん
それ優しいと一緒じゃない?
八尋寧々
七個目はねー、
イケメン過ぎる!
花子くん
それ顔が良いと一緒だよね?
八尋寧々
じ、じゃあ、
イケメン王子様!
花子くん
だから、それ一緒だって!!
八尋寧々
んーもう、全部!
源先輩の良いところは全部!!
花子くん
いやそれダメだよ
十個にも満てないじゃーん
花子くん
他にもあるでしょ?
センパイが好きなんだもんねー?
八尋寧々
………
花子くん
………
宮水あなた
………
寧々ちゃんが口を尖らせて黙り込む。

しばしの沈黙。
花子くん
ヤシロ…
宮水あなた
寧々ちゃん…
花子さんが、

ふ~やれやれ、

なんて呆れながら制服のポケットではなく、

制服の下をごそごそして
花子くん
はい
なんて言いながら寧々ちゃんに何かを渡した。
八尋寧々
八尋寧々
メッセージカード?
ハート型のメッセージカードとペン

なんで花子さんがメッセージカードなんて持ってるの…?

て言うかさっきから花子さんの制服どうなってんの…

さっきのハウツー本もそうだけどポケットから出せるものじゃないよね??

何花子さんの制服は某猫型ロボットの四次元ポケットにでもなってるんですか?
花子くん
そ、これと一緒にヤシロが作ったものをセンパイに贈る
花子くん
名付けてプレゼント大作戦~~~!!
また花子さんが、

ニコニコ顔で両手でピースピースして提案をする。

作戦名もう少しひねれば良かったものを……
八尋寧々
でも前もそれで…
花子くん
同じになるかはやってみなきゃわかんないって
どーせ大して接点もないんだろうし


花子くん
“せっかくなら
活かしたいじゃん”
花子くん
“今まで
頑張ったんだから”
宮水あなた
そうそう!私もいるしね!
前向きに頑張らないと!
八尋寧々
あなた…花子さん…
そう呟いて寧々ちゃんは顔を少し下に向けて持ってた鍬を握りしめた。
八尋寧々
わかった!
私 頑張ってみる!
顔を上げさっきとは別人のように、

希望に満ちあふれた寧々ちゃん
宮水あなた
おー!!その意気だー!
花子さんはパチパチと手をたたいて、

私も寧々ちゃんを応援する。


描くことが決まったのか、

メッセージカードに寧々ちゃんが何かを描き始める。
宮水あなた
なんて描くの?
八尋寧々
告白はちょっと急すぎる気がするから、
こないだ筆箱拾ってもらった時のお礼を書いておこうと思う!
宮水あなた
いいと思うよ!
花子くん
そういえばヤシロはここで
何作ってるの?
八尋寧々
あれ
寧々ちゃんがメッセージカードを描きながら、

空いているもう片方の手で指をさす
花子くん
どれどれ
花子さんが寧々ちゃんに指をさされた先を見ると、

えっ、

と驚いた顔で

まあ

いっか…、

と呟いた。
プレゼント大作戦の

決行日である翌日



高等部2年の廊下を、

金髪碧眼の男子が歩いている。

そう、

彼こそがこの学園の生徒会長兼学園の王子様の源輝である。

彼が挨拶を周りにするたびに、

キャー、

と黄色い歓声が飛び交う。

それは男女問わずである。


流石の王子様っぷりである。
かもめ学園生徒
源!
彼が教室に入るなり、

教室が騒がしい

写真を撮っている人までもいる。
源輝
おはよ
なんかあったの?
かもめ学園生徒
やべーんだよ
見ろあれ!
かもめ学園生徒
お前の机に…

かもめ学園生徒
夏野菜が!!!
皆が注目していた彼の机の上にあったのは

キュウリが2本とトマトが2個と、

「先日はありがとうございました」

と書いてあるハート型のメッセージカードである。
かもめ学園生徒
お前狐でも助けた?
源輝
いや…
教室が困惑している所をこっそり見ている我ら三人
花子くん
あれー
と言っている花子さんと、

顔を両手で抑える寧々ちゃんと、

苦笑いをする私


プレゼント大作戦 失敗
八尋寧々
珍事件になっちゃった…
宮水あなた
で、でも寧々ちゃんの夏野菜自体はすっごく美味しいんだけどな~
八尋寧々
うぅっ…ありがとう…
励ますけれど涙目でとぼとぼと廊下を歩く寧々ちゃん
花子くん
でも俺はアレはアレで意外性があって
良かったと思うけど
八尋寧々
良くない!
八尋寧々
恩返しだと思われてる時点で良くない!!
八尋寧々
そりゃ私のメッセージも悪かったけど…
花子くん
大根の恩返し
ボソッと花子さんが寧々ちゃんの耳元で呟く。

その時小さな大根がトマトを持って、

「アリガトウ」

とお礼を言いながらぺこりとお辞儀をするのが脳内再生された。
宮水あなた
花子さん!?
八尋寧々
わあああ!!
悔しくて寧々ちゃんは涙目で花子さんをたたこうとするけど、

花子さんは幽霊だから寧々ちゃんの手のひらは無念にも当たらず、

スカスカと通り抜けてしまう。
八尋寧々
わあああああん!!!
花子くん
アハハ
なんとなくさっきから思ってたけど、

この二人いいコンビだよなぁ……

寧々ちゃんに失礼だけど二人のやりとりを見ているとそんな風に思ってしまう。
かもめ学園生徒
あの子たちさっきから一人で…
かもめ学園生徒
暑さにやられたのかしら…
なんてひそひそと変な人扱いをされてしまった寧々ちゃん。

花子さんは幽霊だから他の人には見えないのか…
八尋寧々
もうイヤ…
園芸なんて辞める…
当たらず叩き疲れた寧々ちゃんが息切れしながら呟く。
宮水あなた
それはやめて!
寧々ちゃんの美味しい夏野菜が食べられなくなるのはイヤ!
八尋寧々
うぅっ…でもぉ…
花子くん
まーまーそう焦らず
他にも特技はあるんだし
花子くん
切り替えてこ
そう言いながら拳を天井に突き上げ、

おーー、

と気勢を上げた花子さんとそれに乗る私
宮水あなた
おー!
八尋寧々
オー…
…と張り切ったは
いいものの…
恋のボタン作戦


休み時間彼が移動教室の時間帯を狙う。

私と寧々ちゃんと花子さんは陰から先輩を見張る、

よく見ると源先輩の右腕の袖のボタンが取れているのだ。
花子くん
隙を見て取ってきた!
花子くん
付けてあげて
好感度アップだ!
そう言いながら裁縫セットを手にしている花子さん
宮水あなた
大丈夫かなぁ…
さっきのこともあったし、

ちょっぴり不安な私。
八尋寧々
わかった!
さっきは落ち込んでうたけれど、

やる気を取り戻した寧々ちゃん

よし、

作戦開始!
八尋寧々
あのっ
源せんぱ
と寧々ちゃんが裁縫道具片手に先輩を呼びながら近づいたとき
かもめ学園生徒
あっ
源くんボタン取れてる
源先輩の隣にいた女性の先輩が源先輩の袖のボタンに気付く
源輝
あ、本当だ
いつ取れたんだろ
その女性の先輩の言葉に気付いて袖を気にする。

やはり困っているようです!


そこで寧々ちゃんが……
かもめ学園生徒
私のボタン使って!
ん?

その女性の先輩が自分の袖のボタンをむしり取った。
かもめ学園生徒
これも!
今度は源先輩の後ろにいた中等部の女子の後輩も、

何処から取ったのかボタンを制服からむしり取る。
かもめ学園生徒
こっちだ!
まさかのさっきまで居なかった何処から飛んできたのか男子までもが、

とうとう袖のボタンではなく、

自分の制服の胸元のボタンを沢山むしり取って、

ブチブチビリビリと沢山のボタンをむしり取る音がする
かもめ学園生徒
源くんのボタンになるのは私!!!
まさかの先輩のボタン争奪戦が起こるなんて…
花子くん
あわわわ…
宮水あなた
源先輩恐るべし……
恋のボタン作戦  失敗
お弁当作戦
花子くん
夏野菜をお弁当にして渡す!
今度は片手に空のお弁当箱と、

もう片方には「おべんとレシピ」と書かれたレシピ本を持つ花子さん
宮水あなた
料理なら一緒に頑張ろうね!
八尋寧々
うん!
花子くん
フツーじゃつまんないしキャラ弁にしよう
これレシピ、

と言いながら私たちに見せる花子さんと、

その言葉に頷く寧々ちゃん。
宮水あなた
頑張れ寧々ちゃん!
宮水あなた
ここはもうちょっとこうした方が……
と丁寧に教え、

野菜を切り、

フライパンで焼く。

トントンジュワ~~と出来ていく音が気持ち良い。




お弁当が出来て先輩が居ないタイミングを見計らってこっそり机の上に置く。

一通りは一緒にやったけれど、

完成形はまだ見れてないんだよね……

今度こそは成功するといいんだけど……

そんなこんなでお昼休み。
かもめ学園生徒
おっ 女子から?
羨ましい奴う
とさっき源先輩に夏野菜が机の上にあることを、

教えた源先輩の前の席の先輩がヒューと茶化す。
源輝
一体誰が…
それに気付いた源先輩が蓋を開けると…


化け物のキャラ弁が爆誕していた。

さらに食欲を失せるような見た目をしている。

骸骨や目玉が飛び出たキャラクターなどなど……
源輝
落とし物だと思う
届けてくる
それを陰で見ていた私と寧々ちゃんと花子さん
八尋寧々
やりすぎた
床に突っ伏す寧々ちゃんとそれを見て焦る私と花子さん

お弁当作戦 失敗!
恋の曲がり角作戦

ドジっ子女の子が食パンをくわえてイケメンとぶつかる

少女漫画あるある(古い)シチュエーションだけど大丈夫かなぁ…


源先輩は中等部の金髪の後輩と廊下で何やら話をしている、

またまた陰でその先輩を見ている私たち三人。
花子くん
トーストくわえて曲がり角でドッキリラブチャーンス!
宮水あなた
いけ!寧々ちゃん!
花子くん
俺が合図したらこの角から飛び出すんだよ
花子くん
今だ!
その花子さんの掛け声と共にトーストを咥えた寧々ちゃんが、

シュッと風のように源先輩の方へ飛び出す
花子くん
っていうのが合図…
花子くん
へ?
いやそれ今言ってどうすんの!?

そう思った瞬間誰かと誰かがぶつかった鈍い音がした

その誰かっていうのが寧々ちゃんである。
宮水あなた
寧々ちゃーん!?
???
うわーーー
かもめ学園生徒
おい!
高等部の女子と中等部の男子が衝突したぞ!
かもめ学園生徒
オーイ
男子の方階段転がってってたけど大丈夫か?
八尋寧々
あれ?私誰とぶつかって…
八尋寧々
きゃあああああ!!!
かもめ学園生徒
救急車!救急車ー!
八尋寧々
ごめんなさーい!!
花子くん
あわわ…
恋の曲がり角作戦  失敗!!


そんなこんなで寧々ちゃんの源先輩とのラブチャンスを起こす作戦は全て失敗に終わったのでした……
どうだったかしら?








































今回は花子さんが完全に悪い……わよねー







































じゃまったねー!

プリ小説オーディオドラマ