バレー部でのお手伝いは、基本タオルとドリンクの用意のみ。
あんまり手伝いすぎると色々反感買うらしいし……。
ギュッ
とりあえず毎日楽しく過ごしてます。
1年生は何人か入ったけど、その中でもこの3人は特にセンスがいい……気がする。
お兄ちゃんや徹くんの試合を見れるのも、残り少ないだろう。
行かない理由なんてない!
帰りの身支度をして、帰路についた。
最初にカゲくん、続いて金田一も抜けて、結局また、国見くんと2人に。
いじるようにツンツンすると、その手をスッと止めさせて顔をしかめた。
目をそらして鞄をかけ直した。
驚いたように目を見開くので、慌てて両手をヒラヒラさせて見せた。
よく言うよ……。
正直、国見くんのプレースタイルには賛否両論あるだろう。
徹くんなら多分、それさえ受け止めて使って見せるんだろうけど。
ふいっとかおそらした国見くんが、なんだかさっきよりも背筋が伸びていて微笑ましく思った。
突然聞こえてきた泣き声に、国見くんと2人で辺りを見渡した。
向くと、川辺で泣きじゃくる1人の男の子。
タタタッ
男の子に駆け寄ると、私の顔を見て少し泣き止み、そして川の中間辺りに覆うように伸びた木の枝に引っ掛かる風船を指差した。
男の子はコクコク頷き、それが涙を助長したようだった。
妹……。
微笑んで、頭に手をおいた。
鞄を足元に落として、靴と靴下を脱いだ。
追い付いてきた国見くんが訝しげな顔をした。
ジャバ……ッ
5月の川は一段と冷たい。
風船の真下辺りまで行くと、水位は太ももまできていてスカートがギリギリ濡れない程度だった。
思ったより高い位置にある風船。
手持ちの部分が垂れているので背伸びして手を伸ばす。
何回かジャンプして、ようやく手が届いた。
着地に失敗し、苔に足を持っていかれる。
拍子に風船からも手を離してしまった。
やばい、転ける……っ!
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!