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第2話

後編
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2025/07/29 05:50 更新
【ヒョンジン side】
フィリックスの目を見られない朝が増えた。
俺のせいだって分かってる。

バレてるんだろうな。
女の子と歩いた夜も、
スマホにこっそり届く連絡も。
全部、あいつは気づいてる。でも、責めない。

責めてくれた方が楽だった。
F
F
もう平気だから

そう言って笑うリクスの声が、一番痛かった。

俺は、最低だ。
でも――あいつが俺を離さない限り、
きっと俺はあいつのもとに戻ってしまう。

なあ、リクス。
お前だけは、傷つけたくなかったんだ。








【フィリックス side】

それでも僕は、ヒョンジンが帰ってくる場所でありたかった。
浮気されるかもしれない。
また泣くかもしれない。
だけど、あの人の「ただいま」が、
僕のすべてを癒してしまうから。

それって、恋って言っていいのかな。

それでも、愛したいと思ってしまった。
“Maybe cuz I’m perfect for you”









【ヒョンジン side】

部屋に帰ると、フィリックスのバッグがなかった。
あいつがいつも座ってたソファにも、クッションがぽつんとあるだけ。

あぁ、これは……もう遅かったんだ。

そう思った瞬間、喉の奥がギュッと詰まった。
震える指でスマホを開いた。
再生履歴には、「ボイスメモ No.5」
あいつの泣き声が、刺さった。

H
H
バカだな……俺
俺は、やっと気づいた。

恋なんかじゃなかった。
これは愛だ。ずっと、あいつだけを愛してた。

遅いなんて、言わせない。
もう一度、取り返す。何度でも。









【再会:1ヶ月後】

リクスは海辺にいた。
髪が少し伸びて、色も抜けて、少し大人びて見えた。
だけど、俺の目には、世界で一番愛しい“リクス”だった。



H
H
会いに来た
F
F
……どうして
H
H
約束、苦手だけどさ
F
F
……うん
H
H
これだけは、言わせて
F
F
……なに?
H
H
俺、ずっとお前を愛してた。もう他の誰にも興味ない。どこにも行かない。ずっとお前のそばにいる。
だから……帰ってきて、俺のパラダイスに

沈黙が数秒続いて――
フィリックスが泣きながら笑った。
F
F
そんな君に恋して、手を取る俺も……
やっぱりちょっとイカれてるよ






【エピローグ:1年後】

海の見える部屋で、2人は暮らしている。
フィリックスは料理が得意になったし、
ヒョンジンはスマホの通知に「既読」をつけるようになった。
「浮気」なんて単語、もう部屋には存在しない。
代わりに、「おかえり」と「愛してる」が日常にある。

ボイスメモNo.5は――
いつかの夜、2人で削除した。

過去にさよならをして、
今を生きるために。

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