あなたの下の名前side
結婚相手から電話があり、すぐ家に帰った。
なんの安心も、思い入れもない、ただ大きくて綺麗なだけの家。
アルコールが入ると気持ちのコントロールができなくなるこの人。
酒臭いままわたしに近づいて来る。
無理矢理唇をわたしの唇に押し当てて来る。
オンニ、、助けて、。
オンニ、、。
口には出さないけど、心の中で何度も何度もナヨンオンニの名前を呼んだ。
いつもは絶望的な、死にたい気持ちになるけれど、
またオンニに会いたい、オンニと話したい、
その一心で耐え続けた。
こんなことに負けない。
そう思うことができたのは紛れもない、ナヨンオンニのおかげ。
この恐怖の時間を終えるといつも早く汚れを流したくて、浴室に向かうんだけど、今はただナヨンオンニの声が聞きたかった。
脱衣所に入り扉を閉めると、力の入らない手でなんとか電話をかける。
オンニの声を聞いただけで「生きてる、大丈夫」ってそう思った。ほっとした。
いつもなら恐怖で震えが数時間止まらないくらいなのに、電話越しでもオンニの声を聞いただけでこんなにも安心できる。
消えたい、死んでしまいたいと思っていた頃の自分とは違う。
オンニはわたしの生きる理由。生きる希望。
そしてわたしは心に大きな決断をした。
この家を出る。
ここを出て、ナヨンオンニと生きていく。
シャワーを浴びながら、オンニの言葉を思い出していた。
「あなたの下の名前と一緒に暮らしたい」
そう涙声で伝えてくれたオンニの言葉。
そう思ってくれてることだけで心が軽くなる。
また2日後、オンニに会える。
わたしは大丈夫。
オンニと生きていく。














編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。