視点/翠
サカキは俺をソファーに座らせると
コーヒーを入れてくれた。
いつも俺はサカキの手を焼かせていたはずなのに
今も優しい眼差しで俺を見る。
キッチンから声がする
我ながら、的を得た回答だ
サカキの家を訪ねる権利なんざ
俺にはない。
普段顔を合わせることが無いから
いつも口実を作って来ていた。
でも今日は、その口実を用意する余裕もなかった
俺が言葉を探しているのに気がついたのか
サカキは俺の隣に腰掛けて
抵抗もなく嬉しいことを言った。
きっと誰にでも見せる優しさなんだろうな
そう思うと素直に喜べない
つい、きつい言葉を吐いてしまう。
そういい終わった後、俺の顔を覗き込んでくる
…やめてくれ
あんな事を言われた後…近づかれたら
嬉しくなってしまう。期待してしまう。
直ぐに素直になることは出来なくて
心に思っていないことを言ってしまう。
サカキは俺の頭を撫でる。
不覚にも大泣きしてしまった日と同じで
その手からは優しさと温もりが伝わってきて…
こいつの手は、情緒不安定な俺の心を
癒す能力があるのか?
そう思った。
それでも俺の口から出る言葉は
サカキを責める言葉ばかり
だけども、そんな言葉に動じる事も無く
あいつは話を続けた。
…結局、俺の心は見透かされていた
サカキへの想いもバレてしまうのではないか
と心配する程だ。
それでも、サカキと他愛のない話をするだけで
こんなに癒されるなんて
…人を本気で好きになるって
こんなにも心が揺さぶられるなんてー…
俺は本当の恋を知らなかったんだ…
そう言ってわしゃわしゃと俺の髪を撫でる。
時計を見ると20時を超えていた。
そう言い、席を立とうとすると
急に腕を掴まれソファーに戻された。
唐突な提案に頭が追いつかず
と話すので精一杯だった。














編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!