すっと、宮舘が渡辺との間に距離を開ける。
名残惜しそうに渡辺がその体温の行方を逃がしたくないのか、宮舘の腕を離さなかった。
ありがとう!と微笑む顔は穏やかで…
宮舘の顔をすりっと撫でると気持ちよさそうに目を閉じた。
顔を近づけたその時。
突然、目を開く宮舘に固まっていると鞄から宮舘が包装された箱を取り出した。
包装紙を丁寧に化剥がして箱を開けると、中にはシンプルなフープピアスが入っていた。
自分のつけているピアスを外し、宮舘のプレゼントした物と付け替えた。
先程、キスを仕掛けようとしたことは都合よく忘れたらしい渡辺は何とか平常心を保とうとするが…
天然で爆弾を投げ込む宮舘。
チュッ
渡辺の理性は宮舘の爆弾投下により呆気なく破壊された。
ライトアップのお陰で逆光になり顔は隠れたが、キスするシルエットが大きく映し出され、通り過ぎる人たちにしっかり見られた。
シッと指を宮舘の唇に当てると少し意地悪な笑顔を見せた渡辺。
なに。この緩急のつけかた…
こんなの知らないっ…
初めて見た幼馴染の大人の一面に困惑と密かな期待を持った宮舘は素直に従った。
桜を堪能し、再び最初皆で集まって見た場所へ戻ってきたそれぞれのペアたち。
遠目で見るゆり組の姿は何かしらの線を越えたんだと確信できるほどに雰囲気が柔らかくなっていた。
突然の阿部の声に向井が叫びそうになるのを佐久間が口を塞いて身バレを回避した。
くいっ…
と阿部のコートを引っ張ると、阿部は優しい声で佐久間に話しかけた。
クスクス笑いながら阿部は佐久間の肩を抱き、目黒も見せつけるように向井を後ろから抱き締めた。
いわふか夫婦と息子がメンバーの元へ向かう中、密かに宮舘の気持ちに気づいていた岩本が優しい目で遠くに見えるゆり組の2人を見守った。
やれやれ…
とラウールが呆れながら最年長同士の争いを見て笑った。
他のメンバーが集まっていることに気付いた渡辺が宮舘の手を引っ張り、驚きはしたが握る手を離さないように指を絡め強く握り返した宮舘。
新しい物語の1ページ目には……
渡辺からもらった桜の花びらを手のひらの上に乗せた宮舘。
貴方の名前が1番に書かれていてほしい……
(Fin)
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。