第35話

奴隷『5』
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2024/05/06 14:47
すちside
お風呂の鏡で見る自分の体

気持ち悪い

こんな傷だらけの俺なんて大嫌いだ

でも、あの人の扱い方が正しい

俺は奴隷、奴隷、奴隷。

仕方がない

…久しぶりに腕、切ろうかな

売られる前の牢屋のような部屋の中には、ガラスの破片とかが沢山落ちていて、辛くなったり、ストレスが溜まったりした時によく切っていた

赤い血の色が好き

お母さんの顔はよく覚えていないけど小さい時、見たその目は優しくて赤い色だった気がするから

お風呂に入った後キッチンへ行ってナイフを出す

ザクッ

ポタポタ

切りながら言い聞かせていた

どれだけ今が辛くても、苦しくても、

頑張っていれば、足掻いていれば、耐え忍んでいれば、

いつか、いつかはって

全部諦めたつもりだったけど心のどこかではそう思っちゃってた

でも最近はもうよく分からなくなっちゃったよ

いつかっていつ?

そんなの待ってたって来ないよ

本当は死にたかったら死ねる環境だった

ガラスで首を切ってもいいし、縄だってあったから首を吊ればそれで良かった

いつだって死ねる

だから死ぬのは今日じゃなくてもいい

あるはずのない未来を願って、叶わない夢を見る。

疲れたなぁ

もう、充分頑張ったんじゃないかな

このナイフを首か腕に刺せば死ねる?

心はもうとっくに死んでたんだ
首にナイフをあてようとしたとき
いるま
何してんだ!
いるま様が来た
すち
ッ…あの…料理をしようと思っていたのですが、不注意で手を切ってしまいました
次からは気をつけます
いるま
手当てするぞ…!
手際良く止血とかをしてくれる
いるま
また、傷が増えちゃうからな
気をつけろよ
すち
はい…
顔がよく見えない

怒ってるような、心配しているような声な気がする

今まで誰も心配してくれなかったからなんて言えばいいか分からない
いるま
なんかあるなら言えよ?
言いたいよ

でも、辛い、苦しいって口にしたら自分の弱さを知らしめられる気がして

1度泣いてしまったらもう、愛想笑いすらできなくなってしまう気がして

怖い
すち
ありがとうございます、大丈夫です…
何もないですから…!
顔を見ることも、見せることも出来ないまま部屋を出る

ダメだ…ダメだ…

どんなに苦しくて死にたくても、絶対に他人を道連れにしてはいけない

下を向いて歩いていると、誰かにぶつかった
すち
ごめんなさ…ッあっ…
使用人
はぁ…ほんとに気持ち悪い…気分が悪いわ…ちょっとこっち来なさいよ
腕を掴まれて投げるように部屋に入れられる

暗くて、冷たい。

殴られていた日々を思い出してしまう

何をするのか見ていると、タバコを取り出した

ここではタバコは禁止のはず…
すち
それ…ダメですよ…
使用人
うるさいわねぇ、バレなければいいのよwそれに今は吸わないし
吸わない…?

どういうことかと思っていると

ポケットからライターを取り出した

タバコに火をつけると、

それを

俺の腕におしつけた
すち
い゛ッ…?!やだッ…
ジュッと焼ける音がした

殴られてもこんなことはされたことがなかったから痛みで顔を歪める
使用人
その顔!見てて面白いのよwライターで炙ったらどうなるのかしらw
ライターの火を顔の前に近づけてくる

火…
すち
ぅあ゛ッ…ごめ…なさ…ッ
思い出してしまった

忘れてしまおうとしていたこと

今まで見て見ぬふりをしていたこと

お母さんは














火に焼かれて死んだ

忘れたかった

母親の悲鳴を

苦しむ顔を

助けられなかったから

何も出来なかったから









頭が痛い

視界がぼやける

嫌だ…怖いよ…









助けてよ…

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