いるまside
今、俺たち5人で話をしている
内容はもちろんすちのこと
あともうひとつ、すちは隠してたつもりだろうけど見えたからな
自分の首にナイフを当てていたこと
急いですちの部屋へ行く
扉を叩くが反応がない
全員心配だったから止めるヤツはいなかった
扉を開けても人の気配がない
みことが急に走って部屋を出ていくから急いで追いかける
みことが止まった部屋
それは、使用人の部屋だった
扉をドンドンと叩く
少しして出てきたそいつは妙に焦っているようだった
なつが強引に部屋に入った
それに続いて入っていくと酷い光景が広がっていた
火のついたタバコが灰皿に置いてある
タバコの箱は床に落ちていてまだ使っていないものはばらまかれていて
その奥に倒れているすち
すちの姿はボロボロだった
服はナイフでさかれていて
体にはライターで炙ったような跡やタバコを押し付けたようなものが体に傷を作っていた
初めに来た時と同じくらいボロボロで
言ってくれなかったすちに、
気づけなかった俺自身に、
傷つけたあいつに、
腹が立つ
怒りが湧いてくる
殴りかかった俺を後ろから誰かが止める
そうだ…ちゃんとしねぇと
すちの怪我を見ないといけない
すちの体を持ち上げる
体重は軽い
傷からは血が出ている
本当はすちのこと最初は信用してなかった
よく分からないやつを警戒するのは当たり前だとは思うが…
だから、頼んですちのことを調べてもらった
届いた内容はあまりにも酷かった
母親は6歳の頃に火事で死んだ
母親はすちのことを助けるために庇ったそうだ
すちの父親は母親が火事で死んだ次の日にはすちを売ったそうだ
タバコに酒、ギャンブル
すちを売れば金が手に入る
欲で売った、自分の息子
もともと小さい時から虐待されていたそうで
殴る蹴るは当たり前、タバコを押し付ける日もあったそうだ
自傷行為をするくせがあること
泣かなくなったこと
色々書いてあった
全部身勝手な大人のせい
辛かっただろうに、苦しかっただろうに、
それでも頑張って生きてるのにこんなことあっていいのか?
理不尽だろ、神様なんていないんだろ、平等なんてないんだろ、
そんなすちを幸せに、笑顔で過ごせるようにさせてやりたかったのに
怪我だって代わってやりたい
でもそんな魔法みたいな力俺には無い
だから、出来ることをしなくちゃいけない
ベッドに寝かせる
服を脱がせるとなつの声が聞こえた
薬を塗って、包帯を巻いて、
とりあえず処置はした
あとは起きるのを待つだけだ
それでも何もせずに待っていることはできなくて手を握る
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。