暇72side
いるまが手当てをしている間
俺はただ見ていることしか出来なかった
俺もいるまと反対の手を握る
冷たいその手が余計に不安にさせたけど
その方が何もしていないよりは良かった
しばらく無言でいるとLANが部屋に入ってきた
外からあいつとこさめの声が聞こえる
悪くないと言い続ける声が耳障りだ
そのあとは強制的に外に出した
それからもう1週間がたとうとしている
すちは相変わらず起きない
いるまは毎日見に行ってるし
俺たちだって時間がある時はできるだけあそこにいる
ふと、みんなでご飯を食べている時疑問に思った
みことはどうしてあいつがやったってわかったんだろうか
最初からすちが手伝いをするのは反対だったみたいだし
ちょうど全員いたから聞いてみた
それからまた1週間位たった頃
すちの様子を見に行くと、ベッドに座って空を見ているすちがいた
痩せて肌の色が白くなった姿は消えてしまいそうで
それでも
ずっと聞きたかった声、
ずっとみたかった笑顔、
それは同じだった
これは現実なのか確かめたくて手を伸ばすとすちの声が聞こえてきた
そんなことを言われると思っていなかったからびっくりした
でもそう言うすちの顔は歪んでいて何かを恐れている顔をしていた
いるまに話をすると急いですちの部屋に行った
すちは自分から近寄ろうとしない
すちの目から涙が出てくる
見られたくないのか下を向いている
きっと本当は泣きたかったんだろうな
今まで我慢してきたからなのか涙は乾きそうにない
まだ泣いているけどすちが話し出した
初めてみた涙
その泣き方はできる限り抑えようとしている感じがして
だから、安心させたくてすちに抱きついた
すちside
夢の中で見ていたもの
俺が触ると崩れて、腐っていなくなる
俺の手が汚いから…?
景色が変わって花畑が広がる
5色の花が辺り一面色鮮やかに咲いていた
その花ですら俺が触ると黒く枯れてしまう
ただ花の中を歩き続ける
少しすると遠くに誰かがいた
その姿は小さい時にみたままの姿で
涙が出てくる
早く行きたいのにどれだけ走っても近づくことができない
ふと、声が聞こえてきた
お母さんの声
どうして…?
俺の事嫌いになっちゃった?
俺がちゃんとしなかったから…?
そんなことないよ
そんなことを思ってくれる人なんていないんだよ
視界が明るくなる
手を伸ばせば届く距離にお母さんがいる
俺の頭を撫でるその手は火傷した跡のようなものが沢山ついていた
その温かさが懐かしくて泣けてくる
俺の方こそごめんなさい
助けれなくてごめんなさい
俺が…死ねばよかったのに…
嫌だ…お母さんと一緒がいいよ…
お母さんの手が離れていく
お母さんの目はもう俺に向いていないけど
その優しい顔に背中を押されるように緑色の花に近づく
珍しい気がするその花は綺麗で俺が触っていいのか分からない
それでも触れるけどやっぱり枯れてしまって
違ったのはその花はだんだん白くなってきて全て白くなるとキラキラした光が溢れてきた
目を覚ますとベッドの上にいて
窓から入ってくる風が気持ちよくて外を見ていた
暇なつ様が抱きついてきた時の温かさが
お母さんに似ていた
そのあと全員が揃って俺の怪我とかを見てくれた
なんで言わなかったのかってすごく怒られたけど
今までで1番幸せだなって思ってるよ
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!