第31話

奴隷『1』
330
2024/04/16 08:56
すちside
俺たち奴隷の運命は決まっている

どこかに売り飛ばされて、殴られ、蹴られ、雑用を押し付けられる

ご飯をくれない人もいるみたい

返品なんてできないから、お金を返せなんて言われないように俺たちは教育されている

主人が声を出すなと言ったら出してはいけないとか

機嫌を損なわないようにしないといけない

俺はもうすぐオークションにかけられる

ここの仲間たちとは今日でお別れだ

でも、さみしくなんかないな

最初から覚悟出来ているのなら、

失うものなどないのだから
舞台のような場所まで引っ張られ連れられる

抵抗なんてする気が起きない

誰かが買ってくれるよう願うだけ

ここの人達の願う通りじゃないと…

もう痛いのは嫌だからね

視界が明るくなる

暗い場所にばかりいたから慣れないな
オークショニアの人が声をかける

価格が上がっていく

100万、200万、300万、…

900万まで上がり、落札になったかと思っていると声が聞こえてきた
???
1億!
若い男の子の声がした後に続く者はいなかった

1億円で落札。

俺にそこまでの価値があるのだろうか

捨てられないように頑張らないとな

首輪をつけられ、落札した人の所へ行く

フードをしているから顔がよく見えないなと思っているとフードを取って挨拶をしてくれた
みこと
こんにちは!
よろしくね!
小さい時に見た太陽のような温かい色をした目

幸せそうな笑顔

聞きやすい低音の声が心地いい

俺とは全然違う環境で育ったのがわかる

羨ましいな…

人は怖いから緊張する

殴られても何をされても我慢しないといけないから

震える体を落ち着けたいけどそんなことできないな

すると、この人は手をこっちにだしてきた

殴られるかもしれないと思って目をつぶった

それでも痛みは来なくて

頭を優しく撫でられていた
みことside
初めて来たオークション

俺たち貴族は一度は何か買う経験がないといけないから気乗りはしないけど見てたんよ

そしたら、男の子が出てきた

俺より少し年下そうなその子に不思議と惹かれた

遠くからでよく見えないけど緑色の髪の毛と赤い瞳は見える

苦しそうなその子の顔も

価格がどんどん上がっていく

他の人が言えない値段を考えた

みんなこの子が欲しいのかたくさんの人が声を上げる

ここでは一度しか値段を言うことができない

俺よりも大きい金額を言われてしまったらそこで終わり

だから真剣に考えないといけない

…思いついた金額は1億だった

落札出来たことに安心していると個室に案内された

待っているとさっきの子が入ってきた

近くで見ると緑色の髪の毛は柔らかそうで触りたくなる

赤い瞳はルビーみたいに綺麗な色で

タレ目で優しそうな顔立ち

でも目に光はなくて、細くて白い体には傷が沢山ある
みこと
こんにちは!
よろしくね!
そう言うとさっきから震えていた体がより震え出した

怖かったかな?

安心して欲しくて考えたけど

俺には言葉は思いつかなくて、

困っているとふと、小さい時に撫でてくれた時の安心感を思い出した

撫でてみると殴られると思ったのか目をぎゅっとつぶった

やっぱりこの子の髪の毛はふわふわで気持ちがいい

しばらく撫でていると、横にいた男の人が声をかけてきた
男の人
返品できないですよ、大丈夫ですか?
まるで物だとでも言うようなその言い方に腹が立ったけど我慢した
みこと
返すつもりはないので大丈夫です
思ったよりも怒ったような自分の言い方にびっくりした

こんなところから早く出してあげたくて

この子の手を繋いで出た

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