1回戦で敗退した麗日を心配し、励まそうとていた緑谷だったが、逆に彼女に背中を押されてしまった。
そして、悔しそうに涙を拭った緑谷の前に、No.2であり轟焦凍の父である、エンデヴァーが現れた。
エンデヴァーに何かを感じとった緑谷は、急いでその場を離れようとするが、エンデヴァーは話を続ける。
エンデヴァーの圧を直接受けた緑谷は、トーナメント前に轟が言っていたことを思い出した。
立ち去ろうとするエンデヴァーに向かって緑谷は口を開いた
緑谷は憎々しげなエンデヴァーの視線を背中に感じながら、ステージ目指して歩を進めた。
((開始瞬間に…ぶつけろ!!))
両者考えていたことは同じ。
プレゼントマイクの合図と同時に轟が氷結を緑谷に向けて放つが、それを予測していた緑谷はデコピンの風圧で氷を相殺した。冷気を帯びた風が会場に吹き荒れてゆく。
再度、轟が氷結攻撃を繰り出すが、先程と同じように凄まじい風圧で相殺された。
砕けた指の痛みに耐えながら、緑谷は轟の攻略法を見つけようと必死に頭を回転させる。
自分が目指すヒーローになるために。
激しく個性をぶつけ合う2人に、観客席も盛り上りを見せる。
観客席に戻ってきた切島に、上鳴が称賛の声をかける。
爆豪の言葉に切島達が首を捻る。
全員の視線が激しい戦いを繰り広げる緑谷と轟に集中する。
轟の氷結をスマッシュで相殺する緑谷だが、その右手は既にボロボロ。残る攻撃手段が左手に絞られてしまった。
右手の痛みで隙を見せた緑谷に、轟が一気に近づき至近距離で氷結を発生させた。
轟の氷結が緑谷の右足を捕らえる。
次の瞬間、スタジアムに凄まじい爆風が吹き荒れた。
緑谷は左腕を犠牲にして全身が氷漬けにされることを防いだのだ。
その時、緑谷は轟の様子がおかしいことに気づいた。
轟の弱点を見つけた緑谷だが、もう彼に戦う力は残ってない。
緑谷はトーナメント前の轟の言葉を思い出した。
轟の氷結攻撃が緑谷に迫り、誰もが轟の勝ちを確信したその瞬間、轟の氷が凄まじい爆風によって吹き飛ばされた。
砕けた指で攻撃してきた緑谷に、轟が問いかける。
緑谷は砕けた指を握り締め、叫ぶ。
緑谷の叫びを聞いていた宵凪は、緑谷が何を考えているのか理解できないでいた。
空に向けていた視線をゆっくりとステージへと視線を戻した。その頃、ステージでは緑谷と轟が互いに敵意を向けて睨み合っていた。
近接戦に持ち込みケリをつけようとする轟だが、それを予測していた緑谷は態勢を低くし、轟の懐に潜り込んだ。
その瞬間、轟は緑谷の攻撃に恐怖に近い何かを感じた。緑谷の拳が轟の腹部にめり込み、轟の氷結が緑谷の左腕を凍らす。
砕けた拳で殴ったせいで肉が裂け血が吹き出すが、緑谷が轟から目を離すことはない。
混乱する轟が緑谷の動きを止めようと地面を凍らせるが、緑谷は冷静に轟の氷結を回避した。
その頃、スタジアム外ではセメントスがミッドナイトに試合の中止を訴えていた。
しかしミッドナイトがセメントスの問いかけに答えることはなかった。
緑谷の拳はすでに再起不能。握ることすら困難になってしまった。そして、このチャンスを轟が逃すはずがない。
しかし、緑谷は頬の裏に親指を引っ掛けることでデコピンを再現、轟の攻撃を相殺した。
ここにきて緑谷の攻勢…流石の轟も動揺が隠せていない。
自分の名前を呼ぶ優しい声に轟は動きを止めた
動きを止めた轟に緑谷が頭突きを入れ、大きく弾き飛ばす。
思い出したくもない忌々しい記憶が濁流のように轟を呑み込む。
自分のせいで父に殴られる母の姿…
優しく頭をなでてくれた母の姿…
轟の体を霜が覆っていき、更に動きが鈍くなる。
緑谷の拳をもろに喰らった轟は、後方に大きく吹き飛ばされた。
怯え切った目で自分を見る母の姿…
優しい母を奪った男の姿…
譫言の様にそう呟く轟に、我慢できなくなった緑谷が嘆きを含んだ声で叫んだ。
これは、いつの間にか忘れてしまった轟の記憶。
母に勇気づけられた大切な記憶。
緑谷の言葉がトリガーとなり、轟の奥深くに眠っていた母親との記憶を呼び起こしたのだ。激しく燃え上がる炎にプレゼントマイクが叫び声を上げ、観客席も騒がしくなる。
その熱気は想像を遥かに越え、観客席にいる麗日達も熱いと感じる程だ。
左の炎が右の霜を溶かし、右の氷が左の熱を鎮める。自分を縛り付けていた呪縛を打ち破った轟は、復讐のためではなく、夢を叶えるためにこの力を使うことを決意する。
轟がこれまで拒絶していた炎を使った。
その事実に興奮したエンデヴァーがスタジアム中に響くほど大きな声で轟に語り掛けるが、当の本人には聞こえてないのか、轟がその声に反応することはなかった。
目の前で轟々と燃え上げる炎に、緑谷の表情が自然と笑顔になる。
その次の瞬間、両者は全く同じタイミングで攻撃態勢に移った。
セメントスがミッドナイトを呼んだ瞬間、2人は個性を発動させ緑谷と轟を止めようと動き出す。
緑谷は両足を犠牲にすることで轟の特大氷結を回避。そのまま轟に向かって拳を振りかぶった。
セメントスが2人の間に数枚のコンクリートの壁を作って直撃を防ぐも、その威力を殺しきることは出来なかった。
これまでとは比べ物にならない程の爆音と共に、辺りに凄まじい暴風が吹き荒れる。
砂煙が晴れ、全員が目にしたのは、場外に倒れる緑谷とボロボロのステージに立っている轟だった。
ステージ大崩壊の為しばらく補修タイムが行われてから試合再開となった
塩崎と飯田の戦いは、飯田が塩崎を場外に押し出しあっさりと終了。
次の試合は今大会注目度No.1の宵凪と圧倒的な強さで1回戦を突破した常闇の試合だ。
2回戦第3試合 常闇踏陰vs宵凪氷熾響
すでに始まっているにも関わらず、無表情まま全く動かない宵凪。宵凪の実力を、個性の詳細……情報をあまり分からない常闇は迂闊には攻撃できないでいた。
突然話し出した宵凪とその話の内容に常闇は数秒ほど固まってしまったが、すぐに冷静さを取り戻す。
次の瞬間、常闇は無意識の内に自身の背後を守るように黒影ダークシャドウを出していた。
危ないとは露程も思っていないような緊張感のない声。
一瞬で常闇の背後に回った宵凪は、黒影の攻撃を危なげなく 躱し、ふわりと地面に着地した。
黒影ダークシャドウを指差し薄らと笑みを浮かべる宵凪。常闇は冷や汗が止まらなかった。
もし、あの瞬間、個性を使えてなかったとしたら自分は確実に死んでいた。そう思わせる程の殺気常闇は目の前の宵凪という名のバケモノに視線を向けると、今すぐに逃げ出したいと思っている自分を黙らすように頬を叩いた。
八百万でさえ防戦一方を強いられた黒影の連撃を、宵凪は意図も容易く躱していく。
そんな宵凪の動きを見ていたA組は、宵凪の強さの秘訣とは何なのかと盛り上がっていた。
常闇は追い詰められていた。
体はまだまだ動く、個性も問題なく使える。
だが、心は別だ。気持ちは別だ。
常闇は自分の個性に自身があった。
素早い動きに圧倒的な攻撃力、大きさや形もある程度なら自由。光が弱点だが、それを引いても自他共に認める強個性。
それが宵凪に攻撃を当てるどころか掠りもしない。手加減など一切せずに本気で戦っているのにも関わらずだ。
胡蝶は黒影の爪をジャンプで躱し、迫ってくるもう片方の爪を空中で体を捻ることで躱した。
宵凪が常闇の視界から消えたと同時に地面が弾けた。この現象に見覚えがある常闇は、すぐに黒影ダークシャドウを盾のように自身の正面に移動させた。
だが、その程度で宵凪の突きは防げない。
黒影ダークシャドウを貫いた刃は、そのままの勢いで常闇の肩を切り裂いた。
肩を押さえて蹲うずくまる常闇。そして、それを真顔で見下ろす宵凪。
咄嗟とっさに立ち上がったヒーローを責める者はいなかった。
2回戦第3試合は常闇の降参により宵凪、勝利
𝕟𝕖𝕩𝕥➯➱➩「ベスト4」
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!