第30話

#27 「2回戦第1試合 轟焦凍vs緑谷出久」
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2023/12/26 04:53
1回戦で敗退した麗日を心配し、励まそうとていた緑谷だったが、逆に彼女に背中を押されてしまった。
そして、悔しそうに涙を拭った緑谷の前に、No.2であり轟焦凍の父である、エンデヴァーが現れた。
エンデヴァー
エンデヴァー
君の活躍、見させてもらった。
 素晴らしい個性だね。指を弾くだけであれ程の風圧…!パワーだけで言えば、オールマイトにも匹敵する個性ちから
緑谷   出久  (デク)
緑谷 出久 (デク)
何を…何を言い…たいんですか!
 僕もう行かないと…
エンデヴァーに何かを感じとった緑谷は、急いでその場を離れようとするが、エンデヴァーは話を続ける。
エンデヴァー
エンデヴァー
ウチの焦凍にはオールマイトを超える義務がある。君との試合は、テストベッドとしてとても有益なものとなる。くれぐれも、みっともない試合はしないでくれたまえ
エンデヴァーの圧を直接受けた緑谷は、トーナメント前に轟が言っていたことを思い出した。
エンデヴァー
エンデヴァー
言いたいのはそれだけだ。
 直前に失礼した
立ち去ろうとするエンデヴァーに向かって緑谷は口を開いた
緑谷   出久  (デク)
緑谷 出久 (デク)
……僕はオールマイトじゃありません…
エンデヴァー
エンデヴァー
そんなものは当たりま…
緑谷   出久  (デク)
緑谷 出久 (デク)
当たり前の事ですよね…
 轟くんも、あなたじゃない
緑谷は憎々しげなエンデヴァーの視線を背中に感じながら、ステージ目指して歩を進めた。
プレゼント・マイク
プレゼント・マイク
今回の体育会!両者トップクラスの成績!!まさしく両雄並び立ち今!!緑谷対バーサス轟!!スタート!!!
緑谷   出久  (デク)
緑谷 出久 (デク)
(まず氷結が来る!!)
轟 焦凍
轟 焦凍
(あの力パワーを好きに撃たせるのは危ねぇ)
                   
((開始瞬間に…ぶつけろ!!))
両者考えていたことは同じ。
 プレゼントマイクの合図と同時に轟が氷結を緑谷に向けて放つが、それを予測していた緑谷はデコピンの風圧で氷を相殺した。冷気を帯びた風が会場に吹き荒れてゆく。
轟 焦凍
轟 焦凍
やっぱそう来るか…
プレゼント・マイク
プレゼント・マイク
おオオオオ!!
 破ったあああ!!
再度、轟が氷結攻撃を繰り出すが、先程と同じように凄まじい風圧で相殺された。
轟 焦凍
轟 焦凍
ちっ……
緑谷   出久  (デク)
緑谷 出久 (デク)
(轟くんの戦いはいつも一瞬で情報が少ない…この戦いの中で隙を見つけなくちゃ…!あと…6回の中で…)
砕けた指の痛みに耐えながら、緑谷は轟の攻略法を見つけようと必死に頭を回転させる。
 自分が目指すヒーローになるために。
激しく個性をぶつけ合う2人に、観客席も盛り上りを見せる。
切島 鋭児郎
切島 鋭児郎
ゲッ始まってんじゃん!
上鳴  電気
上鳴 電気
お!2回戦進出やったな!
観客席に戻ってきた切島に、上鳴が称賛の声をかける。
切島 鋭児郎
切島 鋭児郎
次はオメーとだ爆豪!
爆豪  勝己  (かっちゃん)
爆豪 勝己 (かっちゃん)
ぶっ殺す
切島 鋭児郎
切島 鋭児郎
やってみな!…とか言っておめーも轟も強烈な範囲攻撃ポンポン出してくるからなー
爆豪  勝己  (かっちゃん)
爆豪 勝己 (かっちゃん)
ポンポンじゃねぇよナメんな
爆豪の言葉に切島達が首を捻る。
爆豪  勝己  (かっちゃん)
爆豪 勝己 (かっちゃん)
筋肉酷使すりゃ筋繊維が切れるし、走り続けりゃ息切れる。個性だって身体機能だ。奴にも何らかの限度があるハズだろ
爆豪  勝己  (かっちゃん)
爆豪 勝己 (かっちゃん)
(俺だって出せる威力には限度がある。だから、コスチュームで許容超過の爆破をノーリスクで撃てるよう考えたわけだしな)
全員の視線が激しい戦いを繰り広げる緑谷と轟に集中する。
轟 焦凍
轟 焦凍
耐久戦か…すぐ終わらせてやるよ
緑谷   出久  (デク)
緑谷 出久 (デク)
(もう右手全滅…!)
轟の氷結をスマッシュで相殺する緑谷だが、その右手は既にボロボロ。残る攻撃手段が左手に絞られてしまった。
プレゼント・マイク
プレゼント・マイク
轟、緑谷のパワーに怯むことなく近接へ!
右手の痛みで隙を見せた緑谷に、轟が一気に近づき至近距離で氷結を発生させた。
緑谷   出久  (デク)
緑谷 出久 (デク)
(ダメだ近…)
轟の氷結が緑谷の右足を捕らえる。
 次の瞬間、スタジアムに凄まじい爆風が吹き荒れた。
轟 焦凍
轟 焦凍
…さっきよりずいぶん高威力だな。近づくなってか
緑谷は左腕を犠牲にして全身が氷漬けにされることを防いだのだ。
緑谷   出久  (デク)
緑谷 出久 (デク)
(個性だけじゃない…全ての能力が…強い!)
轟 焦凍
轟 焦凍
何だよ、守って逃げるだけでボロボロじゃねえか
その時、緑谷は轟の様子がおかしいことに気づいた。
緑谷   出久  (デク)
緑谷 出久 (デク)
(震え…!?そういうことか…!…ちくしょう)
轟の弱点を見つけた緑谷だが、もう彼に戦う力は残ってない。
轟 焦凍
轟 焦凍
悪かったな。ありがとう緑谷。
 おかげで…奴の顔が曇った
緑谷はトーナメント前の轟の言葉を思い出した。
轟 焦凍
轟 焦凍
その両手じゃ戦いにならねぇだろ。
 終わりにしよう
プレゼント・マイク
プレゼント・マイク
圧倒的に攻め続けた轟!!
 とどめの氷結を…
緑谷   出久  (デク)
緑谷 出久 (デク)
どこ見てるんだ…!
轟の氷結攻撃が緑谷に迫り、誰もが轟の勝ちを確信したその瞬間、轟の氷が凄まじい爆風によって吹き飛ばされた。
轟 焦凍
轟 焦凍
ぐっ……!てめェ…
 何でそこまで…
砕けた指で攻撃してきた緑谷に、轟が問いかける。
緑谷   出久  (デク)
緑谷 出久 (デク)
震えてるよ、轟くん。
 君自身、冷気に耐えられる限度があるんだろ…?で、それって左側の熱を使えば解決出来るもんなんじゃないのか…?

皆…本気でやってる。勝って…目標に近付く為に…1番になる為に!
 




半分の力で勝つ!?
 まだ僕は君に傷1つつけられちゃいないぞ!



 緑谷は砕けた指を握り締め、叫ぶ。








緑谷   出久  (デク)
緑谷 出久 (デク)
全力でかかって来い!!!!
緑谷の叫びを聞いていた宵凪は、緑谷が何を考えているのか理解できないでいた。
宵凪  氷熾響
宵凪 氷熾響
(なぜそこまで…緑谷くん君にとって轟くんはただの学友…何があなたを突き動かすのかボクには理解できない…)
宵凪  氷熾響
宵凪 氷熾響
(……君が持ってるそれは、ボク自身に欠けているもの?)
空に向けていた視線をゆっくりとステージへと視線を戻した。その頃、ステージでは緑谷と轟が互いに敵意を向けて睨み合っていた。
轟 焦凍
轟 焦凍
……何のつもりだ。
 全力…?クソ親父に金でも握らされたか…?イラつくな…………!
轟 焦凍
轟 焦凍
(近距離ならお前は対応出来…)
近接戦に持ち込みケリをつけようとする轟だが、それを予測していた緑谷は態勢を低くし、轟の懐に潜り込んだ。
轟 焦凍
轟 焦凍
(右足上がった瞬間に……こいつ)
緑谷   出久  (デク)
緑谷 出久 (デク)
(イメージ…電子レンジの…爆発…しない…
 爆発…しない…!しない!!)
その瞬間、轟は緑谷の攻撃に恐怖に近い何かを感じた。緑谷の拳が轟の腹部にめり込み、轟の氷結が緑谷の左腕を凍らす。
プレゼント・マイク
プレゼント・マイク
モロだぁーーー!
 生々しいの入ったぁ!!
緑谷   出久  (デク)
緑谷 出久 (デク)
ぐぅう!!
砕けた拳で殴ったせいで肉が裂け血が吹き出すが、緑谷が轟から目を離すことはない。
轟 焦凍
轟 焦凍
何で
緑谷   出久  (デク)
緑谷 出久 (デク)
(氷の勢いも弱まってる)
混乱する轟が緑谷の動きを止めようと地面を凍らせるが、緑谷は冷静に轟の氷結を回避した。
 その頃、スタジアム外ではセメントスがミッドナイトに試合の中止を訴えていた。
セメントス
止めますか?ミッドナイト。緑谷君アレ、どうせ治してもらえるからか無茶苦茶してる。今はアドレナリンドバドバで痛みも思った程じゃないでしょう
セメントス
しかし、あの負傷、恐らく一度のリカバリーで全快は…たとえ彼が勝っても次の試合はムリかもしれませんよ!?
ミッドナイト
ミッドナイト
……
しかしミッドナイトがセメントスの問いかけに答えることはなかった。
イレイザーヘッド(相澤先生)
イレイザーヘッド(相澤先生)
(威力は落ちるが出来始めてる。無茶苦茶やってるんじゃない、勝つ為にはこれが現時点での奴の最善)
イレイザーヘッド(相澤先生)
イレイザーヘッド(相澤先生)
(しかしまァ、いくら治るからといっても自ら激痛に飛び込むのは相応の覚悟がいるもんだ。何があいつをつき動かす)
宵凪  氷熾響
宵凪 氷熾響
(それが解ればボクも…君達達のようになれるのでしょうか…)
緑谷   出久  (デク)
緑谷 出久 (デク)
ぐっ…
緑谷   出久  (デク)
緑谷 出久 (デク)
(握れない…!)
緑谷の拳はすでに再起不能。握ることすら困難になってしまった。そして、このチャンスを轟が逃すはずがない。
緑谷   出久  (デク)
緑谷 出久 (デク)
うぅっ!
しかし、緑谷は頬の裏に親指を引っ掛けることでデコピンを再現、轟の攻撃を相殺した。
 ここにきて緑谷の攻勢…流石の轟も動揺が隠せていない。
轟 焦凍
轟 焦凍
何でそこまで…!
緑谷   出久  (デク)
緑谷 出久 (デク)
期待に応えたいんだ…!
 笑って…応えられるような…カッコイイ人ヒーローに……なりたいんだ!!
轟 冷  (轟の母親)
轟 冷 (轟の母親)
焦凍…
自分の名前を呼ぶ優しい声に轟は動きを止めた
緑谷   出久  (デク)
緑谷 出久 (デク)
だから全力で!やってんだ皆!
動きを止めた轟に緑谷が頭突きを入れ、大きく弾き飛ばす。
緑谷   出久  (デク)
緑谷 出久 (デク)
君の境遇も、君の決心も、僕なんかに計り知れるもんじゃない… でも…全力も出さないで1番になって完全否定なんて、フザけるなって今は思ってる!
思い出したくもない忌々しい記憶が濁流だくりゅうのように轟を呑み込む。
轟 冷  (轟の母親)
轟 冷 (轟の母親)
やめて下さい!まだ5つですよ……
エンデヴァー
エンデヴァー
もう5つだ!邪魔するな!!
自分のせいで父に殴られる母の姿…
轟 焦凍
轟 焦凍
うるせぇ…………
轟 焦凍
轟 焦凍
嫌だよお母さん…僕…お父さんみたいになりたくない…
 お母さんをいじめる人になんてなりたくない…
轟 冷  (轟の母親)
轟 冷 (轟の母親)
……でもヒーローにはなりたいんでしょう?
優しく頭をなでてくれた母の姿…
轟 冷  (轟の母親)
轟 冷 (轟の母親)
いいのよ、おまえは…強く想う将来ビジョンがあるなら……
轟 焦凍
轟 焦凍
(いつもこの先が思い出せねぇ…)
轟の体を霜が覆っていき、更に動きが鈍くなる。
緑谷   出久  (デク)
緑谷 出久 (デク)
だから…僕が勝つ!! 君を!越えてっ!!!
緑谷の拳をもろに喰らった轟は、後方に大きく吹き飛ばされた。
轟 冷  (轟の母親)
轟 冷 (轟の母親)
お母さん…私ヘンなの…もうダメ…
 子どもたちが…日に日にあの人に似てくる…
 焦凍の…あの子の左側が…時折とても醜く思えてしまうの…私…もう育てられない…育てちゃダメなの…
轟 焦凍
轟 焦凍
お…母さん…?
怯え切った目で自分を見る母の姿…
轟 焦凍
轟 焦凍
(俺は…)
轟 焦凍
轟 焦凍
お母さんは…?
エンデヴァー
エンデヴァー
おまえに危害を加えたので病院に入れた。
 全く…大事な時だというのに…
優しい母を奪った男の姿…
轟 焦凍
轟 焦凍
(俺は親父こいつを…)
轟 焦凍
轟 焦凍
親父を…
譫言うわごとの様にそう呟く轟に、我慢できなくなった緑谷が嘆きを含んだ声で叫んだ。
緑谷   出久  (デク)
緑谷 出久 (デク)
君の!!力じゃないか!!!!
轟 冷  (轟の母親)
轟 冷 (轟の母親)
でも、ヒーローにはなりたいんでしょう?
 いいのよおまえは。血に囚われることなんかない。なりたい自分に、なっていいんだよ
これは、いつの間にか忘れてしまった轟の記憶。
 母に勇気づけられた大切な記憶。
 緑谷の言葉がトリガーとなり、轟の奥深くに眠っていた母親との記憶を呼び起こしたのだ。激しく燃え上がる炎にプレゼントマイクが叫び声を上げ、観客席も騒がしくなる。
プレゼント・マイク
プレゼント・マイク
これはーーー!?
その熱気は想像を遥かに越え、観客席にいる麗日達も熱いと感じる程だ。
轟 焦凍
轟 焦凍
勝ちてぇくせに……ちくしょう…敵に塩送るなんて…どっちがフザけてるって話だ…

俺だって…!ヒーローに…!!
左の炎が右の霜を溶かし、右の氷が左の熱を鎮める。自分を縛り付けていた呪縛を打ち破った轟は、復讐のためではなく、夢を叶えるためにこの力を使うことを決意する。
エンデヴァー
エンデヴァー
焦凍ォォォォ!!!
 やっと己を受け入れたか!!そうだ!!良いぞ!!ここからがお前の始まり!!
俺の血をもって俺を超えて行き…俺の野望をお前が果たせ!!
轟がこれまで拒絶していた炎を使った。
 その事実に興奮したエンデヴァーがスタジアム中に響くほど大きな声で轟に語り掛けるが、当の本人には聞こえてないのか、轟がその声に反応することはなかった。
プレゼント・マイク
プレゼント・マイク
エンデヴァーさん急に激励…か?
 親バカなのね
目の前で轟々と燃え上げる炎に、緑谷の表情が自然と笑顔になる。
轟 焦凍
轟 焦凍
何笑ってんだよ。その怪我で…この状況でお前…イカレてるよ…どうなっても知らねぇぞ
その次の瞬間、両者は全く同じタイミングで攻撃態勢に移った。
セメントス
ミッドナイト!
セメントスがミッドナイトを呼んだ瞬間、2人は個性を発動させ緑谷と轟を止めようと動き出す。
緑谷   出久  (デク)
緑谷 出久 (デク)
(なるべく近くで…ありったけを!)
緑谷は両足を犠牲にすることで轟の特大氷結を回避。そのまま轟に向かって拳を振りかぶった。
セメントスが2人の間に数枚のコンクリートの壁を作って直撃を防ぐも、その威力を殺しきることは出来なかった。
 これまでとは比べ物にならない程の爆音と共に、辺りに凄まじい暴風が吹き荒れる。
プレゼント・マイク
プレゼント・マイク
何今の…おまえのクラス何なの…
イレイザーヘッド(相澤先生)
イレイザーヘッド(相澤先生)
散々冷やされた空気が瞬間的に熱され膨張したんだ
プレゼント・マイク
プレゼント・マイク
それでこの爆風てどんだけ高熱だよ!
 ったく何も見えねー!
 オイこれ勝負はどうなって…
砂煙が晴れ、全員が目にしたのは、場外に倒れる緑谷とボロボロのステージに立っている轟だった。
ミッドナイト
ミッドナイト
緑谷くん…場外…轟くん…3回戦進出!!
ステージ大崩壊の為しばらく補修タイムが行われてから試合再開となった
塩崎と飯田の戦いは、飯田が塩崎を場外に押し出しあっさりと終了。
 次の試合は今大会注目度No.1の宵凪と圧倒的な強さで1回戦を突破した常闇の試合だ。
2回戦第3試合  常闇踏陰vs宵凪氷熾響
プレゼント・マイク
プレゼント・マイク
両者1回戦を圧倒的な力で突破!正直1番楽しみだった組み合わせ!宵凪対バーサス常闇!!
 スタート!!!
すでに始まっているにも関わらず、無表情まま全く動かない宵凪。宵凪の実力を、個性の詳細……情報をあまり分からない常闇は迂闊うかつには攻撃できないでいた。
宵凪  氷熾響
宵凪 氷熾響
黒影ダークシャドウ…だったけ?彼に生死はあるの?
常闇 踏陰
常闇 踏陰
!!?
突然話し出した宵凪とその話の内容に常闇は数秒ほど固まってしまったが、すぐに冷静さを取り戻す。
常闇 踏陰
常闇 踏陰
…多少の感覚はあるが、あくまで影。
 死ぬことはない
宵凪  氷熾響
宵凪 氷熾響
そうか、それを聞いて安心した。黒影ダークシャドウに対しては手加減なしでも大丈夫だな……
次の瞬間、常闇は無意識の内に自身の背後を守るように黒影ダークシャドウを出していた。
宵凪  氷熾響
宵凪 氷熾響
…… 危ない
危ないとは露程も思っていないような緊張感のない声。
 一瞬で常闇の背後に回った宵凪は、黒影ダークシャドウの攻撃を危なげなく 躱しかわ、ふわりと地面に着地した。
宵凪  氷熾響
宵凪 氷熾響
……君、ボクの事見えてたわけじゃないね
勘…もしくはその子の意思?
黒影ダークシャドウを指差し薄らと笑みを浮かべる宵凪。常闇は冷や汗が止まらなかった。
 もし、あの瞬間、個性を使えてなかったとしたら自分は確実に死んでいた。そう思わせる程の殺気常闇は目の前の宵凪という名のバケモノに視線を向けると、今すぐに逃げ出したいと思っている自分を黙らすように頬を叩いた。
常闇 踏陰
常闇 踏陰
俺は認識が甘かったようだ…宵凪、俺ではお前に勝てん…
宵凪  氷熾響
宵凪 氷熾響
……
常闇 踏陰
常闇 踏陰
だが…一泡吹かせる程度ならば今の俺にも可能だろう!行くぞ!黒影ダークシャドウ!!
八百万でさえ防戦一方を強いられた黒影ダークシャドウの連撃を、宵凪は意図も容易くたやす躱しかわていく。
 そんな宵凪の動きを見ていたA組は、宵凪の強さの秘訣とは何なのかと盛り上がっていた。
切島 鋭児郎
切島 鋭児郎
やっぱさ、個性なんじゃ?じゃなきゃあんな速く動けなくね?
瀬呂 範太
瀬呂 範太
そりゃそうだろうけどよ……
宵凪はUSJん時、混血児って言ってたけど実際どんな感じなのかは言ってなかっただろ
上鳴  電気
上鳴 電気
いやいや!あの顔だぜ?もう異形系と言っても…は!?妖精か!?妖精なのか!?
常闇 踏陰
常闇 踏陰
クソッ…!!
常闇は追い詰められていた。
 体はまだまだ動く、個性も問題なく使える。
 だが、心は別だ。気持ちは別だ。
 常闇は自分の個性に自身があった。
 素早い動きに圧倒的な攻撃力、大きさや形もある程度なら自由。光が弱点だが、それを引いても自他共に認める強個性。
 それが宵凪に攻撃を当てるどころか掠りもしない。手加減など一切せずに本気で戦っているのにも関わらずだ。
常闇 踏陰
常闇 踏陰
物ノ怪め……!!
宵凪  氷熾響
宵凪 氷熾響
失礼だな……正真正銘の人間だ。
まぁ個性のことを指しているなら別だがな
胡蝶は黒影ダークシャドウの爪をジャンプで躱し、迫ってくるもう片方の爪を空中で体を捻ることで躱した。
常闇 踏陰
常闇 踏陰
それも躱すか…
宵凪  氷熾響
宵凪 氷熾響
今度はこちらだな……
(忍芽姉さん!技借りますからね)
宵凪  氷熾響
宵凪 氷熾響
蟲の呼吸蜈蚣ノ舞 百足蛇腹ごこう                   ひゃくそくじゃばら
常闇 踏陰
常闇 踏陰
ッ!!黒影ダークシャドウ!!!
宵凪が常闇の視界から消えたと同時に地面が弾けた。この現象に見覚えがある常闇は、すぐに黒影ダークシャドウを盾のように自身の正面に移動させた。
 だが、その程度で宵凪の突きは防げない。
 黒影ダークシャドウを貫いた刃は、そのままの勢いで常闇の肩を切り裂いた。
宵凪  氷熾響
宵凪 氷熾響
あれ?肩を潰すつもりだったが…まぁいいか…さて、まだ続けるか?
常闇 踏陰
常闇 踏陰
グッ……!
肩を押さえて蹲うずくまる常闇。そして、それを真顔で見下ろす宵凪。
 咄嗟とっさに立ち上がったヒーローを責める者はいなかった。



2回戦第3試合は常闇の降参により宵凪、勝利
𝕟𝕖𝕩𝕥➯➱➩「ベスト4」
Rai
Rai
おつ6165文字
冬休みに少し前に入ったから沢山投稿しようと思ってもなかなか実行できておりません……自分に甘いですね、その分長くと思っているのでお許しくださいまし。
宵凪  氷熾響
宵凪 氷熾響
見てくれてありがとう……次回もお楽しみに

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