《Side:あなたの偽の名前》
(道場)
お互いに隊服の上着を脱ぐ。
上着着ても動きが鈍る訳じゃないけど、お互いの斬撃で上着が着れたら直さないといけないから、それを避けるため。
そしてお互いに向き合いながら、自分の刀を鞘から抜き取る。
お互いに刀を構えて、見つめ合う。
アタシが先に行くか、保科宗四郎が先に行くか…
よく足元を観察する。
アタシが足元を観察してるのを察したのか、保科宗四郎は双剣を勢いよく振るい、斬撃をこちらへぶつけてきた。
アタシは斬撃を躱すと同時に持ち手のボタンを押して蛇腹剣を鞭モードにする。
そして蛇腹剣を思いっきり振る。
躱された。
やっぱ素早い保科宗四郎に攻撃が当たる可能性は低い。
まあそれは単体用の攻撃じゃそうなるよね。
まあでも、技の精度を上げたい。
まずは刀モードから。
持ち手のボタンを押して刀モードに戻す。
相手が速いに特化してるなら、その速さに打ち勝つ力が必要。
なら単体専用のこれかな。
また躱された。
やっぱりアタシの力じゃ打ち勝てないよね…
ならこっちもスピード勝負だ。
光の速さのごとく、相手に突っ込みながら刀を振る。
が、これも躱された。
保科宗四郎が双剣を構える。
まずい、来る!
保科宗四郎がこちらへ駆け寄る。
まずい、これ避けれな…
保科宗四郎が何度もアタシに斬りかかる。
…これは賭けだけどするしかない!
アタシは斬撃が身体に届く直前に蛇腹剣を鞭モードにする。
アタシは鶯籠で自分の身を守りつつ、保科宗四郎の斬撃を全部受け流した。
一か八かの賭けだったけど、なんとか無傷で済んだ。
鶯籠…これは自分の身や鶯籠より内側を守るために作った技。
外側の敵をこちらに近づけさせないために広範囲に斬撃と打撃がいくようにしたから、狭い範囲で使うなんて考えてもなかった。
吉と出るか凶と出るか分からなかったけど成功してよかった!
アタシは蛇腹剣を構え直す。
見えない斬撃…!
しかもさっきより範囲が広い。
また見えない斬撃…しかも交差討ちから間がない!
交差討ちは範囲が広い、今避けても間に合わない。
交差討ちを受け流せても空討ちがすぐに来る。
なら…これの出番かな!
刀身を出来るだけ長く伸ばして蛇腹剣を大きく回す。
するとゴオオオオォ…という音と共に強力な風が起きる。
この風の勢いで斬撃を相殺する。
これは新しく作った技で、こっちに突っ込んできた敵を木っ端微塵にするために作った技。
これもかなりの勢いがあるから、攻撃の威力を相殺できる。
保科宗四郎はさっきと同じように斬撃を二回繰り出す。
竜巻で受け流すか…
違うこれは…二連撃を囮にして隙をつく奴だ!!
保科宗四郎がさっきと同じことをするわけがない。
案の定先ほど彼がいた場所にはもう彼はいなかった。
まずい、どの方向に避けても負ける!
保科宗四郎の霞討ちだ!!
後ろから保科宗四郎が襲いかかる。
アタシは素早く蛇腹剣を振って、保科宗四郎の右腕に刀身を巻き付けて掴む。
ガシッ
これは攻撃を捨てて、相手の一部に巻き付けて動きを制限する技。
相手の隙を突くことで成功する。
アタシは蛇腹剣を握っていた手を緩めて保科宗四郎の腕を解放する。
やってしまった。
どうする、このままじゃ負ける。
多分保科宗四郎は鶯籠も竜巻も荊蔦も対策出来る。
…仕方ない、これはあまり使いたくなかったんだけど。
失敗したらもう負け確定。
どうか成功しますように…
アタシは蛇腹剣を剣モードに戻して、構えを取り素早く保科宗四郎へ駆け寄って刀を振るう。
それとは別にすぐに蛇腹剣を鞭モードにしてまた次の一撃を放つ。
刀で受け止められたが、想定外の攻撃だったらしく、保科宗四郎は完全には受け止めきれず軽く吹っ飛んでいった。
この蜃気楼は相手に攻撃すると見せかけて、一回目の攻撃を囮とする。
その次の斬撃を間を空けずに一回目の攻撃とは"反対の方向"に素早く、相手に悟られる前に放つことで初めて技として成り立つ。
アタシがもう一撃振るう前に鞭モードにしたのは刀のままだと勘づかれて完全に防がれてたかもしれないから。
しかしこの技は自分でも至難の技。
相手に先に勘づかれたら終わり。
自分も手こずったら終わり。
と産みの親であるアタシでも難しい技である。
鞘に蛇腹剣を収めた直後、アタシは突然の左手首の痛みを感じ、左手首を押さえた。
蜃気楼は身体を超素早く動かすことで成り立つ。
そんな力技をゴリ押しでやったら身体のどっかしら痛めるのは想像つく。
保科宗四郎が双剣を鞘にしまいながら、心配そうに駆け寄ってきた。
凄い笑顔で言われた…
保科宗四郎が頭を抱え始めた。
しかしその数秒後、何かを閃いたのか瞳孔が開いていた。
保科宗四郎が爆笑しながら答える。
やばいこれ、結構心に来る。
そう、蜃気楼は自然の現象が重なりあって発生する現象。
それをゴリ押しでそう見せてるアタシには保科宗四郎…保科さんの言葉はクリーンヒットだった。
保科さんが上着を羽織りながら出口へ向かう。
鳴海隊長とはまた違ったカッコよさの人だ…!
アタシは保科さんの背中を見ながら敬礼した。
保科さんは手をこちらに振るとそのまま道場から出ていった。
アタシはガッツポーズをして、心から強くなろうと誓った。
《Side:鳴海》
(道場裏)
ボクは保科に突っかかる。
実はボクはこっそり道場の窓から二人が手合わせするところを見ていた。
そしてあなたの偽の名前が怪我してたのもバッチリ見てたのだ。
許せん!ボク様のあなたの偽の名前を傷つけて生きて帰れると思うなよ!!(まだ付き合ってないし勘違いしてる)
保科はボクにお辞儀をすると、そのまま基地の門へ歩いていった。
おまけ:おまりの分かりやすさに、保科宗四郎にも察される鳴海であった。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。