第91話

4-4.
831
2022/12/29 10:28
住民
おい、あの方は調査兵団の…!
住民
見たことがあるぞ



どよめく群衆の中を歩く。

あなた
....


あなたは部屋に戻ってなどいなかった。

ある目的で街に巡回を兼ねて訪れていた。

定期的に訪ねていた、マルコを預けているパン屋は、街の中でもまだ裕福な地域に店を構えているためここまで深くまで足を運んだことはない。

現状を、自分の目で確かめてみたかったのもある。


子ども
ママー、お腹すいたよ
母親
もう少し我慢して頂戴。もう食べてしまっては今日一日お腹がもたないでしょう
聞こえてくる親子の会話に改めて自分がどれだけ身勝手に生きてきたか思い知らされる。

散々自分のことや巨人にかかり切りになって、自分の所属する調査兵団を支えてくれる団体ーーー"民"に一度も目を向けられなかった。

あなた


思わず携帯の備食を渡してしまいそうになるのをぐっと堪える。
この子に渡せば一時は空腹を凌げるかもしれない。けれど、他の人たちにも同じだけ与えてあげることなんてできない。

悔しさに顔を歪ませていると、聞き覚えのある声がした。



モブリット
あなた隊長じゃないですか!
あなた
モブリット?


名前を呼ばれて振り返ればモブリットが何やら大きな紙袋を抱えてこちらに向かってきた。


ハンジの買い出し?なんてフランクに尋ねようとして、はっと我に返る。

あなた
(そうだ、モブリットは俺が元に戻ったこと知らないんだ)
モブリット
どうしてこんなところに…!
いけません、お体に障りますよ。
早く戻りましょう
あなたの肩に手を添えて兵団に連れて帰ろうとするモブリットにやんわりと断りを入れる。
あなた
あの、モブリット副隊長、俺のことならお気になさらないでください。
今日はちゃんと用事があってここへ出向いているのですから
モブリット
そんなの、僕にできることなら代行しますよ!
あなた
いいえ。俺じゃなきゃ駄目なんです
モブリット
ちょ…っ、ちょっと待ってくださいあなた隊長!



どこかに歩き始めたあなたに、モブリットは慌ててその後を追った。



















ーーーーー
ーーーーーーー










モブリット
ここは…商会の…!?
驚くモブリットをよそにあなたはある一件の家のドアをノックした。

??
誰だ?こんな朝早くから…

しばらくしてドアが開き小太りの男が顔を覗かせた。

あなた
ディモ・リーブスさんですね
ディモ・リーブス
…。
調査兵団の隊長さんが、私に何の用ですかい
あなた
少しお話したいことがあるんです
あなたが手のひらに握っていたものをリーブスにちらりと見せる。
ディモ・リーブス
!あんた、そりゃあ…
リーブスは目を見張るとすぐにあなたたちを奥に招き入れた。
ディモ・リーブス
ここで立ち話にしちゃあ重すぎる。どうぞ中へ































エルヴィン
…ふむ。おかしいな

エルヴィンが時計を見て呟く。
針は13時を指していた。

エルヴィン
リヴァイ、朝食であなたを見かけたか?
リヴァイ
いや。見なかった。
それどころか部屋にいる気配がない


リヴァイはそう答えると窓から門を見下ろす。
リヴァイ
…門兵にも伝えてある。
帰ってきてるならここに向かうはずだ
エルヴィン
そうか
がたり、と音を立ててハンジが椅子から立ち上がった。
ハンジ
モブリットも買い出しから帰ってきてないし、ちょっと街まで様子見がてらあなたがいないか見てくるよ
あなた
その必要はないよ
そのとき、ちょうど扉が開きあなたが入ってきた。
ハンジ
あなた!
あなた
ハンジ…ごめんね、色々迷惑かけちゃって
くだけた口調で微笑むあなたにハンジは感極まって抱きついた。
ハンジ
うおおお!!あなただああ!!やっぱこうでなくちゃな、あなたは!!
あなた
ハンジってば…

あなたの周りに他の兵団員が集まってくる。
ナナバ
あなた隊長!
あなた
ナナバ、みんなも…本当に迷惑をかけてしまってごめんなさい
ゲルガー
いいんですよ、そんなこと!元の隊長が見れただけで…なあ!
リーネ
そうですよ!またよろしくお願いします!
あなた
ありがとう…


次々に掛けられる暖かい言葉にあなたは涙ぐみながら一つ一つ返事をしていく。
エルヴィン
あなた、今までどこに行っていた?
あなた
心配かけてごめんエルヴィン。ちょっと街にね…



エルヴィンに尋ねられてあなたは笑いながら言葉を濁した。
あなた
(さっきのことはわざわざ言う必要ないし)
エルヴィン
そうか、何事もなかったなら良かった
あなた
うん!
エルヴィン
なら帰ってきてすぐで申し訳ないが早速今後の作戦について計画を練りたい。
あなた、"裏切り者"について覚えている限りのことを教えてくれないか
エルヴィンが椅子に腰を据えるとあなたが深く頷いた。
あなた
わかった

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