第90話

4-3.
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2022/12/29 09:55
リヴァイ
.....
翌朝、リヴァイは静かに目を覚ました。
心なしかいつもより目覚めがいい。

ベッドから起きあがり、洗面所でうがいと洗顔をする。



キュッ
リヴァイ
…ふぅ


蛇口を止めて洗濯したての清潔なタオルで顔を拭う。
耳をすませば野鳥の囀る声が聞こえた。




…カタン…

僅かに隣の部屋からも物音がする。
あなたが起きたのだろう。彼もまた起床時間が早い。

程なくして扉が開く音がして、あなたが部屋から出ていく気配がした。



気にはなったがお互いにプライベートというものは存在する。
リヴァイはエルヴィンに話をしに行こうと兵団服に袖を通した。












エルヴィン
こんな朝早くから来るとはな。寝ていたらどうするつもりだったんだ?

エルヴィンはリヴァイを部屋に招き入れるなりそう愚痴る。
しかしその表情はどこか明るく、楽しんでいるようだ。
リヴァイ
お前こそこんな朝早くから俺が来るとわかっていたんだろうが。だからこいつらを集めたんだろ


リヴァイはエルヴィンの部屋を見回す。
ミケやハンジなどのベテラン勢の顔ぶれが揃っていた。

エルヴィン
はは、違いない
ハンジ
さあエルヴィン、もう話してよ。大事な話があるんでしょ?


ハンジが急かすように言う。

エルヴィン
そうだな。リヴァイも揃ったことだし…1つ目はお前から伝えてもらおうか
リヴァイ
あ?

エルヴィン
私とお前が知っていて、彼らは知らないことだ
なんだ、と考えてすぐにリヴァイは思いついた。
リヴァイ
あなたのことか
エルヴィン
そうだ
ナナバ
あなた隊長のことなら昨日帰還されたと思うのですが
ナナバが言う。
リヴァイ
それはそうだが、もっと重要なことだ
ハンジ
まさか…

ハンジの呟きにリヴァイは頷いた。


リヴァイ
そのまさかだ。あなたは全てを思い出した
ハンジ
っしゃあああああ!!!


ワッと部屋が歓声に包まれる。


ガツッ
リヴァイ
馬鹿野郎、声が漏れたらどうする
ハンジ
あだッごめんごめん!



舌打ちをしてリヴァイがハンジを蹴る。
ハンジは痛がりながらもひどく嬉しそうにしている。

ハンジ
で、そのあなたはどうしてここに居ないのさ
リヴァイ
さっきどこかへ出ていったな。お前が仕向けたのかエルヴィン
エルヴィン
まさか
エルヴィンは少し驚いた様子で返す。
エルヴィン
私はただあなたはもう少しゆっくり休む必要があると思って呼ばなかっただけだ。
あなたは出かけたのか?
リヴァイ
いや…部屋を出ていったとしかわからないが
ハンジ
ならもう部屋に戻ってるんじゃない?
ハンジの言葉にそれもそうかとリヴァイは頷く。
リヴァイ
かもな
エルヴィン
皆に言っておく、他言は厳禁だ
エルヴィンがそう告げるとナナバがすぐ聞き返す。
ナナバ
な、何故ですか?あなた隊長が戻ったと聞けば皆が喜びますよ
エルヴィン
そうだろう。実際私はその事実に大きく心を救われた。しかしーーーー



エルヴィンは声を低めた。

エルヴィン
ーーこの兵団の中に、裏切者が居ると判明した
全員
...!!


ナナバたちは思わず背筋を正した。


ハンジ
…え?待ってよ、どういうこと??
ハンジが眉をひそめる。
ハンジ
裏切者だって?
エルヴィン
ああ。あなたは故意に記憶を捨てさせられたんだ
ハンジ
何だと…!?どこのどいつだ!
エルヴィン
落ち着けハンジ


暴れだそうとするハンジをエルヴィンが宥める。

ハンジ
だって、そのせいであなたは辛い思いしたんだよ!
エルヴィン
わかっている。だからこそ冷静になれ
ハンジ
....っ


納得出来ないといった様子でハンジが黙り込む。
ナナバは静かに尋ねる。
ナナバ
それなら我々の面子でその犯人捜しをするということですか?
リヴァイ
言っただろう。あいつは全てを思い出したと
ハンジ
だったら顔は割れてるんだね!?
パッと顔を上げてハンジが割り込む。
リヴァイ
そういうことだ
エルヴィン
とはいえ、まだその人物像を詳細には聞いていない。何しろ彼は昨日帰ってきたばかりだ。
もう他言無用の意味はわかったな?
ミケ
その人物と近しい兵団員に知られてしまうことはリスクが高い…
ミケの言葉にエルヴィンが頷く。
エルヴィン
あなたは単独犯とは思っていないようだ。
その件も含めて、今後の動向を午後から少人数で検討する。いいな
全員
了解
ハンジたちは引き締まった様子で敬礼をした。

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