あなたの下の名前side
あなたの下の名前「はー…」
口からこぼれたため息が、人混みの賑やかな声に
紛れて消えていく。
あなたの下の名前「武道くん…」
まだまだ関係が築けていない彼。
優しげなその笑顔を思い出しては。
あなたの下の名前「どこかで、見たことある気がするんだよなぁ…」
素直そうな彼の笑顔。
初めて出会った時から、それがずっと引っかかって引っかかって、でも中々思い出せない。
あなたの下の名前「う〜ん…難しいしまた今度でいいか。」
思い出すのは苦手だしね。
るんるんと機嫌よく商店街を見回しては、気分が
上がった。
いい匂いするぅ…と、漂ってきたカレーの香りを
嗅いでは頰が緩む。
ピロン。
あなたの下の名前「ん?」
ケーキ屋さんに寄ろうとしたら、カバンの中から通知音が聞こえて、ガラケーを取り出す。
メッセージを送ってくれた連絡先を見て、
思わず笑顔になった。
________________________________
<あなたの下の名前、久しぶり〜!!
最近会えてないよねー…また話したくなっちゃって!
っていうのは嘘!!会いたいのは本当だけど!
実はねー、今度、夏祭りがあるでしょ?
ウチ、そこにケンちゃんと行こうと思ってて!
だからさー、着付けお願いしてもいい?
マイキーがいない時に呼ぶから!!
お返事お願いね!
__________________________
あなたの下の名前「夏祭りかぁ〜」
あの子は送ってくる文まで元気だなぁ、と思いながら、
短く文を返す。
___________________________
→To ema.
<日にちと時間にはよるけど、大丈夫だよ!
__________________________
『あなたの下の名前〜!今日はどこに行く?』
小さい頃から、仲の良かったわたし達。
可愛らしい無邪気な笑顔を思い出して、ふふっと
声がもれる。
あなたの下の名前「早く空いたいなー…、エマ。」
ケーキ屋さんは、もういいか。
今はケーキを食べるよりも、優しげな味で心が満たされているから。
春の終わりかけの空を見上げながら
小さく駆けた足は、
自分の気持ちを表しているかのように軽やかだった。











編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。