第11話

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2025/12/14 11:07 更新






あなたの下の名前side






あなたの下の名前「はー…」






口からこぼれたため息が、人混みの賑やかな声に
紛れて消えていく。









あなたの下の名前「武道くん…」





まだまだ関係が築けていない彼。







優しげなその笑顔を思い出しては。







あなたの下の名前「どこかで、見たことある気がするんだよなぁ…」








素直そうな彼の笑顔。





初めて出会った時から、それがずっと引っかかって引っかかって、でも中々思い出せない。






あなたの下の名前「う〜ん…難しいしまた今度でいいか。」






思い出すのは苦手だしね。







るんるんと機嫌よく商店街を見回しては、気分が
上がった。





いい匂いするぅ…と、漂ってきたカレーの香りを
嗅いでは頰が緩む。







ピロン。







あなたの下の名前「ん?」










ケーキ屋さんに寄ろうとしたら、カバンの中から通知音が聞こえて、ガラケーを取り出す。







メッセージを送ってくれた連絡先を見て、
思わず笑顔になった。












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<あなたの下の名前、久しぶり〜!!
 最近会えてないよねー…また話したくなっちゃって!

 
 っていうのは嘘!!会いたいのは本当だけど!
 
 実はねー、今度、夏祭りがあるでしょ?
 ウチ、そこにケンちゃんと行こうと思ってて!

 だからさー、着付けお願いしてもいい?
 マイキーがいない時に呼ぶから!!

 お返事お願いね!




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あなたの下の名前「夏祭りかぁ〜」







あの子は送ってくる文まで元気だなぁ、と思いながら、
短く文を返す。








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→To ema.



<日にちと時間にはよるけど、大丈夫だよ!



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『あなたの下の名前〜!今日はどこに行く?』





小さい頃から、仲の良かったわたし達。


可愛らしい無邪気な笑顔を思い出して、ふふっと
声がもれる。







あなたの下の名前「早く空いたいなー…、エマ。」








ケーキ屋さんは、もういいか。





今はケーキを食べるよりも、優しげな味で心が満たされているから。









春の終わりかけの空を見上げながら
小さく駆けた足は、
自分の気持ちを表しているかのように軽やかだった。



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