まふまふside
丸めた紙をあなたに向かって投げてみた。
不機嫌そうな顔であなたがこっちを見てくる。
面白い。
やっぱり僕はあなたが嫌いだよ。
だって、あなたの不機嫌そうな顔を見ると、
面白くて仕方ない。
絶対嘘だ。
僕があなたを好き???
馬鹿馬鹿しい。
そんな事、あり得るわけがないだろう。
そう。あり得るわけ、ないんだ。
ため息をついて机につっぷすと
誰も座っていない空っぽの席が目にはいる。
アイツの席だ。
アイツは、この学校に入学してから一度も学校に来ていない。
……アイツっていうのは僕と同居してる男子の事。
底が知れなくて少し怖いけど、
優しいヤツだ。
………なんて言って一人で苦笑すると同時に、授業終了のチャイムが鳴った。
すると、いつものように僕は女の子に囲まれる。
気持ち悪い猫撫で声。
吐き気がする。
それでも僕は取り繕って笑顔で女の子達の相手をする。
はっきり言って授業の内容は今までの応用ばかりで難しくなかった。
それでも、人は同意を求めるから。
僕はとにかく取り繕って、
なんでも『そうだね~』って相づちをうつ。
そうすると、ボウリングの玉みたいに人はコロコロ僕の方に転がってくる。
ほら。また僕の方に転がってきた。
しくった。
僕の方に転がさせ過ぎた。
昨日も転がってきすぎた玉が
気持ち悪い声で誘ってきたばかりなのに、
またやってしまった。
こうなると、突き放す以外に方法はなくなってしまう。
どうしよう。どうやって断ろう。
回りに人がいるから、昨日みたくあなたが好きって嘘をついて突き放すのはできない。
どうすれば………
思考をフル回転させて考えていると、
目の前をあなたが通りすぎた。
………これだ!
あなたの肩をがっちり掴んでグイグイと女子の方に押し寄せる。
僕の手をはらって、あなたが険しい顔でこっちを睨んでくる。
やっぱりあなたの嫌がってる顔は面白い。
ずっと見ていても飽きない程に。
女子が僕の後ろに隠れてあなたの事を蔑んだ目で見る。
少し笑いながら女の子が言う。
あなたはあまり女子から好かれていない。
さすがにその言い方はどうなんだと思った。
けど、僕はいつも通り薄っぺらい笑みを浮かべてこう言う。
…………ごめん。あなた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!