───カチッ。
ボタンが押された瞬間、
施設内のスピーカーが一斉に起動した。
選手たちはその音を聞いて動きを止める。
トレーニングルーム、各部屋、廊下。
それぞれの場所で、同じ疑問が浮かんでいた。
短いノイズのあと、
静かで落ち着いた声が流れる。
事務的で、感情を抑えた口調に、
騒がしかった空気が、ゆっくりと静まっていく。
その瞬間──
トレーニングルームの隅で、
一人だけ、完全に動きを止めた選手がいた。
糸師凛だ。
耳鳴りがする。
聞き間違いだと切り捨てるには、
あまりにも、はっきりした声だった。
放送は、何事もなかったかのように続く。
少し間を置いてから、
今度は別の声が割り込んだ。
明るく、よく通る声。
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考え込んでる潔に馬狼が苛立たしげに言う。
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不満の声。
興味本位の反応。
最初から気にしていない者。
放送は、
それぞれの場所で、それぞれの受け取られ方をしていた。
そんな中で。
凛だけが、
その場から切り離されたように立ち尽くしていた。
一瞬、脳裏をよぎった考えを、
すぐに否定する。
そう思うのに。
胸の奥に残った違和感だけが、
どうしても、消えなかった。






















編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。