モニター室の空気が、わずかに静まる。
壁一面の画面には、各棟の廊下やトレーニングルームが映し出されていた。
絵心さんはそう言って、顎で放送設備を示した。
帝襟が操作卓に向かい、
慣れた手つきでカメラの準備を始める。
……その瞬間だった。
少し驚いたように私を見る虎杖くんと帝襟さん。
そんな2人の隣で、絵心さんが片眉を上げた。
私は一瞬だけ言葉を選ぶ。
1ヶ月前。
空港で冴くんと偶然再会してしまった。
そのとき、カップルだと勘違いされ、ネットニュースに載るほどまで顔が世間に知られてしまった。
それ以来、
“顔を出す”ことそのものが、余計な波紋を呼ぶ。
私の言葉に、
さっきから困惑していたように見えた虎杖くんが、
はっとしたように目を見開く。
何かに、ようやく合点がいった顔。
私はその反応を気に留めることなく、続ける
事実だけを並べる。
感情も、余計な説明も添えずに
帝襟さんは、私の言葉に少し驚いたように振り返った。
それと同時に、後ろで椅子にもたれていた絵心さんが、ふっと鼻で笑った。
一瞬で察したような口ぶりだった。
私は否定も肯定もしない。
絵心さんは興味なさそうに肩をすくめる。
2人の会話を聞いて、帝襟は小さく息を整えた。
表情は変えない。
けれど頭の中では、同じ名字と、顔出しを避ける理由と、数カ月前に世間を騒がせた話題が、忙しなく結びついていく。
一瞬だけ浮かびかけた好奇心を、
首を振ってきっぱりと押し戻す。
帝襟は顔をあげるとあなたの方に向き直る。















編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。