施設内に入り、帝襟さんの背中を追って歩いていると、やがて一つの扉の前で足が止まった。
短くそう告げられ、彼女の指先が示した先には「モニター室」と書かれたプレートがある。
扉を開けた瞬間、低く唸るような機械音が耳に届いた。
室内の壁一面には、無数のモニター。
それぞれが別々の場所を映し出し、施設の廊下や部屋、トレーニングルームなどを静かに監視している。
光の粒が集まったその光景は、どこか落ち着かず、長く見ていると目が疲れそうだった。
帝襟さんが声をかけると、部屋の隅でモニターを眺めながらカップ焼きそばを食べていた男性が、ゆっくりとこちらを振り返った。
黒縁の眼鏡。無造作な雰囲気。
帝襟さんより少し年上に見えるその人は、片手を軽く挙げる。
私が名前を言ったのと同時に、後ろから勢いよく声が飛んできた。
虎杖くんらしい、場の空気を一気に明るくする挨拶。
それを聞いた絵心さんは、一瞬だけ目を見開き、すぐに興味深そうに口元を緩めた。
テーブルにカップ焼きそばを置き、こちらに向き直る。
その仕草ひとつで、部屋の空気が少し引き締まった気がした。
事前に資料で把握していた内容ではある。
けれど、実際に現場にいる人の口から聞く意味は大きい。
虎杖くんがすぐに反応すると、絵心さんは言葉を区切り、モニターの一つを指差した。
映し出されていたのは、薄暗い廊下。
一見すると、何の変哲もない光景だ。
──けれど。
目を凝らすと、廊下の奥で、何かが揺れている。
空気が歪むような、輪郭の曖昧な違和感。
短く返事をしながら、胸の奥がわずかにざわつく。
ちらっと虎杖くんの方を見ると、彼も同じようにモニターを睨んでいた。
虎杖くんは迷いなく頷き、軽い足取りで扉の方へ向かう。
私もそれに続こうとした、その時──
声をかけられて、振り返ると、絵心さんがモニターから目を離し、こちらを見ていた。
絵心さんの言葉に帝襟さんが小さく頷き、補足するように口を開く。
絵心さんは、軽く肩をすくめてから、モニター群を指差した。















編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。