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第1話

忘れられた記憶
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2025/11/01 02:59 更新
ピ、ピ、ピ、ピ、ピという単調な機械音がしたと思うと、次は消毒液の独特な匂いが鼻を刺激した。
ぼんやりと目を開けるとそこには白い天井があった。
真っ白な部屋同化するように白いヒナゲシが置かれていた。
頭がぼんやりとしていて、静かに息をする。
腕には点滴が付いていて、横には台が置いてある。
体を動かそうとしても、なぜか動かない。
声を出そうとしても、出てこない。
ガラガラ、と言う音を立てて扉が開いた。
.
えっ…起きてる…?
.
おんりー!起きました!
部屋に、誰かが入ってきた。
顔は見えなくて、声だけがする。
比較的高めで、明るい声。
.
おんりー…今までのこと…覚えてる?
少し震えた声で僕の顔を覗き込んだ。
.
…誰…ですか?
掠れた声が弱々しく出た。
.
……まぁ…無理もないか…
.
おんりーって…僕の名前ですか?
.
…そうよ、君はおんりーって名前
おんりー
…おんりーって言うんですね
おらふくん
僕はおらふって言うんよ
おんりー
…おらふさん
ポツリと呟くと笑って『そうだよ』と言った。
おらふくん
色々大変やったから忘れるのもわかるわ
少し悲しそうに笑った。
おんりー
…何があったんですか?
おらふくん
まぁ…ね
そのあとは静かだった。
また、扉が開いて男の人が入って来た。
その人はドズルと言った。
ドズル
おんりー大丈夫?
おんりー
…えっと…
おらふくん
ドズルさん…おんりー覚えてないって
ドズル
そっか
少しだけ悲しそうな顔をしてドズルさんと言う人は『ゆっくり思い出せたらいいね』と笑った。
おんりー
えっと…僕たちってどんな関係ですか?
おんりー
友達?会社の同僚?
おらふくん
ん〜会社の同僚かな?
おらふくん
そんでドズさんが1番偉い
ドズル
まぁ…ね
少しだけ間が空いた。静かで少しだけ寒い風が病室の中に吹き込んできた。
おんりー
…どんな仕事してるんですか?
おらふくん
えっとぉ…
ドズル
まぁここでは言えないから回復したらね
また、静かな沈黙が流れる。
おんりー
…えっ、言えないってどんな職ですか
ドズル
まぁ、そのまんまの意味だよ
危ないことしてたの?えっ?なに、怖いんだけど?
ドズル
まぁ、全部回復してからだね
おんりー
…はい、がんばりますね
この時は

『思い出さない方が良かった』


と思うなんて知る余地もなかった。


知らぬが仏という言葉の意味がよくわかる気がする。


それでも、思い出さないといけないから。

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