ピ、ピ、ピ、ピ、ピという単調な機械音がしたと思うと、次は消毒液の独特な匂いが鼻を刺激した。
ぼんやりと目を開けるとそこには白い天井があった。
真っ白な部屋同化するように白いヒナゲシが置かれていた。
頭がぼんやりとしていて、静かに息をする。
腕には点滴が付いていて、横には台が置いてある。
体を動かそうとしても、なぜか動かない。
声を出そうとしても、出てこない。
ガラガラ、と言う音を立てて扉が開いた。
部屋に、誰かが入ってきた。
顔は見えなくて、声だけがする。
比較的高めで、明るい声。
少し震えた声で僕の顔を覗き込んだ。
掠れた声が弱々しく出た。
ポツリと呟くと笑って『そうだよ』と言った。
少し悲しそうに笑った。
そのあとは静かだった。
また、扉が開いて男の人が入って来た。
その人はドズルと言った。
少しだけ悲しそうな顔をしてドズルさんと言う人は『ゆっくり思い出せたらいいね』と笑った。
少しだけ間が空いた。静かで少しだけ寒い風が病室の中に吹き込んできた。
また、静かな沈黙が流れる。
危ないことしてたの?えっ?なに、怖いんだけど?
この時は
『思い出さない方が良かった』
と思うなんて知る余地もなかった。
知らぬが仏という言葉の意味がよくわかる気がする。
それでも、思い出さないといけないから。











編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。