鳳仙との酒席を終え 、 あてがわれた豪奢な自室に戻った夜 。
月明かりだけが差し込む静寂の中背後に「殺意」とは異なる 、
肌を撫でるような不気味な気配を感じて 、 咄嗟に枕元に隠したナイフを手に取った 。
振り向きざまに放った一撃は 、 暗闇の中で軽々と受け止められた
そこにいたのは 、 窓枠に腰掛け楽しそうに足をぶらつかせている神威だった 。
彼は私の手首を掴んだまま引き寄せ 、 鼻先が触れそうな距離で瞳を覗き込まれる 。
神威の手が、私の頬をゆっくりと、愛惜を込めるように撫でる 。
だけど 、 その指先にはいつでも首を折れるだけの力がこもっていた 。
それは恋情よりも執着に近い 、 純粋な「独占欲」だった 。
神威の青い瞳が 、 嫉妬にも似た暗い熱を帯びて細めらていた 。
神威が私の唇を指でなぞったその時 、
廊下から「……おい、異邦人。そこにいるのは分かっているぞ」と 、
案じて様子を見に来た月詠の声が響いた 。
神威の瞳から 、 それまでの遊びのような色は消えていた 、
月詠の声が近づく中彼は私の腰を強引に引き寄せ 、 肩に担ぎ上げる 。
私の叫びは 、 神威の大きな掌に遮られた 。
神威は迷うことなく 、 開いたままの窓から夜の闇へと身を投げた 。
背後で月詠が部屋に踏み込み 、 「待てッ!」と叫ぶ声が遠ざかっていく 。
階下で待機していた阿伏兎が 、 空から降ってきた二人を見て目玉を飛び出させた 。
でも 、 神威は着地の衝撃など微塵も感じさせない軽やかさで吉原の屋根を跳ねていく
視界は激しく揺れ 、 夜風が頬を叩く
鳳仙の寵愛 、 真選組としての任務それらすべてを置き去りにして 、
吉原の空へと連れ去られていった 。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。