家に帰ったあと。
国語の小テスト対策の勉強の息抜きに、カンジ君とおしゃべりをしていたら、ふと疑問が口に出ていた。
私が今日あったことを話すと、カンジ君は目を丸くする。
科目男子たちは、「神様のとりはからい」とやらによって、違和感なくこの世界の生活になじめるようになってるらしくて。
まわりの人たちの記憶はちょっとだけコントロールされてるから、とつぜん私たちの家に住みだした男子たちに疑問を持たないようになってるはずなの。
それなのに、どうして優ちゃんだけが「おかしい」って思うんだろう?
なにか、「神様のとりはからい」が効かない理由でもあるのかな……?
カンジ君の言葉にしっかりと頷き、気合いを入れる。
...それにしても、まだまだわからないことだらけだなぁ...。カンジ君達の存在、周囲との関係、寿命をのぼすための条件……。
これから、少しづつでも分かっていくと良いんだけど……。
そうだった!今は国語の勉強中だったよー!
私は慌ててノートに向き直る。
えーっと…?この時の登場人物の気持ちを答えなさい..……?
私はヒーヒー言いながら、問題文のキャラクターと向き合った。
–––翌朝。
いつものようにみんなで朝ご飯を食べていたら。
ピンポーン
インターホンの音が鳴った。
席を立つおばあちゃん。
不思議に思いつつ玄関のほうを見ていると、すぐにおばあちゃんがもどってきた。
三人の声がかさなる。
なんでこの組み合わせ?
私たちは首をひねりながら、三人で玄関にむかう。
玄関に立っているのは、優ちゃんだった。
その姿を見て、私はおもわず言葉をうしなった。
いつも花丸満点に美少女な優ちゃんが、ボサボサ頭で、目の下にクマをつくってる!?
いったい、なにがあったの……?

イメージ画↑
優ちゃんは目をギラリと光らせて、ばばんっと、ぶあつい紙の束をかかげた。
えっ……。
ええええええぇっ!?
クマがくっきりうかんだ目を見ひらいて、フフフと笑う優ちゃん。
予想外の展開に、私とお姉ちゃんはぼうぜんと立ちつくす。
さすがのケイも、口をぽかんとひらいたまま、だまりこんでいる。
まっすぐな瞳で私たちを見る優ちゃん。
手渡された紙の束は、ずっしり紙の重さ以上の重みがある気がした。
私が運動会を休もうとしたのは、カンジ君のために国語の勉強をしなきゃいけないっていう理由だ。
「ビリになるのがいや」というのは、休む理由をつくるための嘘であって...。
なのに優ちゃんは、何一つ疑わずにメニューを作ってくれたんだ。
言葉につまるお姉ちゃん。
お姉ちゃんだってかくしごととかをしているから、後ろめたいよね……。
黙り込む私たちの手を、優ちゃんはぎゅっとにぎった。
優ちゃんの真剣な表情が、胸につきささる。
でも、ただ真剣なだけじゃなくて……とても必死で、不安そう。
その表情を見た途端、考えるより先に口が動いていた。
私たちの返事に、優ちゃんはうれしそうに笑って。
こんどは、ケイくんのほうを見る。
優ちゃんのいきおいにおされて、ケイくんは「いや、その……」と、うまくこたえられないまま。
そう言って、優ちゃんはグッと両手でガッツポーズをつくると。
ルンルン、軽い足取りで帰っていった。
私たちは、しばらくその場からうごけないまま、玄関の扉を見つめていた。
ケイ君はこまりはてたように顔をしかめながら、優ちゃんが置いていった紙の束をぱらぱらとめくる。
私がお姉ちゃんの言葉に頷くと、ケイ君はちいさくため息をついた。
不安だけど、やるしかない。
勉強だって、ずっとやってこなかったのに、点数を一気にアップできた。
運動との両立って考えてこなかったけど、カンジ君のためだと思ったら、いくらでも頑張れるはずだ。
私はそう決意をかためて、みんなのいる居間へともどった。

























編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。