「死のうと思って。」
驚きとも、単に漏れ出たようにも感じる、一単語が口から溢れた
意味が分からない訳では無い。
言葉の意味は理解出来る。ただ
言葉の意図が、解れない。
にこにこと幸せそうに微笑む彼女は、続けて話す
「だって...一緒に死ぬのは、最期まで共に出来るって事でしょう?それ以上に幸せな事って...」
「ありますか?」
言葉に詰まる。先程話していた時
家族の愛が欲しいと言われ話せなかった時とは圧倒的に何かが違う
...何かが、違う...
「...それが、言いたかっただけなんです。貴重なお時間を取って頂いてありがとうございました」
お義父さん、そう呼ぶ顔は
始めに会った時と何ら変わりない。
変わらないのに、その笑顔が...不気味で仕方が無かった
「...。」
席を立ち、あの笑顔を浮かべたまま彼女は踵を返し
離れて行く。...あいつと死ぬ為に、弾む様な足取りで帰ろうとしている
それは、駄目だ。
そう直感した時には、既に立ち上がっていた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。