第23話

明晰夢
180
2026/03/21 23:00 更新



彼女は夢を見ていた
自分でも夢だと分かっていた
こんな都合が良いモノは夢でしかないと

けれど起きようとしなかった
夢くらい都合が良くてはな、と思った


目の前にはデルキラ、サリバン、ポロが立っていた
時系列的には丁度収穫祭の真っ最中だった

悪魔学校バビルスの収穫祭は昔、もっと大規模だった

魔界のほぼ全体を使い、争いを起こした
他生徒が白旗を上げれば、上げさせた者の勝利となる
そして全生徒が白旗を上げれば
上げさせた者が若王となり、1つルールを追加できる
特例があるがほぼ何でも叶えられるそれは
悪魔の欲をそそった

逃げても善し、隠れても善しの
66日間が始まろうとしていた


アムドゥスキアス・ポロ
デルちゃぁん!
やっぱりその格好にしといて良かったわ
ものすっごく似合ってる!!



デルキラは「 ありがとうな 」と笑ってあしらった


サリバン
若王になるおつもりですか?



デルキラは「 もちろん! 」と笑顔で返した

彼女はそれをただ見ていた
眉を細め、口角は上がっていた


あなた
( …出来る事ならずっとこのまま )



そんな事を考えていたら
彼女の後ろから重みがかかった

暖かく、程よくガタイの良い
それに抱きしめられた
感覚さえ本物の様で驚いた


デルキラ
あなたは俺が守るからな
デルキラ
綺麗な身体に傷1つも付けさせねぇから
だから、安心しろ



耳元で聞こえたソレに彼女は目から雫が流れた


サリバン
あなた様!大丈夫ですか?
アムドゥスキアス・ポロ
アンタが泣くなんてらしくないわね
何かあったの?



優しかった
本当に、心が温まるほどに


あなた
いや…目にゴミが入ってな



1つ、瞬きをすると
そこは茶色の地面だった
土の温もりが消え
少しひんやりと冷たかった


夢から覚めてしまったのだと
彼女は少しだけ悔やんだ

ソイを起こすため、寄ってみると
彼はトランペットを抱えていた
彼は良い夢でも見ているのか
少し微笑んでいた

その様子に、悪夢を見た彼女は誂いたくなった
トランペットを取ってみると彼は反射的に目覚めた


あなた
…命より大切なモノだとは、
プルソン・ソイ
あなたさん…か、良かった
他のヒトが盗もうとしたんじゃなくて



眠いと云う様に彼は目を擦った


あなた
6時になる前に言っておく
あなた
昨夜、オロバス・ココとオチョが
協力をしたいと申し出てな
それを許可しても良いか?
プルソン・ソイ
い、良いけど…
それじゃあ僕は1人になるね
あなた
それは心配要らない
問題児アブノーマルクラスの者とは伝えないからな



その言葉にほっと胸をなで下ろしたソイ
彼女はその様子に少し安心したが
また口を開いた


あなた
だが、私に何かあったら
ナベリウス先生にでも伝えてくれ
彼らは何か裏がある
プルソン・ソイ
え、いや 流石にそれは…
あなた
生徒狩りの仲間かもしれないからな
すぐにでも、逃げ出せる
準備くらいしておいた方が良い



彼女の予感は的中する
まるで百発百中の矢が刺さっているかの様に
抜こうとしても、強く刺さって取れないのだ


6時の放送後
彼らと接触して挨拶を交わして
奥の方へと進んだ


オチョ
ここは生徒が少ないですねぇ
あなた
だからこそ、この魔獣の数なのだろう



魔獣によって周りに囲まれた4人
オロバスやオチョが手を出す間もなく
彼女の魔術で倒した


オロバス・ココ
…矢張り流石だな、問題児アブノーマルクラスは
オロバス・ココ
お前は教師陣と戦ったのだろう?
あなた
…嗚呼、そうだがそれが何か?
オロバス・ココ
優勝する為にはお前が邪魔だ



オロバス・ココはソイの方向へと向き
手をかざそうとした
彼が家系能力を使うとすぐに判断し
彼女がソイを守る様に出た


オロバス・ココ
矢張りそう来たか



オロバスは口角を上げた

彼女が初めから私を狙っていたのだと
自覚するには時間がかからなかった
だが、身体が動かなかった
足元のツタが邪魔をした

そしてオロバスは家系能力を使った
彼女がよろけた瞬間
地面から、黒い箱型のモノが現れ
彼女を包んだ

そしてそれは天へと上がり
空中で止まった


オロバス・ココ
オチョ、良くやった
だがあの箱の事は聞いてないが…
オチョ
オロバス様も凄いですよ!
オチョ
ふふ、あの箱は悪鬼金庫デモンズバンクの上位互換
入ると魔力が徐々に吸われていきます
そして8ケト位級ランク以上の者が上げないと
一生開かないモノです
オロバス・ココ
成る程…
オロバス・ココ
でも良いのか?
そんな事をして、



眉をひそめ、少し心配をするオロバスだったが
オチョの言葉で納得をした
その言葉はどんな魔術よりも
邪悪で、離してくれないモノだった


オチョ
良いのですよ!
収穫祭が終われば
何事も無く開ければ良いのですから



それを聞いて、今だと確信したプルソン・ソイ
自分は収穫祭で優勝とか、位級ランク昇格とかは
どうでも良かった

だからこそ自身の身を投げ捨てる覚悟で
収穫祭本部へと向かった
オロバスはオチョ、生徒に気づかれないように
足早に、走った
こんなに走るのは久しぶりだと
少しプルソンの口角が上がった

その頃、黒き箱では
彼女は頭を抱えてしゃがみ込んでいた


デルキラ
お前は誰だ



そんな声が無数に聞こえる
誰かの声、言葉なら良かったのだ
知らない者に云われても気にしない悪魔が
ジュウシマツ・あなたの性格だから

けれどその声や雰囲気、言い方は
デルキラそのものだった

彼女はオロバス家の幻燈トラウマだと分かっている
分かってはいるが、震えは止まらなかった
あの焼印を押した彼から
その様な言葉を聞いただけで
顔色は真っ青に、あの赫い唇は青く
数刻まで宿していた星の欠片があった瞳さえも
闇のなかに放り込まれてしまった様だった

刻一刻と時間だけが過ぎていく





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