目を開けた。目の前に広がる景色を見て、元の場所に戻ってこれたことを知る。
「ちょっと! いきなり穴に飛び込んで……って、その記憶はないんでしたっけ……」
「いや、覚えてますよ」
慌てた様子の女の人にそう返すと、二人は驚いていた。俺は、穴に落ちた後に体験した、あの不思議な出来事を詳細に話した。土産は配れ、って言われていたから問題ないと思った。
「へぇー、そんなことが……」
青年のその反応を聞きながら、何気なくポケットに手を入れると、スマートフォンともう一つ、何か入っているのに気がついた。ポケットからそれを取り出すと、まさしく、くじ引きの屋台で狐面からもらった、あのカードだった。
「そう、これ。これをもらったんだ!」
二人がカードに注目する。すぐに、二人は自分の手荷物を調べ始めた。すると、二人の持ち物からも、そのカードが出てきた。同じ、黒い丸印が書かれたカードだったけど、女の人のほうは木の板のような素材のもので、青年のほうは水に濡れたような跡がついた紙だった。
それぞれがもらったものを見せ合っていると、いつの間にか穴は消えていた。何事もなかったように、周りとおんなじ地面が、そこにあった。でも、俺の記憶と、それぞれがもらったカードは、しっかりと残っていた。不思議なことだなぁ、って口々に言った。
その後は、各々用事があるということですぐに解散した。記憶が残っているのは俺だけだったし、ここでずっとだらだら話をしてもしょうがなかったし。
自分としては、穴の謎は分かったし、用済みだったからね。
ちなみに、その一週間後くらいに、また同じところに行ってみたんだ。やっぱり、穴なんてなかった。
いやー、不思議だね。
これで、話はおしまい。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。