それから一ヶ月ほど経った。
ウェストン校に通ううちに、体力や筋力がつき、杖を突いて1人で歩けるようになった。
ある日、ラゼはいつも通りウェストン校に行く。
だけど、ハンナがいない。どうしたのだろうか…?
カインは、いつも通り、ピーフォーを眺めながらベンチに座っていた。
そう呟き、空を見上げた。
滅多に使わないお嬢様口調で登場。
まぁ、気分だろう、と気にしないカイン。
ラゼの車椅子を押していた手を離し、グリゴリーの方へ走っていくリゼ。
あれ?ハンナは?いうような顔をするカイン。
グリゴリーの寮弟とリゼは面識があるらしく、手を振ってリゼを歓迎している。
その様子をいかがわしげに見ていたカインは、ベンチを立って、車椅子を押す。
カインが手を差し出し、その手にラゼは掴まり、杖をついて立つ。
2人が腰を下ろすと、カインが口を開いた。
ラゼが、黙る。なんだか、空気が重くなった。
カインが目を見開き、ハッと口を抑える。
ラゼが俯く。
カインは、どんな言葉をかけるべきか、複雑な顔をしている。
カインが口を開いた。
そう、必死になるカイン。
その必死さを感じとったのか、ラゼがまた笑う。
ラゼがふわりと笑う。
カインがニッと笑う。
ラゼが車椅子に乗る。カインが車椅子を押し、橋を渡った。
今日も、ラゼ・ヴァイオレットは健在だ。
それがいつまでも続きますよう…。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。