第12話

十一話 墜落、そして完治
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2026/01/20 14:27 更新


───寒い



中也から逃げたい一心で、足元の空間を爆破し続け、どこまでも上昇してしまった報いだろうか



 視界の端が白く霞み、肺が必死に酸素を求めて喘ぐ。



けれど、取り込める空気は薄く、冷たい




(……ああ、私、死ぬんだ。…これで、いいんだよね)




 意識の糸がぷつりと切れる気絶



 推進力を失った体は、重力に引かれるまま、



ヨコハマの街へと真っ逆さまに墜落していった



































与謝野晶子
───おや、やっと目が覚めたかい



鼻を突く、強い消毒液の匂い




重い瞼を押し上げると、真っ白な天井と、




シーリングファンが回っているのが見えた
 



















───驚いたのは、体の軽さだった





墜落の衝撃で粉砕されたはずの骨も、





内臓も、まるで最初から何もなかったかのように





「完璧に」繋ぎ合わされている


























あなた
…治って、る…

与謝野晶子
ああ。内臓から骨の髄までね


視線を動かすと、そこには黒いボブカットに蝶の髪飾りをつけた女性がいた



 与謝野晶子



ポートマフィアの敵対組織、武装探偵社の専属医



その顔を私は資料で知っている



けれど、彼女は私をただの



「死に損ないの少女」として見ているようだった。




与謝野晶子
まずは自己紹介といこうかねェ
妾は与謝野晶子、ここの医者だ

あなた
……助けて、くれたんですか


与謝野晶子
道端で今にも事切れる寸前の君を、うちの社員が拾ってきてねェ
与謝野晶子
ボロボロだった、なぁ、一体、何があったんだい?



まるで爆発したような…と続ける彼女から目を逸らす




椅子にかけられたあなたの服は、




あの空中散歩の余波で無惨に焦げていた




中也を焼いてしまった記憶が脳裏に蘇り、指先が微かに震える















いつもなら、この震えを中也が止めてくれた




彼への「信頼」という楔があるからこそ、





私の異能は彼の手の中でだけは凪いでいられたのだ








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