そのとき誰かが私を後ろに引っ張った。
私がバランスを崩してその誰かの上に落ちた。
私は思わず走り出した。今は会いたくない!
足の速いモトキに追いつかれ腕を掴まれた。
腕を離してくれない。振りほどこうとするとさらに強く掴まれた。
フェンスから遠い壁のあるところに連れてこられた。腕を離してもフェンスにのぼられないように。
モトキは腕を離してくれた。ホッとしたのも束の間、壁ドンをしてきた!
怒ってるのが分かって怖くて顔をあげれない。下を向いていると…
そう言って立ち去ろうとしたとき両手壁ドンで私の動きを封じ込める。
モトキの腕の下をくぐり屋上を出た。
好きじゃないなんて嘘。今でもモトキが好き。でもこうでもしないと自分を保てない。こんな状況では授業も受けれない。たぶんモトキは教室に戻った頃。教室には戻らずもう一度屋上に行った。
そっと屋上を覗いてみる。誰もいない。私は壁に寄りかかり腰をおろした。
これでいいんだ。私とモトキはあの日にもう終わってたんだ。
今でも私の部屋にはプレゼントしようと思っていたスニーカーがおいてある。
私がいつまでも持っていてもしょうがないからスニーカーと共にモトキへの気持ちも捨てよう。
空を見上げ、一人呟いてみる。
あなた。二ヶ月ぶりに呼ばれた名前。さっきまではお前ってしか呼ばれてなかった。
名前を呼ばれることがこんなにも嬉しかったっけ?
嬉しすぎて涙が出てきた。見られたくなくてモトキに背を向けた。
するとモトキが後ろから抱きしめてきた。
モトキは私をクルっと回して今度は正面から抱きついてきた。私の頭の中はちょっとパニック。
心臓が凄くドキドキしてモトキに伝わりそう。
~しばらくして~
そういうと座り、『隣おいで。』と優しい声で言ってきた。私は言われた通り隣に座った。
どうしようか悩んでいると…モトキが私にピッタリくっついてるのが分かった。
なにやら悩んでいる私を見て楽しそうにしてる。人の反応を見て楽しんでるだけか…
『やっぱりやり直しはない。』と言おうとしたとき、モトキにキスされた!
私は手で口を押さえて…
ムダな抵抗だった。モトキの力には勝てずあっさり手を掴まれてキス!
私には『やり直す』しか選択がないのか…
モトキはまた私が『やり直さない』と言うのを待つかのように顔を近づけて、もう少しで唇が触れるか触れないかのところにいる。
モトキは嬉しそうにキスをしてきた!
どっちを選択してもキスはされたのね。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。