あなたside
バタン
ドアを閉め、車を出る
マンションのガレージ、充満するガソリンの匂いと
隠すことを知らない、素人のドロドロした”殺意”
とりあえず、皆さんを脅かさないように伝えないと
スマホを取り出し、メモのアプリを開く
皆さん、後ろに僕らをつけている人がいます
ストーカーの類かと思われます
殺気が隠せていないのでプロの暗殺者とかではないと思います
狙いは僕じゃないかと踏んでいます
僕が必ず捕まえます
安心して、任せて欲しい
あとは適当に話を合わせて
最後に小声でそう言う
すると怪訝な顔をしながらも差し出したスマホを覗き込む皆さん
僕らが歩き出してしばらく、ダッと走り出した音がした
降りてきたエレベーターに乗り込む
きっと今頃、ストーカーは非常階段を登っているだろう
少し震えながらリノさんは言った
リノさんが勇気を持って口にした不安
だったら僕は大きな自信を持ってそれに応えよう
僕の言葉に少しだけ安心した様子の皆さん
チンッ...
エレベーターが止まり扉が開いた
嫌な空気が体にまとわりついて気持ち悪い
僕らが部屋に向かって歩き出してしばらく...
僕らは部屋の前に着いた
まぁよくよく考えてみれば不思議なことでは無い
なんせ彼らの部屋は8階で、かつエレベーターに割と近い
いくらストーカーが部屋の番号を知っていたって
エレベーターから離れた非常階段で8階まで上り、エレベ
ーターに近い彼らの部屋まで来るのは安易ではないのだ
ろう
おずおずと、聞いてくるヨンボクさん
どこか心配そうなスンミンさん
悲しそうな顔で黙って俯いてしまうおふたり
悲しい顔をさせたい訳じゃないんだけどな
ストーカーが上がってくるであろう方向に向き直る
しばらくして、コツコツ...と足音が近づいてくる
そして、ようやく曲がり角からストーカーは顔を出した
痩せ細った身体、ぜぇぜぇと息を切らしていることからして、体力もさほど残っていない
万一、刃物を持っていたとしても、フラフラの足では僕の身体にはかすり傷さえ付けれないだろう
随分前から皆さんを付け回していたみたいだな
傍で見守ってきたと言う割に何も分かっていない男に
ほんの少しだけ、腹が立った
胸元から包丁を取り出してこちらに向かってくる
へっぴり腰で両手で包丁を包むように持っている
両手を押さえて制圧する
散々叫び散らかしていた割には実に呆気なかった
その後、警察に引渡し少しの事情聴取を終えて、
ガチャリ、家に入る
トンッ、フィリックスさんにぎゅっと抱きしめられる
呆気にとられる僕を見てバンチャンさんは微笑みながらそう言った
ズビッと鼻を鳴らすフィリックスさんの背中をさすっていると
視界がに影が落ちて暗くなる
誰かと思えば
バンチャンさんはまた微笑んだ
夕焼けみたいに優しい笑顔だった
フィリックスさんは
天使みたいな顔で笑った
つられてこちらも笑ってしまうような
そんなフィリックスさんの笑顔が好きだ
















編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。