第6話

「キラキラの日」
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2026/02/11 11:00 更新







起きた瞬間からバタバタだった。










今年初めての被写体の仕事。









コムドット全員での撮影。











スタジオ入りの時間も早くて、
車の中ではみんな半分寝てる。










俺は窓にもたれて、
ぼーっと外を見ながら思った。











「今日、長そうだな。」









そんな軽い気持ち。








この時は、
まだ知らなかった。











今日のやまとが、
とんでもない仕上がりで来るなんて。















スタジオに入るとすでにメイクさんたちが
準備してくれていて、白いライトと大きな背景布。








いつも見る光景。







 ̄ ̄ ̄






「…おはようございまーす」









挨拶してそれぞれメイクルームへ。











俺は先に座ってベースメイクをしてもらう。










鏡越しに見る自分は、まだいつも通り。










「今日はナチュラルめでいきますね。」










いつものメイクさんの声に、
「お願いします」って返す。










この時点では、
本当に普通の日だった。














それからしばらくしてから事件は起こった。










隣の席に、やまとが座った。










……瞬間。










「…っ………」









声が、出なかった。











まず、髪。






いつもよりも撮影用で立体感があって、
きっと前髪も、計算された流れ。










服。







シンプルだけど清潔感があって、サイズ感も完璧で、
肩のラインが綺麗に出てる。











さらに。










伊達メガネ。








普段は滅多にかけないやつ。










細フレームで、レンズにライトが反射していて、
いつもと雰囲気がまるで違う。










もう。












なにこれ。

















俺は無意識にやまとから視線を逸らした。











(こんなの無理でしょ…反則だよ……)










心臓が、一瞬で早くなる。










「……え?」









自分でもびっくり。










なにこの反応。
















やまとは、
鏡を見ながらスタッフさんと話してる。











「今日、いつもと違うオーラ出てていい感じだね〜」










「いやほんとうに、毎回撮影の度にかっこよくしていただいて感謝しきれないです笑」










声も、なんだかいつもより落ち着いて聞こえる。









その横顔が、本当に本当に綺麗すぎて。










俺は、
完全に固まってた。

















「ゆうた?」









隣から声。









「……なに」










「さっきから、全然こっち見ないけど」










「…!?…見てるよ」










「…見てないよ。目合わない。」








「……なんで?」









やまとが、
くるっとこっちを向く。










その瞬間。









伊達メガネ越しの目と、
がっつり合ってしまった。















「…!?……」











やばい。やばいって。





なんか眩しい。





キラキラしてる。









直視できない。










俺は、反射的にまた目を逸らした。









「え、なにその反応」








やまとが笑う。









「ひどくなーい?」









「………違う」










「じゃあなに?どうした?」










「………今日は、やまとが光って見える。見れない。」










「…ん?……は?」









本人は意味が分かっていないらしく、笑われた。










「今日はメイクも髪も服も、もちろんメガネも、」










小声で言う。









「全部、完璧に仕上がってて、」









「……いつもより輝いてる…。」









言い切った瞬間、
自分で恥ずかしくなる。










やまとは一瞬きょとんとしてから、
ふっと笑った。









「なにそれ笑」










「ほんと、」


「目、合わせられないくらい。」















やまとは、
少し照れたみたいに首を触った。









「いつもと雰囲気ガラッと変えてくれたのは、
メイクさんたちの力だよ。」








「……でも、やまとはそれだけじゃないじゃん」









「……?」









「…っ……元がいいから。」









言ってから、自分で後悔した。










顔、熱い。















撮影が始まってからも、
やまとはずっと“完成形”だった。










立ち位置に入るだけで、
空気が変わる。











カメラマンさんも、


「やまとくん、いいですね〜」って何度も言う。










ポーズも、表情も、
全部型に完璧にハマっている。
















俺はやまとの横で一生懸命表情をつくっているのに、
正直、集中力が削られる。









チラッと見える横顔。










ライトを浴びた輪郭。








メガネ越しの視線。









……心臓に悪い。
















「ゆうたくん、目線こっちに頂戴~」









カメラマンさんに言われて、はっとする。









「あ、すみません。」









集中しろ。








仕事だ。










分かってる。









分かってるのに。














休憩中。









控室で水飲みながら、やまとをちらっと見る。









やっぱり今日は完成されすぎてる。









俺は、小さく息を吐いた。










「……今日、かっこよすぎ…」









ぼそっと。










でもやまとが聞き逃さない。








「ん?」









「なにもない。」









「絶対今、俺の事褒めたろ?」









「……褒めた。かも。」









「聞かせてよ。」










「……無理」








やまとは俺の前に立って、
顔を近づける。










伊達メガネ越しの視線。










……近い。








「……ねえなんで〜言ってよゆうちゃん。」










「…むりだよ。心の準備ができてない」










「なにそれ笑」









笑いながらも、
やまとは離れない。










「ほらゆうた、」








「……」








「ちゃんと言って」
















俺は、少しだけ目を伏せてから言った。








「……俺の彼氏が今日は…異常に仕上がってて……」










「…直視できない、です。」










やまとは一瞬止まってから、
小さく笑った。











「可愛い。」










「……言うな。」

















気づけばもう撮影後半。









メンバーみんなで並ぶカット。









やまとはいつも通りセンター。










ライトに照らされて、
伊達メガネがきらっと光る。









俺は隣で立ちながら、










(……これ、ファンの子やまとみて倒れるやつだ)







って思ってた。















終わってスタジオを出る頃にはもう夕方。









外の空気が冷たい。










車に乗る前、やまとが俺の隣に来る。









「…今日どうだった?」









「仕事?」










「いや仕事もだけど、俺のビジュ。」











滅多にやまとのビジュアルを褒めることがないからか、
揶揄うように何度も何度も聞いてくる。

















「一日中、輝いてましたよ」









素直に言う。










やまとは、少し照れた顔で言った。










「珍しい。褒めすぎ。」









「事実だから。」










「伊達メガネも?」











「それが一番。心臓に悪い。やめて。」










「じゃあもう撮影終わったし、外そうかな」









「………だめ。」









「どっちだよ笑笑」













家に帰って。









やまとはメガネを外してラフな部屋着になる。










一気に、いつものやまと。










それを見て俺はやっと息を吐いた。








「……やっと、戻ったね」









「ん?なにが?」









「いつもの、、俺のやまとに」









やまとはくすっと笑って、
俺を抱き寄せる。















「今日さ?」









耳元で言われる。










「ずっとゆうたに見られてたの、気づいてたよ」









「……見てない、し」










「嘘だ」










「……ちょっとだけ」









「ん?……ちょっとかな?」











「……かなり…です………」









「でもさ、仕方ないじゃん。
……やまと今日かっこよすぎたんだもん……」










やまとは、
俺の額に軽くキスした。









「…ありがとうね、ゆうた。」









「………なにが、」









「ちゃんと、俺の事めちゃくちゃ好きでいてくれて」












俺はものすごく恥ずかしくなって、
その胸に顔を埋めた。















嫉妬じゃなくて。









不安でもなくて。









ただやまとが眩しすぎて、キラキラしすぎていて、
目も合わせられなかった日。










それだけなのに。









すごくすごく幸せで、
改めて世界一の彼氏だなと思った1日だった。








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