バスに乗り込むと、隣の席を誰よりも早く埋めたのはセイトだった。
「おもろい話はないで」
「おい、まだなんも言ってへんやん」
「顔に書いてあんねんもん」
セイトは前の方に視線を移す。
先には、スタッフの隣でにこにこ話してるあなた。
「なんや、お前もっとしんどい顔してるかと思ったのに」
「残念そうにすんなや」
「ま、詳しい話はまた2人の時に聞こかな〜」
ニヤニヤ笑うセイトに、ため息が出る。
バスが動き出し、朝日が差し込む。
窓の外の景色を眺めているうちに撮影場所へ到着した。
「みんな〜おはよう〜〜!!会いたかったで〜〜!!」
「はいはい、2日ぶり〜」
「ナオくん朝から元気すぎん?」
みんな大袈裟なナオヤに呆れつつも自然に輪ができる。
「あなたのあだ名…!!久しぶりやな!会いたかった〜!!
昨日ちょ〜可愛かったよ!写真見た!!」
『わ、あ、ありがとう』
あなたは両手をナオヤに掴まれて動揺して答える。
「おい、あなたさん引いてるで」
「ナオくんが昨日直で見とったら1番うるさかったやろな」
「あ、そういえば、はやと達、昨日ナオにお土産買ったんだ」
「え、ほんま?!」
「はいこれ」
渡すと、眉間にしわを寄せる。
「え、何これ」
「屋台の参加賞」
「ほら絶対この顔するって言うたやん」
俺が笑うと、ハヤトも満足げに笑っていた。
そんな中、ナオヤが突然思い出したように叫ぶ。
「あ!!そういえば、かいりゅう!!
あなたのあだ名と同じ部屋やったんやろ?!?」
(……めんどくさ)
「なんで知ってるん」
「朝のラインで2人一緒にいる感じやったから聞いたんよ!
そしたら “色々あって同じ部屋になったんです” って言われて…なおビックリ!!」
本当に騒がしい。
「なおもあなたのあだ名とお泊まり会したいのに〜!かいりゅうずるい〜!!」
「いや、そこなんや」
ランが低音で突っ込み、
ナオヤはぶーぶー文句を言っていた。
そんな騒がしい空気の中、スタッフさんの声が飛ぶ。
「集合してくださーい!
あなたさんはミーティングあるんで、こちらです!」
『はーい!じゃあみんな、また後でね!』
手を振るあなたに、みんなが一斉に返事をする。
彼女がスタッフの元へ向かう後ろ姿を見送りながら、胸の奥がふっとあたたかくなる。
ほどよい高揚と、少しだけ特別な気持ち。
「ほな、準備するか」
メンバーと軽口を交わしながら、撮影の空気へと気持ちを切り替えた。













編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。