ゆらゆらと体を揺さぶられる。どこか遠慮がちな振動で、私はふっと目を覚ました。
硬いベンチから慌てて体を起こす。
目の前には人が1人。その人は私が起きたことを確認すると、そっと隣に腰を下ろした。
あれ、てか私なんで寝てたんだっけ…?あ、そうだ。今日って確か希望ノ島学園の入学式だったんだ。ん?でもそれが寝てた理由にはならないし…。何より場所が合っていないんだよね。
そこまで考えて、目の前の人に思考を戻す。私を起こしてくれたこの人は一体何者なんだろう。
その疑問を汲み取ったかのように、彼女は話を始めた。

そう言って彼女は薄紫のツインテールを揺らし、柔らかく笑った。
超高校級のデザイナー…。確か某スレ板によると、服やアクセサリーのデザインを考えてる人だっけ。可愛らしさや繊細さが特徴の作風で、言い値がつくくらい有名だとか…。
というか、自己紹介してもらって黙ってるのも感じ悪いよね。まずいまずい。

私が首を縦に振ると、藍莉は納得したような安心したような表情を浮かべた。
私がそんなことを聞いたのは、目の前に広がっている景色がとても学校とは思えなかったからだ。
軽快な音楽と共に、カラフルなアトラクションが稼働音を鳴らしている。
そう、ここは紛うことなき遊園地なのだ。
いや、一応知ってはいるんだよ?
希望ノ島学園が教育の方針に合っているとかで「ホープアイランドパーク」っていう遊園地を併設していて、地域の活性化にも尽力してるってことくらい…。
ただ、それにしてもおかしい。着ぐるみは無くとも、普通キャストやゲストはいるだろう。人っ子一人見当たらないのは何かしらの異常ではないだろうか。
それに、私は入学式へ参加するために来たのだから、遊園地エリアではなく学校エリアを目指していたはずだ。一体なぜこんな所に...?
人っ子一人見当たらない中に響く明るいBGMがやけに心をざわつかせる。
何となく暗くなってきた気分を吹き飛ばすように、私は勢いよくベンチから立ち上がった。
突然大声をあげた私に少々面食らった様子の藍莉が私に尋ねる。
【シノミヤ アイリの絆のカケラを手に入れた!】
ぶらぶらと2人で当てもなく歩いていると、どこからか声が聞こえてきた。
少し気だるげな声と、はつらつとした明るい声が聞こえた。
そう言って私は声がした方へ駆け寄っていく。
目の前の2人は見たところ私達と同じくらいの年に見える。同じく新入生ということで間違いはないだろう。
私達が自己紹介をすると、2人もこちらの番だとでも言うように口を開いた。
超高校級の無神論者なんて新入生に居たっけ…?と思う前に、隣の彼女がツッコミを入れた。
そう言うと晴亡は私達に向き直った。

無神論者じゃなくシスター…?随分とテイストが違う。というか真反対だろう。
そういえば、超高校級のシスターに関する情報はネット上にほとんど上がっていなかったっけ。まあわざわざ才能を隠そうとしたくらいだし、そうでなくとも人間秘密の1つや2つくらいあるだろう。気にしない気にしない。

超高校級の開拓者...。ああそうだ、「現代の二宮金次郎」だ。彼女のアドバイスを受けて改善を重ねれば、次々と移住者が集まり、財政問題まで一挙に解決してしまうとか...。
特に収穫は無し…と。まあ私と似た境遇の人が他にいることを知れただけで収穫ではあるか。
あかりの目がキランと光ったように見えた。と思うと、唐突なマシンガントークが始まる。
まだまだ話し足りなそうなあかりは少し物足りないといつた顔をしているけれど、晴亡の言う通りそろそろ他の場所に行ってもいいかもしれない。
きっとこのままここに居ても何も変わらないし、分からないから。
晴亡とあかりの後ろ姿に手を振って、私達もまた歩き出した。
【ハカミヤ ハナの絆のカケラを手に入れた!】
【トウカ アカリの絆のカケラを手に入れた!】





























編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!