ほんの少し、触れただけで__
天馬司side
オレはその時、先生に頼まれた荷物を運ぶ為に階段を下りていた。
荷物はそれなりに大きさがあり、持つと足元が完全に見えなくなってしまう。
オレは足元を確認しながら一段ずつゆっくりと下りていた。
はずだったの、だが。
足が階段から離れる。
オレは階段を踏み外し、今にも落ちそうになっていた。
視界が回り始める。
オレは、これから来るであろう痛みと衝撃に備えて固く目を瞑った。
ドサッ!!
衝撃音がする。
しかし、予想していた痛みはない。
恐る恐る目を開けると、オレンジ色の髪が視界に舞った。
オレはその後輩の名を呼ぶ。
淡々とした声で後輩__彰人は言った。
オレはその声に返事を返す。
彰人は答えると、オレに言った。
そこでオレは初めて、今の自分の状態に気が付いた。
彰人の腕がオレの背中にまわっていて、その腕の中にオレがかばわれている。
気づいた途端にオレの顔に熱が集まってくる。
会話を無理やり終わらせ、その辺に転がっていた荷物を持ち直してその場から離れる。
オレの顔は、林檎のように真っ赤になっていた。
彰人に見られてはいないだろうか…?
赤くなった顔が見られないように、持った箱を少し高めに持った。
…そういえば、咲希がよく言っていたな…
「恋」をすると、その人に会うだけで胸がドキドキして、苦しくなるのだと。
些細なしぐさや言葉に、キュンとするのだと。
ま、まさか…
歩きながら、いつもとは程遠い、とても小さな声で呟いた言葉は、誰の耳にも届くことなく消えていった。












![# 攻略対象より悪役に惚れました . [ 冬司ver ]](https://novel-img-gcs.prepics-cdn.com/prcmnovel-tokyo-prod-converted-images/p/463Ienje96SMnaxqeg7tvIaFh9p1/cover/01K566339R5TNCGP01WCWNSK9G_resized_240x340.jpg)


編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。