そう言ったのは―――――――――…………………………
與くんだ。
隆弘くんが驚いた顔で、私と與くんを見ている。
隆弘くんにいろいろ説明したいけど、私も心拍数が凄いことになっていて、それどころではなくなってしまう。
何が起こっているの!?
突然の事で私の頭はもうパニック。
與くんは涼しげにそう言うと、私の手を引き廊下を歩き出す。
廊下にいる與くんファンらしき女の子たちが、こちらを見て『きゃぁぁぁっ!!』と高い声で叫んだ。
それと同時に隆弘くんが私の名前を呼んだけど、ずんずんと歩く與くんに手を引かれているせいで
と答えるのが精一杯だった。
校門を出たところで與くんがいきなり立ちどまり、私もつられて立ち止まる。
與くんは、何が起きたのかわからないままでいる私の方を振り返ると、私のおでこをコツンと小突いた。
そう呟く與くんは、昼休みの余裕がある感じとは正反対。
まるで拗ねた男の子みたいで。
隙?
隙あったかな?
友達が出来て浮かれてたからかな?
だとしたら、気を引きしめて生活しなきゃ!
そう言って與くんは眉を下げて笑い、クシャッと私の頭を撫でた。
なんなよくわかんないけど、與くんが笑ってくれたからいいや!
それに、頭を撫でられると……何故かドキドキして嬉しいから。
お友達だから遊びに行くだけなのに、デートって響きは恥ずかしいよ!
だけど與くんは全く気にしていない様子で、スタスタ歩き出した。
赤面しながらも、與くんの後を追いかける私。
だけど、與くんがやっぱり人気者だって事を、数分歩いただけで改めて思い知る。
だって、すれ違う女の人みんな與くんの方を振り返っていくんだもの。
そして、そのあと必ず私の事を睨むようにして歩いていくんだ。
たしかに、釣り合わないよね……
モデルさんみたいにカッコよくてスタイルのいい與くんと歩いているのが、私みたいななんの取り柄もない子だもん。
その時目の前からスタイル抜群の綺麗な女性が2人歩いてきて。
すれ違いざまに、_嘲り/あざけ_笑いながら発せられたその言葉が、ひどく胸に突き刺さった。
ストーカー、か……。
それはちょっと傷つくかも。
はぁー……とため息をついた時。
與くんの声が降ってきて顔を上げると、目の前にはヒラヒラ振られた與くんの手。
ね?と首を小さく傾げる與くん。
今はもう、4月半ばを過ぎている。
寒くなんかないのに、與くんがそう言った理由。
多分、落ち込んでる私の気持ちに気づいてくれたんだ。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。