京都特有のまっすぐだけど
視界が狭い路地を歩いて
10分少し。
地下支部の入り口近くに
なったとき、無陀野はようやく
話し始めた。
…あんな真似っつったか。
無意識に出たけど、
ひどい言いようだな。
無意識に、責任から逃れたくて
一般論を武器にした。
記憶が戻ったら往復ビンタ
確定だな。
先輩、普段の言葉遣いは
不器用で優しいから、注意とか
怒るときは全部 物理的だから。
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ある日の花魁坂とのメールにて。
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なんつーパワーワードだよ。
瀕死で気づかない?
戦闘部隊で前線に立って
死を間近で見てた先輩が?
ありえない。
例え気づかなくても、
身の引き時は誰よりも
分かってたんじゃねぇのか?
それに、俺と印南がいたんだ。
先輩、任務丸投げしたことも
あっただろ。同じように
すればよかったじゃねぇか。
雨の日…傘を持って
先輩に雨が当たらないよう
珍しく気を遣った日。
あれは秋だった。
紫野薫渼…短髪の金髪。
明らかなギャルだった。
先輩とは絶対合わなそうな
あの人が…大切な人だった??
…どういうことだ。
時系列的にその年に
紫野は先輩に処分されてる。
関われても半年あるかないかの
短い期間だったはずなのに。
…疑っとかねぇとな。
無陀野センパイとはいえ、
間違えることもある。
限りなく正解に近い解釈でも
事実じゃなかったら不正解、
ゼロ点だからな。
…それに、深く聞いとかなきゃ
俺が納得できねぇ。
はっとした。
今…っつーより、今日全体的に
疑ってばかりだ。
雪森先輩がわりと元気だった
のもあるが、敵の奇襲と
キメェ目的のせいだ。
こぞって先輩も呼び捨てか
センスの悪いあだ名呼びかで
クソムカついたしな。
…俺はどうだ?
俺は、何が変だった?
そりゃ先輩のことが心配で
ここまで来たんだ。
それは間違いねぇ。
…その裏側にいる無意識は
何を考えてた…?
それは勘違いだ、って言えりゃ
良かったのにな。
コイツを前にしちゃ舐めた口は
聞けねぇし、一生できねぇ。
…あー、わかったわ。
裏の無意識で俺が考えてたこと。
…馬鹿みたいな保身だ。
…ひっどいな。
学生時代に世話にもなって
正規隊員になってからも
関わってたのに。
だっせ。クソガキだな、俺。
っはは、甘い先輩なんて
考えられなかったのに…
すげぇ似合う。
双子の片割れが先輩を演じて
んじゃねぇかなって思う。
口が裂けても言えねぇけど…
この声、保存してぇわ。
はあ〜とため息をつく暇もない。
雪森先輩は依然にこにこと
犬のように花魁坂にべったり
着いてるから心配ねぇけど…
実家に行くってなんだよ。
馬鹿か、なんで俺が行く必要…
…待てよ、先輩の実家??
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猫だらけ…っつーことは、
動物だらけだ。
あの裏表のなさそうな
猫がたくさんいる….













編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。