第14話

# ❄️
95
2026/03/04 08:32 更新








       京都特有のまっすぐだけど
       視界が狭い路地を歩いて
       10分少し。



       地下支部の入り口近くに
       なったとき、無陀野はようやく
       話し始めた。




無陀野無人
あの桃の技は恐らく
ビリヤードが元になっている。
猫咲波久礼
ビリヤード?
無陀野無人
構えがそっくりだ。
それに、技名は同じだった。
猫咲波久礼
センパイが言うなら、きっと
当たってるんでしょうね。
無陀野無人
球は使っていなかったがな。
剣と組み合わせたんだろう。
猫咲波久礼
で、なんでそれで雪森先輩は
あんな真似を?






       …あんな真似っつったか。


       無意識に出たけど、
       ひどい言いようだな。








       無意識に、責任から逃れたくて
       一般論を武器にした。


       記憶が戻ったら往復ビンタ
       確定だな。






 

       先輩、普段の言葉遣いは
       不器用で優しいから、注意とか
       怒るときは全部 物理的拳で解決だから。




無陀野無人
あなたの下の名前の能力は幻覚だ…
強力な代わりに自分にも作用する。
猫咲波久礼
…初見殺しですか。
無陀野無人
あぁ…同期の俺でも技名は知らない。
それだけ初見にかけてるんだろう。
無陀野無人
学生時代、アイツはよく保健室にいた。
無陀野無人
怪我はしてない。
サボりかと思っていた…
無陀野無人
2年前までは。
_____________________



ある日の花魁坂とのメールにて。


  
花魁坂京夜
ねね
無陀野無人
なんだ
花魁坂京夜
あなたの下の名前…無痛覚かも。
無陀野無人
無痛覚?
花魁坂京夜
ボロボロなのに、ずっと笑ってるから…
問い詰めたら、自分の能力が幻覚系で
自分にも軽く作用しちゃうんだって。
花魁坂京夜
戦闘部隊に居続けたいって
言った時は…フォローお願い。
無陀野無人
わかった。気にかける。

            __________________________

猫咲波久礼
へぇ…例えば、無痛覚の何が
いけないんです?
無陀野無人
瀕死なのに気づかないことがある。





       なんつーパワーワードだよ。



       瀕死で気づかない?

       戦闘部隊で前線に立って
       死を間近で見てた先輩が?








       ありえない。


       例え気づかなくても、
       身の引き時は誰よりも
       分かってたんじゃねぇのか?

       










       それに、俺と印南がいたんだ。


       先輩、任務丸投げしたことも
       あっただろ。同じように
       すればよかったじゃねぇか。




猫咲波久礼
…信じられませんけど。
無陀野無人
大切な人を操って、
自殺に追い込んだ桃だったら
話は変わるだろう。
猫咲波久礼
…は?



無陀野無人
紫野のことだ。
あなたの下の名前が処分したことに
なっているが、あれはほぼ自殺だ。
猫咲波久礼
待ってください。
紫野って人は確かに先輩と
関わってましたけど、なんで
大切な人って分かるんですか?






       雨の日…傘を持って
       先輩に雨が当たらないよう
       珍しく気を遣った日。


       あれは秋だった。








       紫野薫渼…短髪の金髪。

       明らかなギャルだった。

       先輩とは絶対合わなそうな
       あの人が…大切な人だった??










       …どういうことだ。

       時系列的にその年に
       紫野は先輩に処分されてる。

 





       関われても半年あるかないかの
       短い期間だったはずなのに。




無陀野無人
血のついた懐中時計を
あなたの下の名前の落ちたビル付近で見つけた。
無陀野無人
【 S・K  1月22日 】と刻まれていて、
あなたの下の名前の好みとは全く合わないような
真っ白な懐中時計だ。
猫咲波久礼
…それだけですか?





       …疑っとかねぇとな。





       無陀野センパイとはいえ、
       間違えることもある。

       限りなく正解に近い解釈でも
       事実じゃなかったら不正解、
       ゼロ点だからな。










       …それに、深く聞いとかなきゃ
       俺が納得できねぇ。


無陀野無人
それはこれから聞く。
無陀野無人
本人に直接な。
猫咲波久礼
記憶失って1週間ですよ?
いくらなんでも横暴すぎます。
猫咲波久礼
思い出せたとしても、中途半端に終わって
また苦しい時間が来るだけです。
猫咲波久礼
無陀野さんらしくない…
焦っても現状が変わることは
ほぼありません。

無陀野無人
…それはお前もだろう?
波久礼。





       はっとした。



       今…っつーより、今日全体的に
       疑ってばかりだ。


 


       雪森先輩がわりと元気だった
       のもあるが、敵の奇襲と
       キメェ目的のせいだ。


       こぞって先輩も呼び捨てか
       センスの悪いあだ名呼びかで
       クソムカついたしな。











       …俺はどうだ?


       俺は、何が変だった?






       そりゃ先輩のことが心配で
       ここまで来たんだ。

       それは間違いねぇ。








       …その裏側にいる無意識は
       何を考えてた…?



      
無陀野無人
これは予想だ。
違うのなら否定しろ。
猫咲波久礼
……

無陀野無人
あなたの下の名前が落ちた時、お前には余裕があった…
でも目が合うくらいのわずかな時間だ。
無陀野無人
庇うわけじゃないが…
アレは自殺志願者のような真似だ。
無陀野無人
お前のショックの深さより
責任はない。







       それは勘違いだ、って言えりゃ
       良かったのにな。


       コイツを前にしちゃ舐めた口は
       聞けねぇし、一生できねぇ。








       …あー、わかったわ。

       裏の無意識で俺が考えてたこと。




       
無陀野無人
怖いか?目の前で苦しむあなたの下の名前を見るのが。




       …馬鹿みたいな保身だ。









       …ひっどいな。


       学生時代に世話にもなって
       正規隊員になってからも
       関わってたのに。








       だっせ。クソガキだな、俺。




あなた
あ、帰ってきた!!
花魁坂京夜
すご、40分で帰ってきた…
さすがエリートちゃんず
猫咲波久礼
なに待ってるんですか…
体、冷やしますけど。
花魁坂京夜
おかえり、したかったもんね!
あなた
私のわがままなんです…でも、
あったかいので、大丈夫です!







       っはは、甘い先輩なんて
       考えられなかったのに…



       すげぇ似合う。

       双子の片割れが先輩を演じて
       んじゃねぇかなって思う。










       口が裂けても言えねぇけど…

       この声、保存してぇわ。





無陀野無人
京夜、話したか?
花魁坂京夜
うん…タイミング的にも
ベストだと思う。
猫咲波久礼
なにかするんですね。
無陀野無人
あぁ…お前も協力しろ。
猫咲波久礼
.…はい??


花魁坂京夜
あなたの下の名前の実家に行く。
紫野さんのことを調べるついでにね。
猫咲波久礼
実家って…俺関係ないですよね??
無陀野無人
来い。印南と上司には話してある。


猫咲波久礼
(義務命令かよ)




      はあ〜とため息をつく暇もない。






      雪森先輩は依然にこにこと
      犬のように花魁坂にべったり
      着いてるから心配ねぇけど…




      実家に行くってなんだよ。

      馬鹿か、なんで俺が行く必要…











      …待てよ、先輩の実家??



____________________________
あなた
私の実家、猫だらけなんだよ
ホント癒されるから最高…!
猫咲波久礼
へーいいですねー
あなた
棒読みやめなさい
          ____________________________



      



       猫だらけ…っつーことは、
       動物だらけだ。


       あの裏表のなさそうな
       猫がたくさんいる….



猫咲波久礼
(…悪くねぇか)

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