久々の私と依桜の寄り道。
依桜が大貴と付き合ってから寄り道は初。
だから私は依桜に対してイライラが止まらない。
なに、大貴、依桜とデートなんか行ったの?
なんも聞いてないんですけど。
依桜置き傘あったじゃん。
なにちゃっかり大貴の入ってんのさ。
私依桜になんてこと言ってんの。
依桜には1番バレちゃいけなかったはずなのに。
もう取り返しつかないじゃん。
あーあ、私たちが友達続けられるなんて綺麗事だったんだね。
もう無理だ。
ポツ……ポツ
あーあ、こういう時に限って雨。
もう嫌だ。
家に帰るのも嫌になり、小さい頃、涼介と大貴とよく遊んだ公園のベンチに腰掛ける。
この頃は幸せだったな、なんて思ったりもして。
そしたら自然に涙まで溢れてきて。
止まれ、止まれと思うが、涙は一向に止まらない。
むしろ、どんどん溢れてくるばかり。
服もずぶ濡れだけど、頬までもずぶ濡れ。
このままいっそ、家に帰らなくても______
その時、雨が止んだ。
顔を上げると1本の傘。
雨は止んでいなくて、私が濡れなかったのは、涼介の傘のお陰だった。
すると涼介は、私の頬が濡れているのは雨ではなく、涙だと気づいたらしい。
私の頬に流れていた涙を、涼介は優しく掬ってくれた。
なんで、優しくなるの?
無愛想な時はほんとに無愛想なくせに、私が弱い時には本当に優しくしてくれる。
いきなり慌てだした涼介。
一体何事?
……と思ったら、私の制服のシャツが雨に濡れてスッケスケ。
下着もシャツに張り付いて丸見えになっていた。
耳まで真っ赤にして目を逸らす涼介。
私は慌てて涼介の貸してくれたパーカーを着る。
視線を私に戻す涼介。
なんだか涼介らしくないなぁ、なんて。
でも私も相当恥ずかしかった………………
何事も無かったかのように接する涼介。
最大の照れ隠しなんだろうなぁ笑
やっぱり涼介といると笑顔になれる。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。