「ドラコ、寒くないの?絶対セーター着た方がいいわ」
「うるさい、寒くない」
クリスマス休暇明け、シャツに直接ローブを羽織り、ガクガク震えながら中庭を歩く僕は、パンジーが言った通り寒そうに見えるだろう。そう、寒いのだ。
「そんなに見せつけなくたって、春になれば嫌でも目に入るわよ」
「僕は、今見せたいんだ」
「はいはい、風邪引くんじゃないわよ」
早足で向かった先はスリザリン寮の談話室。暖炉の前でブランケットにくるまって本を読む小さいブロンドヘアの背中に声をかけた。
「どこにいたんだ、探したぞ」
「ドラコ、ひさしぶり」
「見ろ、これ。僕より似合うヤツなんかいないだろ」
お腹の辺り、ネクタイを指差しながらいい顔をして言った。正確にはネクタイピンだ。
いいだろう、と鼻をフン、とならしてみる。
「ドラコ、もしかしてそれ見せるためにセーターを着てないの?健気だね」
へへ、と笑うステラ。違う!暑いんだ!とクリスマス休暇前より少しだけ伸びたブロンドの髪をぐしゃぐしゃにしてやった。
「君も僕に見せるものがあるんじゃないか?」
空いているソファにどかっと座って足を組む。また鼻をフン、とならした。
これのこと?と、きらりと光る腕を髪の毛を整えながらあげてみせた。ステラは左手についた明るい緑色の宝石が目立つブレスレットを揺らしていた。
「似合うじゃないか」
満足気に頷くと、上げられた腕に手を伸ばしそっとブレスレットに触れた。僕が選んだだけある、綺麗だな、と呟く。それがブレスレットに対してか、ステラに対してなのか、ドラコ本人もわからないでいた。
「ねえ、クラッブ、ゴイル。もしかしてあの子、ブレスレット見せつけるために腕まくりしてる?」
「ブランケット羽織るくらいなら袖を伸ばせばいいのに、とは思っていたよ」
「そうよね、見せつけられてるわよね、私たち」
「考えるのはよそう、パンジー」
あの2人考えることはほぼ一緒ね、子供っぽい...パンジーは吐き捨て、女子寮へと戻っていった。
クラッブとゴイルはまだ暖炉の前でなにか話している2人をチラリと一度振り返ってから、男子寮へ入った。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。