第7話

4日目
15
2023/10/29 10:00
 次に先輩に会いに行ったのは、5日経った日のことだった。
翌日はなんだか恥ずかしくて会うのを躊躇ってしまい、その後の4日間は熱で寝込んでいて行けなかったのだ。



いつも通り部活を終えて帰ろうとすると、後ろから
亮輔
亮輔
零次!
 と呼び止められた。
零次
零次
あぁ、亮輔。お疲れ
亮輔
亮輔
おつー! なぁ、今日一緒に帰ってもいいか?
零次
零次
別にいいけど。急にどうしたんだよ
亮輔
亮輔
今日夢に佐伯先輩が出てきてさ。今もまだあそこにいるかは分かんないけど行ってみねぇ?
 僕は心の中で(ほぼ毎日会ってたけど)と思いながら、こくりと頷いた。亮輔は実に嬉しそうに礼を言うと、僕の肩に手を回した。
零次
零次
なんだよ
亮輔
亮輔
いや? じゃあ帰ろう、零次くん!


いつもの場所に着くと、そこには寂しそうな顔をした佐伯先輩が立っていた。
零次
零次
先輩?
亮輔
亮輔
どうしたんすか?
 2人で声を掛けると、先輩は表情を一変させて僕たちの方を見た。
美冬
美冬
あ! 今日は中田くんも来てくれたんだ、ありがとう!
 そう言うと、先輩は、いつものように柵に腰掛けるよう、僕たちに勧めた。
亮輔
亮輔
いやー、それにしても久しぶりっすね!
 最初に話を切り出したのは亮輔だ。
美冬
美冬
そうだね〜。あ、零次くん、なんで最近来てくれなかったの?
 痛いところを突かれた。亮輔には、つい2日前まで毎日先輩と会っていたことを話していない。しかも、『零次くん』呼びされていることも、彼は知らないのだ。
亮輔
亮輔
ん? 『零次くん』?
零次
零次
あぁ、それには色々と事情が……。
 先輩に来られなかった理由を説明するのも、亮輔に先輩とのことを話すのもこの短時間(しかも2人ともいる状況)では難しいと判断した僕は、亮輔のカバンを引っ張りながら先輩に
零次
零次
では!
 と一声掛けると、足早にその場を去った。



亮輔
亮輔
どうしたんだよ零次、そんなに焦って
 亮輔の家の近くに着くと、彼は不機嫌そうな顔をして僕の手を振り解いた。
零次
零次
ごめん
亮輔
亮輔
じゃあ、お詫びとして俺の質問に答えろ。お前、まさか佐伯先輩と付き合ってんのか?
 大真面目な顔で聞かれ、危うく笑うところだった。
零次
零次
いや、先輩とはそんな関係じゃない。ただ、最近までよく会ってたことは認める
亮輔
亮輔
じゃあ聞く。それはお前の意思か? それとも先輩に呼ばれたからか?
 「後者に決まってる」と言おうとして口を閉じた。
本当に、先輩に呼ばれたから来ているだけなのだろうか? どこかに、『話したい』という自分の意思があるんじゃないだろうか?
考えれば考えるほど、答えは出ない。
零次
零次
ごめん、考えたことなかった
亮輔
亮輔
……そうだよな。こっちこそごめん、変なこと聞いて
 お互いなんと声をかけたらいいか分からず、僕たちはどちらからともなく自宅へ向かって踏み出した。

僕はなぜ、毎日先輩に会いに行っているのだろう。

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