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第10話

会わない理由
10
2023/11/26 10:00
 翌日、僕は部活中にもかかわらず亮輔と話し込んでいた。
零次
零次
亮輔、ちょっと相談があるんだけど
亮輔
亮輔
おう、なんでも聞くぞ! ってか、お前が俺に相談事なんて珍しいな
零次
零次
うるさい。昨日、美冬先輩に「しばらく会いに来なくていい」って言われたんだ。その後、なんだかずっとモヤモヤしてて
亮輔
亮輔
ほうほうほう……。そういうことか。そうなると思ってたよ
零次
零次
何一人で納得してんだよ
亮輔
亮輔
ごめんて。で、零次はどうしたいの?
零次
零次
……分からない。行かない方が先輩のためかもって思ったり、素直に「じゃあ行きません」っていうのもどうかなーって思ったり
 率直な気持ちを伝えると、なぜか亮輔はニヤケはじめた。僕からの相談のどこかに面白いことがあるのか、単にバカにしているだけなのか。
亮輔
亮輔
そんなに不安なら、俺が今日会いに行って話聞いてくるわ。いいっしょ?
 笑顔を浮かべた亮輔は、返事も聞かないうちに練習に戻った。
僕も練習に戻るか。
一生懸命練習している部員たちの姿を見ながら、先輩がいた頃を思い出していた。



部活が終わってから1時間後、自室のベッドで寝転がっていた僕のもとに、亮輔からメールが届いた。

【佐伯先輩と会ってきたぞ。お前のこと聞いてみたけど、『昨日言った通りだよ』って言われた】

ちょうど読み終わったタイミングで、続きのメッセージが届く。

【あと、これは俺の見間違いかもしんないんだけど、先輩の姿が薄くなってた気がする。もうすぐ本当にあの世に行っちゃうのかも】

急に鼓動が速くなる。携帯を握り締める手には手汗が浮かんでいる。
先輩がいなくなる? だから僕に「もう会いに来なくていい」なんて言ったのか?
不意に、会わなくちゃいけないと思った。
先輩から直接話を聞かないといけないと思った。
手に持ったままの携帯を強く握り締め、急いでいつもの場所に向かった。

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