翌日、僕は部活中にもかかわらず亮輔と話し込んでいた。
率直な気持ちを伝えると、なぜか亮輔はニヤケはじめた。僕からの相談のどこかに面白いことがあるのか、単にバカにしているだけなのか。
笑顔を浮かべた亮輔は、返事も聞かないうちに練習に戻った。
僕も練習に戻るか。
一生懸命練習している部員たちの姿を見ながら、先輩がいた頃を思い出していた。
部活が終わってから1時間後、自室のベッドで寝転がっていた僕のもとに、亮輔からメールが届いた。
【佐伯先輩と会ってきたぞ。お前のこと聞いてみたけど、『昨日言った通りだよ』って言われた】
ちょうど読み終わったタイミングで、続きのメッセージが届く。
【あと、これは俺の見間違いかもしんないんだけど、先輩の姿が薄くなってた気がする。もうすぐ本当にあの世に行っちゃうのかも】
急に鼓動が速くなる。携帯を握り締める手には手汗が浮かんでいる。
先輩がいなくなる? だから僕に「もう会いに来なくていい」なんて言ったのか?
不意に、会わなくちゃいけないと思った。
先輩から直接話を聞かないといけないと思った。
手に持ったままの携帯を強く握り締め、急いでいつもの場所に向かった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!