第5話

# .何でも知ってるよ
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2025/09/13 07:59 更新






研修が始まったとき

獪岳は違和感に気づく。

獪岳
( ……あれ、俺のボールペン、こんな軽かったっけ? )


気のせいかと思った。だが、
次の日には手帳のページが何枚か抜けていることに気づき、
そのまた次の日には、名札の裏に謎の香りがついていることに気づいた。

それは全部、あなたの仕業だった。

ボールペン は同型同色の別物、軽くして「持ちやすく加工」
手帳 は真夏が前日、こっそり盗み写した(個人記録分析のため)
香り は自分の使っている柔軟剤を名札に仕込む。「匂いの記憶」を刷り込むため

気づかれない

でも確実に、彼の五感に「私」を残していく。
それが、乙女の作戦


彼のパソコン、ログインの遅さに悩んでいた

あなた
たまたま同じ機種で、解決法知ってたの…♡


ランチの希望が“中華”とつぶやいた

あなた
偶然予約してたお店が中華なんだけど一緒に行かない?


質問をしたらすぐに返ってくる

あなた
( 全部、履歴書と面接内容から“好みの問い”を事前準備済♡ )


どれも、偶然じゃない。

全部、全部、“彼女の手のひらの上“



研修最終日、打ち上げの席。
あなたはさりげなく隣に座り、こう言った。

あなた
不思議ね。貴方といると、なんだか懐かしい感じがするの


獪岳は、少し目を細めて、

獪岳
……社長って、昔……いや、気のせいか。すみません
あなた
ふふ。いいのよそのくらい


だって、あなたは知らない。

「初めて会った」のは今日じゃない。
ずっと前から、私は貴方を見ていた。

3番ホームで、
部屋の窓から、
制服の背中越しに、

そして、今日もこのスーツの袖越しに。



「偶然」なんて、信じない。

すべては、必然。
貴方に出会うために、私は神にさえなれる。

明日から、あなたは社員。
そして私は、上司。
でもね、その肩書の奥にあるのは、

「あなたを一生見つめ続ける権利」

──私が、なによりも欲しかったもの♡






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