第26話

残り火鎮火の典型
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2025/04/24 10:00 更新
レインが駆けつけたことで、意外にも現場が早く終幕を迎えた無邪気な淵源イノセント・ゼロの残党軍事件の情報は、瞬く間に魔法局、ひいては神覚者に共有された。

当事者兼目撃者のような絶妙な立ち位置のあなたの名前から留守電が入っていたこともあり、情報の流通がスムーズだったらしい。

まぁ結局は、残党とかかなりやばいからとりあえず学生はでしゃばるなとだけ指示を受け、最低限の情報のみをもらって、神覚者から押し付けられた仕事をこなすいつもの日々に戻った。

とはいえ神覚者はいつも通りではなく、残りの勢力をさっさと滅ぼすためにとことを急いでおり、魔法局はいつにも増して慌ただしい。
あなた
残りの残党もいるってマジかー・・・。
あなたの名前は襲撃があったその日のうちにランスから情報を聞かされ、潜んでいる残党軍に向けた対策まで伝えられた。

恐怖のつるぎことレイン・エイムズが秒で場所を割らせたらしいので、そこへマッシュを一人で向かわせると。

マッシュに関して不安はないが、それよりも勢力がまだ生きているという事実がただただ怖い。

この間はマッシュとランスがいたから最善の結果に落ち着いたが、少しでも時間がズレていたらこうはならなかっただろう。

そんなこんなで事件から数日。
色々あってマッシュの出発が遅れ、今日、殴り込みに行くことが決まった。
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じゃ、行ってきます。
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伝言ウサギは持ったか?逐一の報告を絶対に忘れるな。お前の筋肉の密度でくれぐれも潰すんじゃないぞ。壊すな。いいな?
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・・・こいつ、なんか饒舌じゃね?
あなた
魔法局からの依頼ってことにはなってるけど、ほとんどランスの管轄内だから、マッシュがミスると怒られるのランスなんだよ。神覚者が今、ピリピリしててめっちゃ怖いし・・・。
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それは・・・、お説教は避けたいところですね。
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ま、マッシュ君、(ランス君のために)頑張って・・・!
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うん、僕がんばる。
なんの儀式かと見紛う謎の送り出しを終え、魔法局員の箒に二人乗りで連行されていったマッシュを見送る。

ランス以外の全員はこれで悪の組織を完全撲滅だとほっと一息吐くが、伝言ウサギを握りしめたまま土星を揺らす男の心境は穏やかではない。
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・・・まぁ、あいつマッシュは連絡忘れるよな。
あなた
火に油を注ぐんじゃない!
残りの勢力の本部。

イーストンからほど遠い人気のない廃墟に、人数がまとまって息を潜めていると情報が入っている。

マーチェット通り襲撃事件の概要は一通り世間にばら撒かれたものの、肝心な部分は魔法局の方できちんと隠蔽しているので、残りの勢力に漏れる心配はないだろう。

例えば、全員拘束されて、今なお拷問を受け続けていること。

運悪く、マッシュ・バーンデッドに遭遇したこと。

連絡が途絶えたことで警戒してはいるのだろうが、送り込んだ男は人類最強といっても過言ではない、人間兵器の筋肉を持つ英雄である。

あちらがどう警戒していようと結果は変わらない。

そして、ごく当たり前のこの考えは、見事に的のど真ん中を射た。
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『・・・あ、あー、もしもし、ランス君?これ思ったより人数少ないかも。・・・あれ?繋がってる?』
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・・・繋がってる。今はどんな状況だ。
302号室に全員で集まりマッシュの連絡を待っていると、約束の時間より少しだけ遅れてランスの伝言ウサギが震えた。
戦闘中である場合を考慮し、こちらからは連絡しない方がよいため、マッシュの電話を待つほかなかった身にしてはかなり嬉しい通知音だった。

伝言ウサギをスピーカーに設定してテーブルの真ん中に鎮座させ、囲むように皆で耳を傾ける。
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『えーっと、とりあえず三分の二はやったと思う。ラスボスがどこにいるかなんだけど・・・。』
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そこまでは分かっていないから、引き続き探せ。不意打ち食らうなよ。
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『了解。・・・って、あ、えっ____。』
機械的な音とともに、マッシュの声の続きがかき消される。
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・・・。
不穏な終わり方で勝手に切られた伝言ウサギを握りしめ、ランスがため息を吐く。

だが、あのマッシュのこと。
おそらく、というか確実に問題ないだろうから、別に重く受け止めることはない。

現に、頭を抱えていたランスの表情が、吹っ切れたように澄んでいく。否、これは、諦めたというべきか。
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・・・まぁいいか。
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マッシュ君はちゃんと連絡してくれたしね・・・。
あなた
伝言ウサギ壊れてないといいな・・・。
呆れを含んだ声色で会話する。

もはや、これが彼らしいと感じてしまった自分に、いつの間にか大分毒されていたことを実感した。

けれど、マッシュは世界に関わる大切な場面でベタにもほどがある不穏な電話の切り方をした後、その圧倒的なパワーを駆使し、完全勝利を持ち帰って期待を裏切るだろう。

後で、「そんな電話したっけ?」とかましてきたとしても、なんらおかしくない性格。

戦闘に多少のスパイスは不可欠なのかもしれない。

あの力は、例え誰が相手であっても、勝敗をぐらつかせるような軽いものではないから。
マッシュが殴り込みに行っていた残党軍の廃墟では、目に映すことすらはばかられるほどの威圧的な光景が惜しみなく晒されていた。

まさに強者と弱者。
弱肉強食の可視化。

幸い、ここにはマッシュと敵対勢力の者らしかいないため、この状況が世に出されることはない。

蜂蜜色の瞳へ前髪で影を落とし、床に寝そべった敵を見下ろす。

リーダーらしい敵のボスは、拳を一つ喰らってそのまま、死んだように意識を失い泡を吹いている。

やりすぎたかもしれないという反省はあった。

けれど、魔法局という後ろ盾が依頼という言い訳を提示し、自分を守ってくれていることはマッシュもちゃんと分かっている。

その事実が、マッシュのストッパーを一つ外してしまったのかもしれない。
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・・・終わったかな。
適当に切ってしまった電話のことなど頭の片隅にも残っておらず、返り血をほろって赤く染まった地面に視線を向け、そっと目を伏せた。

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