魔法気候管理局。
魔法局に属しており、現在、局長不在で機能を失っている。
そんな職場へ救世主のように割って入るのがこの度神覚者として抜擢されたランスであり、これから局長として局を回す立場に就く。
まだ年度が終わっていないことや、決戦の影響で魔法局の繁忙期が例年より長引いていることなども含め、まだ局への就職は進んでいないらしい。
唯一、というか、最も身近な先輩である戦の神覚者は、前任の神覚者の引退により問答無用で魔法道具管理局へ就かされたので、相談しようにもあてにならなかった。
お互い忙しすぎてそんな暇がとれなかったのも大きい。
そんな背景を思い起こしていると、今まで使っていた羽ペンを指先でくるくる弄びながら、ランスが追記する。
年度の切り替わりは、局が1番慌ただしくなる。
神覚者なら尚更、自分の局と決戦の後始末だけで手一杯だろうし、それらをちゃんと捌けているならかなり頑張っている方だ。
ここに新人神覚者の諸々があるから忙しくなるわけなのだが、今回ばかりは誰も構ってあげる余裕を作れない。
仕方ないのだが。
魔法局はこの世界の最高機関。
決して大袈裟な表現ではなく、やらかしたら人生が詰む。
・・・まぁ神覚者ならある程度の揉み消しは可能だろうが・・・。
ほんの少しだけ悩んだ後にそう答えた。
魔法局にバイトなど存在しないことを考えると、もっと密接な役職のような気がしたが、名称が『バイト』なのだからこれ以外の返答が見つからない。
微かな呆れを見せるランスに気まずくなって目を合わせられないでいると、ふと部屋の時計が目に入った。
時計の針が指しているのは午後1時の少し前。
焦ってあなたの名前が考えを巡らす間にも、針は刻一刻と進んでいく。
今日は、午後1時から魔法局で事務の約束があった。
あまりにも会話が弾んで、盛り上がりすぎたのがいけなかった。
常に時間に追われている身だという自覚はあったつもりだったのだが、余裕があるからと調子に乗るのは本当に駄目だ。
とはいえ、転移魔法を使えば説教を受けるような時間でもないので、申し訳ない気持ちでいっぱいになりながら301号室を後にし、とりあえず女子寮までダッシュする。
荷物は部屋に用意してあったので、それを抱えてすぐに転移魔法を発動した。
僅かな浮遊感の後、魔法局前の正門に着地し、仕事場として恒例化してきているレイン先輩の執務室へ向かう。
腕時計に目を移すと時間にはまだ少しばかりの余裕があり、ほっと一息吐いた。
普段はもっと早めに来て待機していたために、罪悪感がないといえば嘘になる。
けれど、別に約束を破ったわけでも仕事を蔑ろにしたわけでもない。
むしろ自分が本気で魔法を使ったらここまで転移の時間を短縮できるのかと、感心さえしていた。
そんなあなたの名前の胸中なんて気にもせず、ノックした先の椅子に腰掛ける先輩は、相変わらず眉間の皺が深い。
ランスの就職や諸々についてあわよくば知りたいと思っていたのだが、ここまでやつれていると流石に訊きづらい。
これは、せっかく和解したというのに、弟と鉢合わせれば確実に怒られるやつ。
あの、なんていうか体調大丈夫ですか?
死なない?
神覚者といえど三大欲求には勝てないと思うんだ・・・。人間だから・・・。
そうじゃなくても先輩はまだ未成年なんだしもっと寝て欲しい。
そういう口出しはきっとお節介だろうから、決して口にはしないけれど。
これだけ疲れを隠せていないのに、どこに行こうというのだろう。
まあ、行くなと止めたところで意味はないので割り切った。
そんなことより、さっさと部屋を出ようとしている先輩の発言が引っかかっている。
未所属で不安定な学生ごときに、ここまで託さないでほしい。















編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。