第24話

こんなものですよ
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2025/04/11 11:04 更新
一瞬もブレない、目で追うことさえできない殴打技により、地面に寝ている敵らの攻撃手段の断ち切りに成功した。

杖がなければどんな魔法使いもただの人間だし、肉弾戦はもともとこちらの本領でもある。
もう心配はない。
あなた
流石・・・。
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まぁね。
たった一振りで塵と化した杖だったものの残骸を眺め、マッシュのパンチの風圧で乱れた髪を手ぐしで撫でながら呟く。

鉄の杖を握力で曲げてしまうのだから、木製の杖を叩き壊すくらいこの男にとっては序の口なのだろう。
なんでもないようにしている様子がさらに複雑な心を助長させる。
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さて、こいつらどうしてくれようか。
隣で物騒な声が聞こえたと思うと、絶対零度の雰囲気をより低下させ、マグノリアの杖に指を走らせているランスがいた。

なんの魔法を発動する気なのか、その目は完全に凍っている。
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リーダー格の奴は誰だ?
一番近くに転がっていた敵の顎に杖を差し込み、無理やり顔を上げさせて問うている。

敵はかろうじて意識が戻ったばかりのようで、重力魔法を受けた傷が痛々しい。

状況を把握できないまま軽い拷問をさせられている姿に、なんだかんだ同情してしまった。なによりもランスが怖すぎる。
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事情聴取とかなら魔法局に任せればいいんじゃ・・・。
あなた
黙ってろ。
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え。
どう転ぼうとも、大都会のマーチェット通りでここまで大々的に騒ぎまくった魔法犯罪者の事件において、神覚者が関わらないわけがない。

魔法局員だけで取り仕切るのは限界があるし、今回は偶然怪我人が出なかったからいいもの、街の損害は免れていない。まず間違いなく責任追及される。

犯罪抑止機関が、何をやっているのかと。

そしてここからは推測だが、この手の案件を引き受けるのはオーターさんの魔法魔力管理局だ。
どう考えても変に面倒くさい今のような事件を捌いている暇はない。

だから少しでも貢献できるように、事情聴取や素性を露わにする等、あらかたの仕事を済ませておこうとしているのだと思う。

そうじゃなくても、派遣されるのはオーターさんの部下だから、局の勢力が削られるのは明らかだ。
あなた
だから駄目。
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成程・・・。じゃあ僕は大人しく連絡待ちしてます。
あなた
それがいいと思う。
そこまで話して改めてランスの方を見ると、どうやら相手もマグノリアの杖だと気が付いたらしく、可哀想なくらい怯えている。

そりゃあ、代々的な重力魔法の家の長男がここにいたらビビる。
もはや涙目の敵としばらく会話していたランスが、ふと立ち上がってこちらへ歩いてきた。

脅しに使ってはいたものの、一度も発動しなかった杖はそっとローブの中にしまわれている。
まあ、抵抗の意思が僅かでも垣間見えれば、容赦なくぶっ放すつもりではあったのだろうが。
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衝撃の事実だ・・・。
あなた
え、何?
頭痛がするのか、呆れたような声と共に頭を押さえている。
この頭痛は未来の自分が魔法局の多忙の渦に飲まれることを予知してのものだろう。
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あいつら、無邪気な淵源(イノセント・ゼロ)の残党軍だったらしい・・・。
あなた
・・・マジかよ。
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あばばばばばばばば。
さすがのマッシュも事の重大さを理解したのか、顔を引きつらせるあなたの名前の横で小刻みに震えていた。

どうやらランスが初めに脅しにかかった相手がリーダーだったらしく、耐えきれずに全部喋ってしまったようだ。

ちなみにブチ切れたランスの魔力に間近であてられ現在は気絶しており、拘束するまでもない。
まぁすぐに目覚めるだろうが、重力魔法の攻撃を受けた身体で逃走は無理だろう。

そんなことより、今は敵の正体の方が大切な話題である。
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これがバレたら・・・。
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・・・まぁ、間違いなく市民がパニックになって暴動が起こるな。お前が魔法不全だと知られたときのように。
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やば。
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ヤバいで済むか。責められるのは最後を決めたお前だぞ。
マッシュには、悪の親玉を倒した英雄、という肩書きが今や染み付いている。

かなりの魔力を保有した魔法犯罪者だったあたり、市民の不安も大きく、責任は魔法局よりかはマッシュに向くだろう。

ちゃんとしてくれと。
やるならきちんと滅ぼしてほしいと。

落ち込んだマッシュに倣い、その場の空気が若干沈む。

そんな雰囲気を切り裂くように、あなたの名前のローブの内ポケットに収納されていた伝言ウサギが、けたたましい音を立てて着信を知らせた。
あなた
あ、魔法局員着いたらしい。
ここに派遣された局員の連絡伝いに、受け付けの方からのメッセージを受信した。

必要な人数には満たなかったものの、ちゃんと縄を持たせたらしい。
このまま問答無用で牢屋に連行か。

そう思いながら連絡を承諾するため指を滑らせていると、低空飛行でこちらへ飛んでくるほうきの集団が見えてきた。
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来たみたい。
あなた
あ、じゃあ帰るか。ランス、事情説明よろしくね。
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ああ。後で連絡しておくから、お前ら転移魔法で先に帰れ。
あなた
了解ー。
転移魔法にマッシュを巻き込むように発動のスペースをいつもより広げ、魔力を多めに込める。

次の瞬間淡い光が周囲を支配し、姿が薄くなったかと思えば、ふわりとした炎に包まれて二人まとめて姿を消した。

ランスに押し付けて逃げた感じが否めないものの、マッシュとランスが揃った上で魔法局員が集まった状況、粛清が終わり静かになったここ現場に興味本位で野次を飛ばしにくる市民がいないとも限らない。

ランス一人だけなら適当にいなして説明するだけしてさっさと帰宅できるだろうが、マッシュがいると火に油を注ぎかねないだろう。

先に帰らせたのは、それが理由だったりする。

また、魔法局に連絡したあなたの名前は恐らく色々な処理に付き合わされることになるから、適当な言い訳をランスに託し、逃げさせてもらった結果でもある。

目撃者として説明する情報など何もないというのに、時間が縛られるのは勘弁だ。それよりもあなたの名前にはやるべき仕事がある。
神覚者全員分のプライベートな連絡先が入った伝言ウサギなど、この世に二桁あるかないか。

上記のコネというコネを使い尽くし、なんとかして事を穏便に済ませるためにも。
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・・・え、ここどこ?
魔法が切れ、妙な浮遊感の後降り立った場所に、マッシュが純粋な疑問を口にした。
あなた
302号室でもよかったんだけど、居た場合フィンがびっくりするかなって・・・。調理室。
甘いクリームの匂いが残り香になって漂っているのは、十中八九隣の男のせいだろう。

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