第19話

最後の願い
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2025/05/06 09:17 更新
一青零兎
一青零兎
ちょ、ちょっとまって——
先輩
先輩
一つは柚月ちゃんだけの記憶を消す。
止めたかったが先輩はそんなことを気にもとめず話し続ける。
先輩
先輩
もう二つは柚月ちゃんと一青くん両方の記憶を消す。
一青零兎
一青零兎
は……
多分、俺の記憶を消すか、柚月ちゃんの記憶を消すかだと思っていたが…
一青零兎
一青零兎
それだと柚月ちゃんはっ……!
先輩
先輩
……何?
何とか抵抗しようとしたが先輩の重い目線に耐えられなかった。もう、諦めるしか……?そもそもこんなの隠し通せるはずがなかったんだ。
先輩
先輩
あぁ。決められないんだったら柚月ちゃんの記憶を捏造する、でもいいよぉ?
そんなの、決められるわけが無い。今まで色々な子達を見てきたが、柚月ちゃんは、柚月ちゃんは他の子とは違った。だから必死に守ってきた…それを俺の選択で……
先輩
先輩
……これが仕組みだからさぁ。一青くんも気づいてるんでしょ?自分の記憶が上書きされていることにも。
先輩は、どこまで知っているんだ……
先輩
先輩
ほら、どーする?
結局は、柚月ちゃんの元の記憶は無くなるんだ。上書きの方が一見良さそうに見えるが、記憶だと思っていたものが違うと気づいた時。もの凄いショックを受ける。なら、消した方が無難なのかもしれない。けど、そうすると思い出す可能性が限りなく少なくなる。上書きならもしかしたら元に戻せるかもしれないんだ。俺は…
先輩
先輩
悩んでるんだったらいっその事一青くんの記憶も消しちゃったらぁ?
一青零兎
一青零兎
え。
俺の、記憶…確かに知らぬが仏という言葉もある通り知らない方が楽なこともある。けどそれは責任の放棄なのでは…?やばい。そろそろ眠気がさしてきた。早く決めなければ。
先輩
先輩
……で?選択肢を与えたはいいものの俺は一択なんだよね。
一青零兎
一青零兎
ま、まってくだ……
先輩
先輩
二人とも、消しちゃおっか。
バチッ
見落としてた…先輩は眠らせる以外にも、俺をこうやって気絶させることも出来たんだった…
花咲柚月
花咲柚月
……あれ。
目が覚める。頭が謎にスッキリしている。ここはどこなんだろうか。分からないな。
花咲柚月
花咲柚月
私、なんでこんなところに……?
紙が置いてある。二十三期生  花咲柚月…これが私の名前?いまいちしっくり来ないな。
一青零兎
一青零兎
柚月、ちゃん……?
目の前に、誰だか知らないが、男の人がいる。座っているその人は何故か泣いていた。そしてその人は誰かもう一人の男の人に呼ばれている。そして私に柚月ちゃんと言ったか?私はやっぱり柚月っていう名前なんだろう。
先輩
先輩
…あぁ。目覚めるの早かったなぁ思ったよりもぉ…しかも柚月ちゃんも起きたなんてねぇ。良かったねぇ一青くん。
あの人は"ひとと"というのか。
一青零兎
一青零兎
……
なんか、行っちゃったな。私はどうすればいいんだろうな。……寝ようかな。
一青零兎
一青零兎
……あぁ。
来てしまった。気を失っている間に知らないところにいて、結局逃げることも出来なくて、結局連れてこられて、柚月ちゃんが記憶消されるところも目の前で見て…最後、柚月ちゃんが目を覚ましたから、まだ、良かったけれど…
先輩
先輩
行くよ。
一青零兎
一青零兎
……
東先輩はどういう気持ちなんだろうな。俺は、もう無理なんだろうな。
先輩
先輩
……まぁ一青くんは俺の教え子だからさぁ。
何を話し出すかと思えば…それにしても、俺って本当に東先輩の教え子だったんだな。
先輩
先輩
一個だけ叶えてあげるよ。一青くんの願い。
一青零兎
一青零兎
……え?
先輩がこんなこと言うなんて。"願い"かぁ。でもどうせ忘れてしまうんだよなぁ。……それでも。
一青零兎
一青零兎
……あの、美しい星空の下で、また、柚月ちゃんと、生徒と教師の立場であいたい…っ。
先輩
先輩
……
東先輩は少し驚いた顔をしたあとに少し悩みこっちを見つめた。
先輩
先輩
……いいよ。叶えてあげる。
一青零兎
一青零兎
え……?
先輩
先輩
柚月ちゃんの記憶、まだ完全には消してないからね。……柚月ちゃんの先生と生徒の立場であった最後の瞬間までの記憶を戻してあげるよ。
……そんなことが、できるなんて。
先輩
先輩
……
あれ、急に視界が……
一青零兎
一青零兎
……はっ。
あれ、ここは……
花咲柚月
花咲柚月
先生?大丈夫ですかー?
一青零兎
一青零兎
柚月、ちゃん……?
本当に、本当にもどってる……
花咲柚月
花咲柚月
なんか今日空綺麗ですねー
……綺麗、だ。でも、あの時の星空にはあった一等星がないな。
花咲柚月
花咲柚月
……どうしました?
一青零兎
一青零兎
……あ、いや。なんでもないよ。
花咲柚月
花咲柚月
あぁ!もうすぐ授業始まっちゃう!
……もうそろそろ、終わりなのかな。
花咲柚月
花咲柚月
……せんせ。大好きです。守ってくれて、ありがとうございます。
一青零兎
一青零兎
……え?
記憶、ないはずなのに。しかも柚月ちゃんはそんなに耐性はいはすだ。記憶が残るなんて、キセキが起きない限りは……
花咲柚月
花咲柚月
……綺麗ですね。
……一等星が無くなったのは、もしかしたら柚月ちゃんを守れなかったからかもしれない。
花咲柚月
花咲柚月
じゃあ、また会いましょうね。先生と生徒じゃなくて、先輩と後輩で。
一青零兎
一青零兎
え、ま、まって……!
花咲柚月
花咲柚月
……先輩が、来ましたよ。
柚月ちゃんが少し歪んだ笑顔をつくる。柚月ちゃんと、もうちょっと話していたい。けど、もう叶わないんだろうな。
一青零兎
一青零兎
柚月ちゃん。ありがとう。
段々と重たくなっていく体で眠ってしまうことを察した。多分柚月ちゃんは俺よりも体が小さい分早く薬が回ったんだろうな。だから俺より先に気づいたんだ。
あれ、先輩が来たって……?
バタッ
一青零兎
一青零兎
柚月ちゃん!……柚月、ちゃん。
もう、いいか。
先輩
先輩
……はぁ
柚月ちゃんの記憶を全部戻してあげたんだからもういいよね。
先輩
先輩
……さようなら。
~完~ 星空の下でまた君と出会えたら

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