この話が、この場面が全て東先輩の思いどおりになっている気がして少し寒気がした。が、もう後戻りはできない。
いつまで焦らしていたってなにも変わらない。まぁ、ここまで踏み込むと私の記憶についても触れられそうだが、もう諦めよう。この質問にさえ答えてもらえれば、私はもういい。
こんなにすぐ教えてくれるとは思っていなかった。なにか裏があるのか?…でも、そうは見えないが…?
全て、見抜かれている。なんでそこまで知っているんだ。まぁ記憶があることに関してはどんなに鈍くても気づくとは思うが、耐性とか、先生のこととか、なんで、そこまで……?
いまいちピンと来ない。確かに零兎先生も名前について疑問を持っていた。が、こんなにも違う名前だっただなんて。少し変えたくらいだと思っていた。
先輩はゆったりと話し続ける。
思わず攻撃的な返事をしてしまった。先生は双子の兄を殺したのか…?そしてその話を真剣にではなくネタのように扱っているのに腹がたった。
笑顔でそう言う東先輩は今では安心ではなく恐怖を与えているのと同然だった。
また何を言い出すのかと怖くなる。が、もうこれ以上逃げたりなどの失態を起こすと何をされるかが分からない。
食べなくて良かった、が、なぜ麻痺薬……?
慌てて口を塞ぐ。多分空気に溶け込んでいるということだろう。まだ、意識はハッキリしている。だから、何とか…っ。
そう言われ、まだ間に合うかもと立とうとして見るが、手足が鉛のように重く感じてどうも動けそうにない。
私は、どうすれば…?というかそもそも無謀だったか。先生を気絶させてくるなんて。一人で東先輩のところに来るのは自ら記憶を消してくださいと言っているようなものだ。でも、先生と授業とかで一年くらい過ごしてきて、この何日間かいつもと違う感じて関わってきて……もし逃げるんだったら先生を置いていけないって思ったから。なら、先生の悩んでることも私が背負ってあげようって思ったから…そのためには必要な事だったんだ!……あれ、体がどんどん重く…
落ち着け。落ち着け…私は今何をすればいいかを考えー…
ダンッ
バンッと扉を開ける音と共に零兎先生の声が聞こえた。
先生の顔は見えなかったが声だけははっきりと聞こえた。あぁ。先輩って呼んでって、言われてたんだったなぁ……。……もう、無理、かも……
遅かったか。東先輩の手口を教えておけばよかった。せめて最後水でも飲んでいれば睡眠薬を感じる機能が麻痺して眠りにくくはならないが眠る直前までは動けたはずだ。けれど、そんなこと事前に知らなければできるはずがない。
なぜ、返事を……?
先輩が意味もなくこんなことをするはずがない。そして柚月ちゃんの話はどういう事だろうか?特に好かれる理由が…?
…先輩は俺がこの手口を知っていることくらい知っているだろうに…口を塞いだところで睡眠薬を吸い込ませにくくするだけだから早めに終わらせないとな…先輩の冗談がただのお遊びならいいのだが。
記憶のこと、バレてないといいが。
こういう形式か…実際バレていないかもだが、バレていた場合すごく最悪な事態になる。けど、自供したところで、何も変わらないだろうな。
それか、何か言われたら気づかなかったで通せばいいか。
先輩が少し戸惑った後に笑顔で選択肢を出した。その時すごく嫌な予感がした。
















編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。