第16話

本当の気持ち
4
2025/05/04 11:43 更新
……なんか、ぼんやりするな……
せんせー!せんせー!
れ、れいとくん……!
そんなこといわずにさー!
……なんだろう。この声。どこからか聞こえてくるような……?いや、それよりはなにかの記憶が蘇っているかのような……?
……せ、先生っ……な、なんで…?
れいとくん。おちついて。君は選ばれたんだ!
あれ、これってまさかだけど……?ま、まって、そのままいったら……!
……せんせぇ…
なんで、記憶が……
や、やっぱり、これは、零兎先生の記憶……っ。
花咲柚月
花咲柚月
……っ!はぁっ、はぁっ。
一青零兎
一青零兎
柚月ちゃん!
変な、夢を見た。
一青零兎
一青零兎
おかゆ、食べてみて……
花咲柚月
花咲柚月
……はい。
ここは、どこだろうか…なんかキッチンからベット、机まである…そしてなぜにおかゆなのだろうか…いや、まぁ、謎に食欲がないので助かるが……?!し、しょっぱい………
一青零兎
一青零兎
どう、かな。
花咲柚月
花咲柚月
お、美味しいです……
先生が作ったらしい。そのおかげでしょっぱいなんて口が裂けても言えない…まぁ言ったところで先生も何も出来ないとは思うけれど……でも、食べたら少しだけ、元気になった気がする……
そういえばさっき……。夢……やっぱり、夢じゃ、なかったな。
花咲柚月
花咲柚月
先生ってここについて、どう思いますか……?……好き、ですか?
一青零兎
一青零兎
……え?
最初は先生は生徒に対して悪意しかないのかと思っていた。生徒とか、まぁ平たくいえば子供を殺している時点でそれは確定だと思っていた。思っていた……けど、なんとなく喋っているうちに先生も私と同じで、でも、そんな中でも妥協というか、そんな感じで今に至っているのかなって。そう、ちょっと思った。だから、ここが嫌いなら私と一緒に逃げ……
一青零兎
一青零兎
好きだよ。
花咲柚月
花咲柚月
……え。
先生はきっと、嫌いって答えるんだろうな。そう思っていたからかすごくびっくりした。
一青零兎
一青零兎
もう、話そうかな。
ゆっくりと先生が話し始める。
一青零兎
一青零兎
柚月ちゃんなら、何となく理解出来ると思うけど。俺らってここに通ってたんだよ。友達と、先生とワイワイさ。だからなんていうか難しいんだけど、憎めないって言うか、フラッシュバックするっていうか……って感じだからさ。東先生…あぁ、俺の"先輩"?もさ、俺の"先生"だったからさ。んーなんというか不思議ーっていうかさ。記憶なくなってるけど、酷いことされたけど、でもなぁって。あ、変だね。ごめんね。
少し悲しみの混じった声で先生が話す。東先生……。零兎先生はきっと、ううん。絶対寂しかったんだろうなぁ……私は先生が特別で、私も記憶を持っていて先生も記憶を持っていて、だから共通点があるし、話せるから、そんなに寂しいとは思わない。もちろんみんなが、って考えたら寂しいし、怖い。けど先生よりは全然寂しくない。先生は自分だけ記憶があるんだ。そんな寂しいことは無い。
花咲柚月
花咲柚月
なんか、ごめんなさい。
寂しい過去を、掘り出してしまった。
一青零兎
一青零兎
あ。いや、大丈夫…あ、うん。でもね、これから、いや、誰かほかに人がいた時には"先輩"って呼んでもらっていいかな。
花咲柚月
花咲柚月
え?
一青零兎
一青零兎
……柚月ちゃんに、同じ寂しい思いをさせるのはちょっと気が引けるんだけどさ…ここって、先輩後輩の関係っていう"設定"になってるから…ね。
"先輩"、かぁ。慣れないなぁ。先生はやっぱり先生だし、零兎先生って結構自分のなかでやっぱり特別な先生だから。
花咲柚月
花咲柚月
……はい。
先生はやさしくてちょっとおかしくて、うん。先生として本当に大好きだ。
一青零兎
一青零兎
……じゃあ、行こうか。"先輩"方に挨拶に。
花咲柚月
花咲柚月
あ、挨拶……?
先生はドアをあけ、廊下に出た。
花咲柚月
花咲柚月
ろ、六階……?
廊下の壁に『六階』と書かれた板がかかっていた。ここは塾の中では無いのか…?
一青零兎
一青零兎
ん、あぁ。まぁ、六階まで実はあったんだよね……そんなに変わらないから安心して。
全然知らなかった。が、まぁたしかに外から見たら何故か少し高い気がするなぁとは思っていた。けれど別の階があるだなんて。
一青零兎
一青零兎
行くよ。
先生は少し歩いた後に私たちがいた部屋の隣の部屋をノックした。
一青零兎
一青零兎
四季くーん。行くよー。
先生がそう言うと蒼流が部屋から出てきた。蒼流、よかった。こんな近くにいたなんて。
四季蒼流
四季蒼流
あ、もうこんな時間でしたか……あ、あの時の子だ。ってか、二十三期生だったんじゃんか。やっぱり。はぁ、なんで隠すかなぁ
花咲柚月
花咲柚月
あ、いや!……あ、でも。……なんでもない。
蒼流、記憶が無くなっているらしいが、前の私との記憶は残っているのか…なんか不思議だな…ここで蒼流に反論を言いかけた時零兎先生からの視線に気づいた。これ以上ヘマを犯したらきっと私は…
一青零兎
一青零兎
……まぁまぁ、お互い挨拶は?
そう言うと先生はちらっと私を見た。
花咲柚月
花咲柚月
あ、は、花咲柚月……です。
四季蒼流
四季蒼流
四季蒼流ね。よろしく。
蒼流、相変わらず変わらない……けれど、やっぱり記憶はなくなってるのかぁ…と考えると寂しくなる。そして先生は私と蒼流…二十三期生をいっぺんに挨拶に連れていく気なのだろう。と考えると真秀達はどこに行ってしまったのだろうか……まさか……。これ以上悪い方向に考えたって何も出ない。真秀達が無事にいることを願うくらいしか私には出来ないんだから。

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