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第1話

Prolog
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2025/11/24 08:05 更新
君の寝息が聞こえる。
静かで、あたたかくて、触れれば壊れてしまいそうなほど優しい音。

君はずっと私の隣にいた。
私の名前を呼んでくれた。

だから、
私たちはここから消えなければならなかった。

ゆっくりと、君の頬に手を添える。
その温度はたしかに私を必要としてくれていた。
けれど今、その温度が僕を縛っている。
このままでは、君まで闇に巻き込んでしまう。

ランプの光に照らされた私の影は、
ゆらりと揺れて、まるで逃げたがっているように見えた。
影は正直だ。
私の中に眠る“何か”を知っている。

君の指先が小さく動く。
目を覚ましてしまう前に、私はその手からそっと離れた。
離れた指先がひどく冷たく感じて、胸が強く締めつけられた。

置いていくなんて、本当はしたくなかった。
君の温度だけが、私を人間に戻してくれていたのに。
でも、このままそばにいたら、
君の温度まで消してしまう。

だから、残していく。
温度も、想いも、名前も。
私のすべてを、ここに。

ゆっくりと私たちの家の扉に手をかける。
外の空気は、夜明け前なのにどこか焦げるように冷たい。

私の影が、先に一歩を踏み出した。
まるで、私の決意をせかすように。

もう振り返れない。
振り返ったら、君の温度に触れた瞬間、
きっとここに留まってしまうから。

──君の未来のために、
私は君を置いていく。

影が長く伸び、闇へ溶けていく。
その先に、私の行くべき場所がある。
光の届かない場所が。

扉を閉める音が、やけに大きく響いた。
その瞬間、君たちの寝息がふっと途切れた気がした。
気づいたのかもしれない。
私たちがいなくなったことに。

ごめん。
ありがとう。
さようなら。

言えなかった言葉が、胸の奥で焼けるように疼いている。

そして私たちは、君に残した温度だけを頼りに闇の中へ歩き出した。
募集:11時頃~

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