You side
イケブクロからシンジュクまではそれ程距離がある訳ではない
だが私用で毎日真っ直ぐは帰らず、花屋や八百屋に寄った上でシンジュク中央病院に通い帰っている
まあここまで言えば察すると思うが、私用というのはお見舞いだ
そして銃兎さんはそれを左馬刻さん伝手に寂雷さんから聞いたのか、こうして車を走らせてくれている
その間に今日贈られたプレゼント
主に片手間で目を通せる手紙類を読んでいく
相も変わらず何故か差出人不明が殆どで、最早筆跡や便箋で区別が付くようになった
顔は知らないのに筆跡は覚えているのも不思議な話だ
それにしてもここまで名前が書かれていないと、私のファンクラブとやらでそういう決まりでもあるのだろうか
確かに名前があればお返しやら返事を1人1人用意するし、私が1年の時はその対応に明け暮れていた記憶がある
だというのに何故か2年に上がった途端に今の形になったのだ
見かねた教員が介入でもしたのだろうか
因みに食べ物は少し例外で、名前ではないのだが個人を識別する為なのか贈られた日付
それから記号や番号が一律の筆記体で印刷されたシールが貼ってある
更には同じ番号が振られることはないので、恐らくファンクラブで律儀に毎度番号を変えて発行しているのだろう
そう考えるとある意味匿名性は保たれている訳だ
まあきっと変なものが入っていた時の対策なのだろうと結論付けて一応口にしている
量も制限されているのか食べ切れない程送られることはないからね
それまでは一二三さんの助言で未開封の購入品以外食べれなかったし
捨てるのが申し訳なく思ってたところだから個人的には助かった
因みに三郎くんにそれを見せたところ、シールを剥がして光に透かした時に校章が見える様になっていたのを一目で見抜いた
故にこれは信憑性を表す物だろうから透けない物は口にしてはいけないと忠告された
頭が良いだけでなく注意深くて一目で見抜くだなんて流石だよね、誇りに思うよ
望まずして鍛えられた速読力で8割程度の手紙に目を通せば、一旦の目的地である花屋に到着する
花瓶に飾って水を入れ替えれば1週間程は綺麗な状態を保てる
だがやはり時間が経つと萎れてしまうので、定期的に花そのものを差し替えなければならない
造花にすることも考えたが、それでは花の種類が限られてしまうので好ましくないし
何よりも、静かに花を選ぶ時間も嫌いではない
ボタン1つで自動的に開く扉から降り、花を選ぼうと店に入れば銃兎さんも着いてくる
煙草でも吸って待っててくれれば良かったのだけど、銃兎さんも誰かに花を渡すのだろうか
そう例えば日頃の感謝を込めてチームメイトに……
いやないな、それだけはないな
隣に並んで入店する銃兎さんを疑問に思いつつも、お互い迷惑でもなければいいかと完結させる
そして2人で店内に並ぶ花を見ていれば馴染みの店員さんに話し掛けられた
此処は夫婦で経営している花屋で、電車で中学に通う私の経由駅の近くに建っている
その為学校帰りに都合が良いのでよくお世話になっているのだが
ほぼ毎週の様に買い物に来て相談する私のことを覚えてくれたのだ
そんな店員さんは、人と話すのが好きで主に店先で接客している奥さん
店長である旦那さんは寡黙だが、花に対する扱いがピカイチで偶に水やりで顔を出す
普段は裏で作業をしているらしく、その内の1つである花言葉やその由来が書かれたカードはこの店の特色の1つだろう
それぞれの花の値札の下に添えられたカード
このカードのお陰で何時もスムーズに買い物が出来ている
因みに此処の最寄りが大神の最寄りな為に、帰りを共にする時は花屋も一緒に覗いている
そして何故か店員の奥さんに私の彼氏と勘違いされている
一応否定はしているが面白がって大神が訂正しないので、私が恥ずかしがっているのだと誤解が解けていない
やはり1度あいつはしっかり〆るべきだろうか……
というか銃兎さん経由でお父さんや他2人に伝わるととんでもなくややこしい事になりそうだしな
ほらね既にややこしい
まあ最悪車内で訂正するにして、何故そうも禍々しい笑顔で尋ねて来るのだろうか
仮に大神が恋人だったとして……
いやそれは死んでもないな
まあ仮に私に恋人が出来たとして、麻天狼の3人はお父さん達認めないぞとか言いそうだけど
銃兎さんはませてるなとか笑ってくれそうなタイプだと思っていた
でも一応弁明はしておくか
しかし禍々しい笑顔を崩さぬままの銃兎さんにそう言われ、諦めて見舞い用の花を選ぶ
どうかその勘違いが我が家に伝染しませんように
最早そう願う他ない












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。