第8話

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2024/10/07 09:00 更新
You side
 
あの後は特に何事もなく教室に戻るも

入室しただけで一応授業中にも関わらず歓声が巻き起こり、意図せず教師を起こす羽目になった



私が悪い訳じゃないのだが申し訳ない



それから掃除とHRを粛々と済ませたのだが

何故か雄英スカウトの話が漏れ出ており、大神から屈託のない満面の笑顔で哀れみなのかサムズアップをされた



いや違う、あの駄犬は同じ高校通える可能性が出て尻尾を振って喜んでるのだろう
大神 牙狼
んじゃ俺今日やることあっから〜、あなたも気ぃつけて帰れよ〜?
そうして特別約束をしている訳でもないのに律儀に断りを入れる大神



ならば偶には三郎くんと帰ろうか



と言うのも何処繋がりかは知らないが大神と三郎くんはソリが合わないらしく、お互い避けている様子なのだ

私とて無理に三郎くんを誘うのも気が引けるし、何よりも大神を引き剥がすのも面倒だし……

そんな具合で自然と登校時は三郎くん、下校時は大神と一緒になっていた



昨日は大神と一緒じゃなかったのかって?



いや、途中の駅までは同じなのだけど、奴の方が学校に近いだけだ

というか私がわざわざシンジュクからブクロに通ってるだけ



理由は三郎くんが居るからというものと、小学校でもファンクラブに近いものがあったので距離を置きたかったから

まあ結局二の舞なのだけど……



なんて考えていれば三郎くんの教室の前に着く
あなた
三郎くん、居る?
学年が変わろうが熱狂っぷりは変わらず、寧ろ私が普段他学年の階には行かないからか余計歓声が酷い気がする

私の声掻き消されてるんじゃないかな……



そう不安になりながらも一応教室を見渡すが三郎くんの姿は見えそうにない
生徒
あっ、あのっ、会長は今日集会があるので……
あなた
……会長?
生徒
はっ、はひっ……!
さてどうしたものかと悩んでいれば、意を決した様に真面目そうな1人の女子生徒が話し掛けてくる



三郎くんが何かの団体に所属していたのを今初めて知ったが、会長と言うのは簡単になれる立場ではない筈

今朝は友達が少ないだなんて勝手に心配してしまっていたが、存外交友関係は築けているみたいだ



然しHR後直ぐに行ったのであればそこそこ大事な集まりがあるのだろう

時間が掛かるやも知れないし、あまり気を遣わせるのも宜しくないか
あなた
そう……教えてくれてありがと、鈴原さん
生徒
ひぃんっ……
そう結論付けお礼を言えば遂に泣き崩れる三郎くんの同級生



何故



しかしまあ私がこれ以上出来る事もないしな……

周りの子達に任せて今日は大人しく1人で帰るとしよう



そうして玄関口に向かえば再び満杯になっている私の下駄箱

相変わらずだと諦めてサブバックに頑張って詰め込み、鞄から靴を取り出して履き替える



今朝と同じく校門に向かうまでもシャッター音の嵐に見舞われ、生活指導の教員は空を仰ぐ

だから職務放棄するんじゃないよ



しかし今日は雄英から望まぬスカウトをされた件もあり、疲弊しながら歩いていれば校門で見慣れた車が視界に入る



可笑しいな、ここ神奈川じゃないんだけど……
入間 銃兎
お久しぶりですあなたの愛称さん、左馬刻伝手に寂雷さんから頼まれてお迎えに来ました
あなた
ああ、成程……
入間 銃兎
いやあ、中学生の迎えに左馬刻ヤクザは不適任だと伝えたら、昨日の今日だから私がしっかり送れと言われてしまいましてね
程よく使用感がある高級車を背もたれに、門前で長い足を組む警察官

ヨコハマディビジョン代表、“ MAD TRIGGER CREW”2番手の入間銃兎さん



彼はヨコハマ警察署の組織犯罪対策部巡査部長、大の麻薬嫌いで撲滅の為なら手段も選ばず

麻薬取引の元締めを突き止める為に裏社会との癒着やゆすりといった汚職行為も厭わない性格の持ち主



またハマで名を馳せるヤクザの火貂組若頭であり、チームリーダーの碧棺左馬刻さんとは持ちつ持たれつな関係にあるらしい



しかし実の両親を亡くしている私を何かと気にかけてくれ、なんやかんやで面倒見が良く心根は優しい大人だ



それにしても、お父さん最初は左馬刻さんに迎え頼んでたのか

一郎さんは車を持っていないし、乱数さんには頼めないだろうから消去法になっただけだとは思うけど……



でも銃兎さんの言う通り中学生の迎えにヤクザは駄目だよ

ファンクラブもあるんだから変に目立ちたくはないんだよ私は



それと銃兎さんの口振りからして、先日の件はマットリのメンバー全員に知られてそうだな……
入間 銃兎
取り敢えず助手席にどうぞ、寄る所があるのでしょう?
あなた
……じゃあ、お言葉に甘えて
まあでもハマの人達は下手に干渉せず胸を貸してくれる大人達なので信頼している

そう思いながら運転席に乗り込む彼に続いて助手席に座らせて貰う



彼がよく吸う銘柄は確かマルボロのライトメンソールだったろうか、煙草の中では癖が少なく清涼感のある香り

そしてほんのり鼻先を掠める柔軟剤やシャンプーの匂いが車内に充満していた
入間 銃兎
すみません、煙草臭いですよね……今窓を開けますから
あなた
落ち着くから、このままでも……
入間 銃兎
……貴女も物好きですね
そう言って雑に頭を撫でる銃兎さん

先生や街行く人達からする煙草の香りはどうにも受け入れられないのだが、関わりのあるディビジョンメンバーの人達は逆に何故か落ち着いてしまう



この銘柄なら大丈夫という訳ではなく、完全に人で選んでしまっているのだろう



なんて思いながらも、同乗する時を含む私の側では絶対に煙草を吸わないのが彼

以前左馬刻さんには、ここまで配慮するのは私位なものだと言われた



時と場合によっては言葉遣いが乱暴になるが、やはりなんやかんやで気遣いの出来る優しい大人だ

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