正直に言えば今すぐに逃げ出したい
お家に帰って部屋に篭もりたい
こういう時の為に瞬間移動の魔法でもお勉強しておけば良かった...いや、私魔法は専門外なんだけど...
いやいやしながらも家族に付き添われ仕方なしに検査を終えたのだが、正直な話殆ど記憶には残っていなかった
今はただAriAの腕に抱き着きつつもぶるぶると震えながら最後の問診の呼び出し待ちをしているのだが...先生が怖い人だったらどうしよう...泣かないでいられる自身がないよ...
顔を上げることもせずにそう答えれば、3人から揃って頭を撫でられた
【東雲さん、東雲さん3番の診察室へどうぞ】
院内放送が鳴る度にビクビクとしていたのだが、ついに聞きたくない名前が呼ばれAriAの腕を更にぎゅーっと抱き締めた
促されるままに仕方なく歩み、診察室の扉を潜り椅子へと座らされる
RyuuToに背中を摩ってもらってはいるが、恐怖から先生のお顔は見られなかった
ご機嫌がななめ、というよりは恐怖と嫌悪感に支配されているのだが...しっかりとお顔を見せていないのでどう取られても別に構わなかった
早く結果だけ述べておしまいさんにして欲しい...と思っていれば、くすくすと笑ったAriAがゆっくりと口を開いた
しぶしぶ頷き初めて先生のお顔を見れば、酷く優しく微笑んでおり若干恐怖心が和らいだ...のはいいが差し出される聴診器にピクリと肩が揺れた
私のその様子を見た先生は聴診器をそっと手で温めた後に私の手にそれを触れさせながらも優しく口を開いた
まるで子供に言い聞かせる様に優しく声を掛けられにっこりと微笑まれた
そんな先生は私の行動を待ってくれているような気がして、ゆっくりと振り返り月雫の袖先を控えめに引いた
差し出された月雫の手を握れば、温かいその手に優しく包まれた
緊張から凍っている私の手が冷たすぎて申し訳なく思いつつも、聴診器を当てられた瞬間にぎゅーっと握りこんでしまった
月雫の腕に抱き着きながらも3人によしよしと撫でられる
もうお顔も上げないもん。と思っていれば、先生に優しく声を掛けられた
その声があまりにも優しくて、あと少しだけ頑張ってもいいかなって思ったけど...いや、まって、やっぱり今すぐ帰りたいです...















編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。